シリコンの谷は、いま。
雑誌の記事とはずいぶんちがうみたいです。

第48回
アイデアを実現させるコツとか、
ありますか。



「インターネットを使ってこういうサービスが
 あったら便利じゃない?」

なんてことを僕もまわりの人も良く言います。

そういったアイデアは次々に出てくるけれど、
アイデアの段階では、良さがあまりわからないことが
あります。何と言っても、アイデアは最初は空想でしか
ないので、あまり現実味がなく、「本当にできるのか?」
と半信半疑で話を聞くことがほとんどです。

いくら良いアイデアがあっても、
それだけで人を納得させるのはなかなか難しいです。

実際にあるエンジニアのアイデアが形になっていったものを
見てみると、アイデアが形になるための1歩目を
何としても自分で踏み出さなければ
ならないことがわかります。

「アイデアを形にするためには、
 自分のアイデアを人に見せられる形にすることが必要」

言葉遊びみたいになってしまいますが、自分のアイデアを
話だけの状態から、目に見えるもの、触れるものにして、
他人に見せることで初めてアイデアが、プロジェクトとして
転がり始めるのです。

実際に動くものにするといっても、最終形とは
程遠くても構いません。不完全でも、欠点があっても、
もしそのアイデアを実現するものが存在したら、
こんな風なんだということを、
まわりの人が体験できれば良いのです。

多くのアイデアは、アイデアとして出されるものの、
それに対して、ああだこうだ言っているうちに、
いつの間にか立ち消えになってしまうものです。

アイデアを面白いと思っても、「じゃあやりましょう」
といってから、一体どんなものに作り上げていこうと
いう考えが個人個人バラバラで、みんなの考えを
まとめ上げて動き出すまでに大変な苦労をしてしまいます。

しかし、アイデアがそれを考えた人によって、曲りなりにも
実際に触ってみることができるようになっていれば、
アイデアを出した人はこういう風に考えているのか
ということが周りの人により理解されやすくなります。

頭で考えただけでは、「そんなの無理だよ」と言った人も、
動いているものを見れば、「まだまだ完全じゃないけれど、
もしかしたら実現できるかもしれない」と
思うようになるかもしれません。
そういう風に考え始めれば、
そんなの無理だと無理な理由を考えるのではなく、
どういう問題を解決すれば実現できるのかを
考えてくれる、有難い存在になります。

自分のアイデアを世の中に送り出そうとするなら、
「とにかく、動くものにして人に見せる」という第一歩を
自分で踏み出さなければなりません。それがなければ、
折角の光ったアイデアも、日の目を見ることなく、
消えていってしまうかもしれません。

試作品を作って人に見せるというのは、当たり前のように
聞こえることですが、シリコンバレーでも、
それはなかなか正式な仕事としてできるものではありません。
その時間をうまく捻り出す方法を身につけることは、
日本でも、シリコンバレーでも、
教科書には書いていないけれど必要なことなのだと
思いました。

上田ガク

2004-06-15-TUE


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