ITOI
スナック芸大全


38汚なくなれ


空気中には、肉眼では見えないホコリやパイキンが、
たくさん漂っています。
私たちは、つまり、とてもバッチイ世界に生息して
いるのです。
そのことが、普段あまり気にならないのは、
空気よりもずっと自分のほうが汚ないからです。
そうさ、おまえは汚ないぜ。
イヤですねぇ。
人間て、大人って汚ないや! ポク、信じられない。
グレてやるぞ・・・なんて短絡してはいけません。
キレイになる方法も、ちゃんとあるのですから。
愛、愛さえあれは、キレイなカラダに戻る
ことができるのです。

相手と、向いあって座ります。
「両手を前に出してください。てのひらを下にして……」
と手を出させますが、「いや、もっと前」
と言いながら相手の手を持って前に引いてあげます。
「その手を、離したまま重ねて。ハイ、こんどは、
反対にしてください」と、何度か同じ動作をしてもらいます。
 そして「キミのカラダの汚ないものを、
ポクの愛でとり出してあげよう」と言います。
「愛、愛、愛」とオマジナイのようにくりかえし、
「エイッ」と大声を出し、相手のてのひらを指さします。
 相手のてのひらには、汚ないものがイヤラシく
くっついているので、ピックリします。
(実は、『もっと前』と言った時に、あらかじめ
あなたの指先につけておいた照草の灰をつけてしまうのです)
セリフは、愛でなくてもヨロシイ。
「キミが煙草の吸いすぎかどうか調べてあげる」でもいいし、
ただ単純に「汚なくなれ!と叫んでもいいのです。
指でさして気合をかける方法以外にも、煙草のヶムリを、
ふっと吹きかける方法も不思議な感じが演出できます。
また、灰をつけるのは「芸」として色っぽさがなさすぎると
思う方は、同じことを「口紅」でやったらよいでしょう。
「ポクのセップンは、カラダの奥までしみていくんだぞ」
なんてホラを吹いて、手の甲に、軽くキスします。
このほうが、ま、キレイではありますが。



イラストレーション:夏目房之介

2001-01-05-FRI

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