お隣が宇宙、
同僚がロケット。

至近距離で見る宇宙開発。

space-4
- five space eyes -


応援のメールをいただき、ありがとうございます。
初めての“今だけ”毎日更新にチャレンジしています(笑)。
うう、ダーリンや鳥越さんの大変さが
身にしみる、寒さも身にしみるけど…。
でも打ち上げに向けてがんばっている人は
今、一瞬一瞬が緊張の時なのだろうなあと想像しつつ
がんばろっ!

3年間。

さあ、いよいよ
環境観測技術衛星ADEOS-II(アデオスツー)が
打ち上げ後に果たす仕事の話です。
今日はセンサのことにフォーカスします。

adeos2©NASDA
©NASDA

ところで、衛星の寿命は決まっているんですね。
そんなことすら知らなかったんです。
アデツーの場合、3年。
燃料は5年分積んでいくのだそう。

3年が一生かあ。
中学1年生が卒業するまで。
振り返るとあっという間。
その一生を余すところなく
仕事をして充実してほしいなあ。
そんな気持ちがしてきました。

そんなこと言われなくても
前回、五十嵐さんに説明してもらったように
毎日毎日地球を14と1/4周もするということ
だから、すごいよね。休むヒマは全く無い。
それどころか、なんと五つの眼で、
地球をくまなく観測するという
大きなミッションをこなすんだからなあ。
かなりの働き者であることは間違いないね。

アデツーの五つの眼

ここでNASDAのADEOS-IIの解説から
大切な言葉をお借りします。

「ADEOS-IIの最大の目的は、
 地球規模の環境変動のメカニズム解明に重要な
 水とエネルギー循環、
 炭素循環、
 成層圏のオゾンの変化

 などを解明するための必要なデータを
 収集することにある。」

この目的を果たすために、
アデツーには下の五つの眼が搭載される
のだそうです。
衛星の眼とは、つまり、
地球を観測するセンサ(ー)のことです。

宇宙をこれから、アデオスツーに乗った
五つの眼」が旅をします。
  1. 高性能マイクロ波放射計 (AMSR)
  2. グローバルイメージャ (GLI)
  3. 改良型大気周縁赤外分光計 (ILAS-II)
  4. 海上風観測装置 (SeaWinds)
  5. 地表反射光観測装置 (POLDER)
NASDA EORC研究員の五十嵐さんに
「五つの眼」について
すごくわかりやすくてしかも専門的な
おもしろい話をしていただきました。
では、みんなで聴きましょう。

まず衛星に取り付けるセンサとは?
というところからです。

人間には五感(センサ)がありますが、
 眼、耳、鼻、口、手や皮膚などで身の回りの
 環境や物などを感じ取り、
 生きてゆくことができます。

 グローバルな地球環境の変化が
 人間活動に影響するようになった今の時代には、
 新しい感覚器が必要になったということだと思います。

 衛星に搭載されたセンサを使って、
 地球から離れて地球からの
 光、赤外線、マイクロ波(電波)を
 感ずる眼で眺めることで、
 日常的なスケールでは掴めない
 グローバルな地球からのシグナルを
 感じ取ることができます。

 しかも肉眼では見えないものまで
 見えるようにできます。
 例えば風は感ずるものですが、
 風が見えるようになります。
風が見える!
このこと一つをとっても、
すごい能力を持つんだなあと驚きです。
それでは、アデツーに搭載される
「五つの眼」について、です。
五十嵐さん、よろしくお願いします。
五つの眼について簡単に紹介します。

 eye©marsha アムサー(AMSR)は、
 水・エネルギーの循環に関する観測をします。
 海面の水温が高くなると熱くなった海水は
 水蒸気になって蒸発し、空高く上昇すると雲になり、
 さらにエネルギーを大気中に放出して
 雨になって地上に落ちてきます。
 これが水・エネルギー循環です。
 水の運動が気象や気候変動の重要な要素です。


