いい音は空気を洗う。
加藤晴之さんの紙筒スピーカー物語。

この地球の上には、素晴らしい音楽がたくさんあります。
ぼくは、音楽の原点は、人間の声だと思います。
ひとは、自分の感情を表現しようと思ったとき、
最初に、歌を歌ったのだと思います。
それがいつしか、声に似せた音を奏でるものとして、
楽器が作られたのだと思っています。
だからぼくは、人の声・弦楽器などを
気持ちよく聴きたいと思いました。
スピーカーの音を創るにあたって、
ぼくは、できるだけ「生」を感じられるような
音創りをしました。
しかし、同時に、こうも思っています。
どんなに素晴らしい装置でも、
生の音そのものを再現することは出来ない。
音楽をオーディオ機器で再生するということは、
あくまでもバーチャルなものだということを。
だから、ぼくは、ぼくのスピーカーを聴いていただいて、
再生音楽に重きを置くのではなく、
音楽そのものに興味を持ってもらえればと思いました。
今、目の前で、生を聴く、それが音楽の原点なのです。
ぼくは、ぼくのスピーカーの音を気に入ってもらえたら、
うれしい。
そして、ぼくのスピーカーを聴くうちに、
「生の音に触れたい」という気持ちになってもらえたら、
ぼくはもっとうれしいです。

加藤晴之


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まいどまいど。(もみ手)
通天閣あかりです。

上の文章は、加藤さんの紙筒スピーカーの
取り扱い説明書に書かれた、
加藤さんのことばです。

制作者本人が
どんな気持ちで取り扱ってもらいたいか、
ということを書いた説明書も
なかなか珍しいなあと思って
引用させてもらいました。

このことばを読んだだけで
なんだか構造とか詳しいことは
わかんないけど、
音楽を気持ちよく聴いてみる毎日って
いいなと思いました。

せまい一人暮らしの部屋でも、
「いい音が鳴る」ようにするだけで
いい家具を一つ買ったような満たされた気持ちに
なれそうな気がします。

今日は、ひきつづき
カタログハウスの宮坂さんに
お話を聞いております。

今回のスピーカーづくりで
「目から鱗」の経験をされた
宮坂さんのお話です。

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♯12 まず、動く

・利益じゃないことが圧倒的に優先する世界


・・・今回の仕事で自分の中で変わったこととか、
   商品づくりに関して
   思われたこととかありますか。


すごくいっぱいあります!

今までの私の思い込みがバーンと壊れました。
今までは、モノを販売する以上、
商品化に関わっている人たちは誰でも
売上げを最優先させる、
もし売上げが見こめないなら
始めから手を出さないものだ、
と思っていたんですね。

どれだけ売れるかまったく分からないのに
加藤さんという方と
加藤さんのスピーカーというモノ自体のパワーで
商品づくりに協力してくださった方が
たくさんいらっしゃったことに驚きました。

今回の商品化に関わったことによって
すごく儲かるということはあり得ないというのは
みなさんその道のプロですから
すぐに分かったと思います。

むしろ煩雑な手間の負担のほうが
大きいだろうなっていうことも。
でも、やりましょうって言ってくださった。

利益じゃないことが
圧倒的に優先して商品が出来ていく場面に
私は初めて出会ったので
すごくびっくりしました。
こういうモノづくりがあるんだなって。

でも、「儲からない」とは言っても
赤字になってはいけませんよね。
糸井さんが以前
熱意はあるんだけども、
みんながすごくつらい思いをするのは
よくないっておっしゃっていたことが
あったんですが、ほんとにそうだと思うんです。
赤字だけどやろうぜ!では結局長続きしませんから。

関わった人たちが赤字にはならず
それでいて販売価格もなるべく押さえるために、
八田さんがすごく尽力してくれました。

・・・みんなが幸せな結果になったっていうこと
   ですよね。
   こちらからの熱の伝え方って
   あるんでしょうか。


「自分で動いてみる」ということでしょうか。   
上層部の人にはこちらの意図が伝わっても、
直接作業をする現場の方々にまで
熱意を伝えるのは
なかなか難しいことですよね。

加藤さんはなんと、
組立て工場に泊まり込んで
ご自分もスタッフの一員として作業されたんです。
ユニットをねじで取り付けたり、
端子板を取り付けたり、
箱詰めをされたりしていて、
制作者ご本人が直接手を動かしているのを見て、
そしてもちろん実際にスピーカーの音を耳にしてみて
現場の方々も本当に熱心に作業してくださいました。

「こうやって塗装をかけたほうが」
「ツヤを出すにはこのほうが」と
その時に現場の方から生まれたアイディアも
たくさんあったそうです。

・・・八田さんも加藤さんも
   「できないかもしれない」って思うことも
   とりあえずやってみて
   動いてみてから決めたいって
   おっしゃってました。
   今回のチームは
   そういう人たちが集まったんだなって
   思います。
   どんな風になっていくか楽しみですよね。


加藤さんのスピーカーに対する野望は
尽きないですからね。
寝て起きると新しいアイデアが沸いてきて
試してみないと気がすまないそうです。

でも、量産化してみなさんへお届けできるタイプの
スピーカーとしては、
今回の紙筒スピーカーが
とりあえず最終型だっておっしゃっていました。

・・・宮坂さんとしては、どういう風に
   あのスピーカーを聴いてほしいですか。

   
加藤さんは、むしろ、
最初からマニアじゃない人に聴いてほしい
っておっしゃってたんですが
私はその中でも特に主婦の人に聴いてほしいです。

毎日、家のことをがんばっていて
ライブとかコンサートとかに行く時間が
なかなかとれない主婦のかたに
好きな曲をいい音で聴いてほしいと思います。
「主婦を応援するスピーカー」を
私は最初から目指していました。勝手に(笑)。

加藤さんのスピーカーでなら、
台所仕事をしながらとか、
みんなが寝静まったあとにほんの1、2曲聴くだけでも
ずいぶんリラックスできるんじゃないかなと思います。


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次回は、先日カタログハウスで行われた
加藤晴之さんとdarlingの
「音の不思議を語ろう対談」を
お届けします。
現場にお見えになれなかった方は
お楽しみに!

ほな。




カタログハウスのB1のお店にも置いてありましたよー
残念ながらお手元に届くのは11月以降になりますが。



「加藤晴之さんの紙筒スピーカー」に関する
お問い合わせは、
0120-701-567(カタログハウス商品ご説明課)
お申し込みは、
0120-164-164(カタログハウス受注センター)
までお願いいたします。

2001-10-18-THU


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