シリコンの谷は、いま。
雑誌の記事とはずいぶんちがうみたいです。

第40回
現場と経営側って対立したりするものだけど、
そちらではいかがですか?



ネット企業において、現場にいるプロジェクトリーダーの
役割が大変重要だというのが
前回の「シリコンの谷は、いま」の話でした。

しかし、リーダーが頑張ればすべてがうまくいくわけでも
ありません。シリコンバレーのネット企業では、
彼らプロジェクトリーダーが思う存分、
力を発揮できるようなお膳立てがされています。

フラットな会社組織、まずこれがお膳立ての1つ目です。

フラットという言葉の通り、プロジェクトリーダーの上に
ピラミッドが聳え立っているわけではありません。

プロジェクトが何をするのか、
どんなものを生み出すのかはほぼリーダーに任されていて、
上司はプロジェクトに口を挟む事はあまりありません。
というより、口を挟む上司の
数が少なくなるようになっています。

話を単純にしてしまえば、現場を仕切るリーダーの上には、
いきなり会社の経営者がいるという図式、
つまり中間にあたる部分が大幅に抜けている感じです。

前回も書きましたが、ネット産業の情勢は
目まぐるしく変わっています。
その現場を離れたエンジニアが
管理の専門の上司となって
プロジェクトをうまく動かしていけるような感じでは
ないのです。

そのためか、中間管理職にあたるポジションというのは、
ネット企業にはほとんどありません。

そんなわけで、リーダーとなる人たちが直接会社を
経営する人たちと話し合うことも多く、
いきなり副社長クラスの人がやってくることも
日常のことです。

こういったフラットな組織では、
上に立つ人は直接多くの部下を抱えることになりますから、
その分負担も多くなります。実際に僕の働く会社で、
プロジェクトリーダーたちよりも上に立つ人たちは、
普通の会社の何倍かのプロジェクトを見ています。

それでも仕事をこなしていくためには、
仕事を部下に任していく必要があります。
本人は重要なことだけに口を挟めばいいのです。
時間があれば色々口を挟みたくもなるのでしょうけれども、
そんなことをしている時間はありませんから
自然に権限委譲が行われるというわけです。

この「フラットな組織」というのはよく、
経営者の判断を末端まで素早く伝えるためにある
という言われ方をしていますが、
実感としては「うーん、そうかなあ」と思います。
何かしっくりとこない違和感を感じます。
むしろ、このフラットな組織は、トップダウンの命令が
下まで確実に届くことを狙った軍隊型の組織とは反対に
現場が自由に動くことのできるような組織だと思うのです。

それを可能にするお膳立て、つまり、
プロジェクトを引っ張る現場のリーダーが活躍できるための
お膳立ての2つ目が経営者の関わり方です。

僕が見てきたネット企業はいずれも、
CEOやそれを支える経営陣は
強いリーダーシップを持っていました。
しかし、彼らの大号令で会社が動き出すわけでも
ないのです。実際は、現場で出てきたアイデアや動きを
静かに見守り、まずは社員に好きにやらせておきます。
そしてその中から、「これだ」と思うものを見出し、
そこに会社の資金と人材を投入して
会社の事業の柱にしていくというスタイルです。

強いリーダーシップといっても、
細かいことまで指示をたくさん出すことではありません。
それは将来成功すると思われるものに対して、
信念を持って投資を集中させていくこと、
そして考えをあまりコロコロ変えないことではないかと
思います。

プロジェクトに経営者からゴーサインがでれば、
その後細かな指示が飛んでくることはまずありません。
あとは現場を信じて良い物が出てくるのを待つのです。

現場のリーダーが力を振るうための
2つのお膳立てが揃って初めて、
会社はエンジン全開で驀進することができるのでしょう。
現場の力を可能な限り引き出す。
そして、その力をビジネスの成功に向けて束ねるのが
経営者の腕の見せ所となるわけです。

上田ガク

2004-04-06-TUE


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