お隣が宇宙、
同僚がロケット。

至近距離で見る宇宙開発。

space-3
- Rocket and Satellite -


なぜロケットを飛ばすのだろう。

rocket-kun©marsha

前回は、第2回目にしてはやくも
モディスの衛星画像を見ながら、
川上さんの地球観測のお話を聞きました。

なぜ、最初っから、地球観測の話か?
ロケットの話よりも衛星の話よりも…?
という”不親切さ”にはワケがあるんです。

それは、私の中の素朴な疑問、
「なぜロケットを飛ばすのだろう?」
これに答える大事な理由のひとつでも
あったわけです。

つまり今回のH2Aロケットは、
「地球観測衛星」を宇宙に飛ばす
という大事な仕事がある、
ということをお知らせしたいと
その衛星が送ってくるデータによって
最終的にどういうことに使われるかという
ところを最初に見てみたのでした。

さて、NASDAのEORC。
つまり、地球観測利用研究センター
(Earth Observation Research Center)

衛星を利用して地球観測をする研究機関では、
「地球観測衛星」からのデータを
地球環境のために役立つように解析処理し、
様々なニーズに応えて提供し、研究します。

そんなところで仕事をするという
ラッキーに恵まれた私は、
センタンにいたときと同じように
またまたシツモン小僧です。
地球観測のプロの方々の生声を
お届けできるといいなと思っています。

今回は、EORCのスポークスマンとしても
よくメディアに登場されている
五十嵐保さんに、
今回のロケットのことや衛星の特徴、
衛星に取り付けられたセンサーのこと、
そしてそのセンサーで何を「見る」のか
などなどをやさしく話していただきました。

まず、東京湾を見おろす絶景の
五十嵐さんのデスクから。

desk

さすが研究者のデスクは資料の山です。
だけど必要なものはたちどころに出てきます。
これが研究者のすごいところ。

ところで、そのカメラのお兄さんは誰?

実はNHKの番組の撮影が行われていて、
ちょっと緊張中の五十嵐さんでした。
その番組とは
「地球46億年を探る研究最前線」
というシリーズの中で
「宇宙から地球を見つめる」
という地球観測の話になるそうです。
来年の7〜8月くらいにオンエア予定です。
観ましょう、観ましょう。

では、五十嵐さんお話をまとめると、
H2A-4号機の最大のモクテキはこのふたつ。

  1. H2Aロケットとして初めての
    極軌道衛星「ADEOS-II」を打ち上げるということ。

  2. ピギーバック衛星(おまけの衛星)を
      3つ打ち上げるということ。

アデオスツーは極軌道衛星です。

何回もくりかえしてすいませんが、
人工衛星アデオスツー(アデツー)
今回の打ち上げの超ハイライトです。
そして、この衛星は「きょくきどう」なのだそうです。

言葉にするとややこしいので、
NASDAの解説図を見ましょう。

「極軌道ー地球を縦に回る地球観測に適した軌道」(pdf)

衛星の軌道が赤道とどれだけ傾斜しているか
という角度の違いによって、
「極軌道」は垂直に近いし
「傾斜(円)軌道」はユルイ角度で回る。

つまり、いってみれば
地球をタテに回るか、ヨコに回るか
っていうことになるんですね。
この「タテ」の軌道だと、
地球の自転を利用することによって、
うまく全球を網羅して
「地球全体を見つめることができる」から
地球観測に適しているんだそうです。

その極軌道衛星のアデオスツーの場合、
赤道と約99度傾斜角。
高度は約800km上空。
北極と南極を結ぶ縦の軌道で周る。
4日ごとに同じ地点にもどってくる
太陽同期準回帰軌道衛星である。

ここはひじょうに難しいので
五十嵐さんに解説をお願いします。

軌道の話ですが、
 一年を通じて太陽が
 つねに一定の方角に見える軌道を
 太陽同期軌道といいます。
 (ADEOS-IIの場合、
 衛星が赤道を北から南へ通過する時、
 衛星の真下に立って空を見上げると、
 10時30分の方角に太陽が見えます)

 準回帰というのは、
 一日14周(正確には14+1/4周)で
 少しずれたところに帰ってきて(準回帰)、
 4日で57周して同じ所に戻る(回帰する)
 ということです。

 朝10時30分ごろに北から南に赤道を横切り、
 そのまま南極から地球の裏側に入ると夜ですが、
 夜10時30分ごろに南から北に赤道を横切ります。
 センサによっては夜の観測も行います。

 解説書でもそうですが、
 軌道には極軌道と円軌道と分けていますが、
 正確には円軌道というよりも
 「傾斜軌道」の方が使われています。
 ひまわりのような静止軌道は、軌道の傾斜が0度で、
 円軌道(傾斜軌道)の特殊なケースになります。
 高度36,000kmを飛ぶことにより
 地球を一周回るのに地球の自転と同じ24時間かかるので、
 いつも同じ宇宙空間に止まっているように見え、
 気象の常時観測ができます。


うーん、やっぱりわかりやすいです。
五十嵐さん、ありがとうございました。
アデツーに搭載される5つのセンサについては、
次号でお話しますね。。

詳しくはこちらのサイトで
ロケットと衛星の解説を読んでみてください。
「ADEOS-II/H-IIAロケット4号機 解説シート」

ピギーバック衛星たち

piggyback©NASDA
©NASDA

それから今回、アデツーと一緒に
ほのぼのとしたエピソードを
それぞれ抱えて飛び立つ、
3つの小さい(50kg級)「おまけ衛星」があります。
それをピギーバックペイロード(小型副衛星)
と呼ぶのだそうです。
新聞などでも注目を浴びていますね。

ロケットの余力を利用して打ち上げるので、
打ち上げ料金は安価、
あるいは無料なんだそうです。
知らなかったあ。

3つのピギーバック衛星を紹介すると、

  1. くじら生態観測衛星の観太くん(千葉工業大学)
  2. オーストラリア初製作の「連邦制100周年記念衛星」
    Fed Sat (Federation Satellite=連邦衛星)
    「コアラプロジェクトと呼んで!」と宣伝中だとか…。
  3. NASDAの若手技術者製作のインハウス衛星の
    μ-LabSat (マイクロラブサット)
とくに「観太くん」は、
衛星コンテストで選ばれたサテライトで、
林友直教授を中心に100人以上の学生たちが
参加したプロジェクトだそうです。
クジラのコミュニケーション方法を
探る計画もあるとかで、
コミュニケーション能力の高い「クジラの歌」が
解明されると思うとワクワクです。

さて次回は、アデオスツーが
何をするのか、みたいなところに
クローズアップ!です。

打ち上げまであと3日


marsha
Special thanks to Dr. Tamotsu Igarashi (NASDA)

2002-12-11-WED

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