ITOI
禁煙のセラピーで一服しよう。
darlingはタバコをやめるのだろうか?

はじまったぞ。
タバコ吸いながら眠けとたたかう俺。


最初に、いくつかの質問の記されたペーパーを渡され、
そこに、正直に答えるのがセラピーのはじまりだった。

いつから、吸っているか。
どれくらい吸っているか。
どうして、ここを知ったか。
どの質問も、考えなくても答えられる。

ひとつだけ困ったのが、
「ここにきた動機」についての質問である。
しばらく考えてはみたけれど、
正直に答えないと結果に悪影響を与えると思って、
素直に「好奇心」と書き記した。
いいのか?! そんなことで。
でも、ウソついちゃいけないんでしょ。

記入し終わったペーパーを読んで、
O嬢は、断言した。
「イトイさん、大丈夫です。
今日できっぱり禁煙できます。
井上さん(仮名・24歳女性)も、大丈夫です。
たのしみにしていてくださいね」
頼もしいぞー。
なにしろ90%が禁煙に成功したというカリキュラムだ。
特に、O嬢先生のセラピーでは、96%だっていうじゃん。
「こう言うと、みなさん、自分は96%の側ではなく、
4%のほうなんじゃないかと考えるようですけれど、
みなさん、必ずそう思って、必ず成功していますから」

O嬢先生は、もちろん、自分自身でも
病的なほどのヘビースモーカーであったという。
どんなに病気になっても吸う。
ちょっとほんとかよ、とも思ったけれど、
「お医者さんに、あなたこのままタバコをやめないと、
死んでしまいますよ、と言われたんです」
タバコをやめないと死んでしまうという病名を、
明確に言ったほうが効果あるんだけれどなぁ、等と、
ぼくは半分プロデューサー感覚で聞いていた。

しかし、そんなO嬢先生は、禁煙に成功したのである。
しかも、その体験をいかして、
禁煙セラピストになったのである。
医者に「死ぬぞ」と脅かされてもタバコを吸い続けていた
完璧なまでのニコチン中毒患者が、
タバコの害と戦うジャンヌ・ダルクに変身したわけだ。
こういうパターンは、説得力がある。
ただ、この説得力に寄りかかりすぎると、
元・病的喫煙者でないと禁煙セラピストには、
なれないということになりそうだ。

ほんとうに確実な禁煙のプログラムなら、
元・病的喫煙者でないセラピストでも、いいはずだ。
「わたしも、そうだったんです」というコトバの
説得力にはすごい効果があるが、
この部分を強調しすぎるのは、危ないと思った。

しかし、そんなことを考えている場合じゃないっつーの。
禁煙をする主人公は、自分なのだ。

とはいえ、ほとんど眠ってない状態で、
O嬢先生のプレゼンテーションを
じっと座って聞き続けているのはつらい。
眠くて眠くて、時々別の世界に行ってしまう自分が、
このまま9時間のカリキュラムを無事に
こなせるのだろうか?


まだまだ、つづくさ。

2000-04-17-MON

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