 eye©marshaグローバルイメージャまたはジーエルアイ(GLI)は、
 可視光線から赤外線までの観測をします。
 人間の目で見た感じに最も近い画像が得られますが、
 海面水温や雲の温度も分かります。
 海、陸、大気、雪や氷が分かります。
 陸上の植物や植物プランクトンが
 どれだけ二酸化炭素を吸収するかが分かり、
 地球上の植物が温暖化を和らげる役割が分かります。
 また雲やエアロゾル(大気中のチリ)が
 太陽光線を遮ったり、
 地表面から放射される赤外線を
 逃がさないような働きが分かり、
 温暖化の進み具合の予測がより正確になってきます。


 eye©marshaシーウィンズ(SeaWinds)は、
 レーダーの一種で、
 マイクロ波を海面に当てて反射する電波の強さから、
 海上を吹いている風向きと強さを測ります。
 観測点の少ない海上の観測ができ、
 天気予報が改善されます。
 ほかに貿易風が弱まり、
 ニュー・ギニアあたりの海面の温かい水が東へと動き
 南米のペルー沖の水温が上がる
 エルニーニョなどの観測にも使われます。
 NASA JPL(ジェット推進研究所)のセンサーです。


 eye©marshaアイラスツー(ILAS-II)は、
 南極、北極上空の成層圏のオゾンを観測します。
 南極のオゾンホールは、
 フロンガスの規制が始まってから改善される見込みですが、
 以前の状態まで回復するまでにまだ時間がかかります。
 環境省の大気中の微量成分ガス観測センサで、
 衛星から日の出日の入りを見て、
 大気を透かして太陽を見たときの明るさから
 ガスの濃度を測ります(太陽オカルテーション法)。


 eye©marshaポルダー(Polder)は、
 偏光(カメラのレンズにつけて
 水面からの太陽反射光をカットする時に
 使うものと同じ)や
 アングルを変えて何枚も画像を取り、
 陸上や海洋の植物や大気中の雲や
 エアロゾルが良く見えるようになります。
 フランスらしいユニークなセンサーです。

 アデオスツーのユニークな点は、
 アムサー、ジーエルアイ、
 シーウィンズの海と大気観測の
 最強のコンビネーションです。
 さらにはジーエルアイとポルダーの
 コンビネーションも見逃せない魅力があります。

 早くデータが降りてくるのを楽しみにしています。
五十嵐さんのアデツープロジェクトへの
あたたかい「眼」がよーく伝わってきます。
素晴らしい説明に、私はすごく感動してます。

それぞれの眼(センサ)が、
それぞれの力を発揮することと同時に
五十嵐さんの言う「最強のコンビネーション」!
この言葉がキーワードだと思います。
センサ同士の協力は、国際的な協力を指します。
そうすることによって、この衛星からのデータの研究に
大きな付加価値が生まれるというグローバルさ。
まさに地球規模です。
当然、各国からも大きな期待が
寄せられているというのがよくわかります。

みんなでデータの到着を楽しみにしましょう。

では、昨日紹介したサイトと同じだけど、
詳しいことはこちらのPDF資料を頼りにしてください。

「ADEOS-II/H-IIAロケット4号機 解説シート」

それから、メールを下さったなおさん。
お父上がエンジン部分のロケットの部品を
実際に手がけていらっしゃるというお話、
とても心に響きました。
私もプロジェクトに関わる方々すべてに、
最大のリスペクトを捧げながら
打ち上げを見守ります。
メールを一部紹介させていただきますね。

>ロケットって、最先端の技術の粋を集めて…
>みたいなカンジがしますが、
>父がやってる仕事は、どっちかというと職人技です。
>一度だけ、仕事しているのを見学させてもらいましたが、
>本当にそう感じました。
>確かに機械制御なモノで削るようになってきているのですが、
>難しいところはやっぱり職人さん達の技が必要になるのです。
>そういう「職人さん」たちがいることも忘れないでほしいです。
>
>いろんな人たちが支えているから、
>ロケットっていうのは飛ぶんですね。
>設計する技術、作る技術、運営する技術。
>新しい技術も、昔からの技術も、全部必要なんですね。
>
>そんなわけで、
>打ち上げ当日は家族全員で見守りたいと思います。
>一読者の なお より

打ち上げまであと2日


marsha
Special thanks to Dr. Tamotsu Igarashi (NASDA/EORC)

2002-12-12-THU

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