シリコンの谷は、いま。
雑誌の記事とはずいぶんちがうみたいです。

第38回
なにか仕事に不満はありますか?



少々エンジニアに甘すぎるのではないかと
思う部分もありますが、こちらの企業は
働きやすい環境を与え、
自由にのびのびと仕事をさせてくれます。

半年ぐらい前のことですが、アンケートで、

「今、不満があることはなんですか?」

という質問がありました。
仕事の環境をより良くするためにも、
何かコメントをしようと思って考えてみたものの、
これといって不満は見当たらず、
結局空欄のまま出してしまいました。
それぐらいエンジニアにとって
シリコンバレーのネット企業は
働きやすいところなのです。

ではなぜ、シリコンバレーのネット企業は、
エンジニアをそこまで優遇するのでしょうか?

それはネット企業にとって、技術力の優劣が
企業の生き残りに直接影響を与えるからです。

ネット企業が成功し続けていくためには、
常に新しくて便利なものを
生み出していかなければなりません。

しかし、最近の傾向として、
「こんなものがあったら便利なのにな」
というアイデアを実際に動くものにすることが
どんどん難しくなってきているのです。

たとえば、

「迷惑メールが届かないようになれば便利だ」

という極々普通のアイデアがあったとしましょう。

でも、どうやって迷惑メールと、迷惑でないメールを
自動的に分類したらよいのでしょう?

アイデアは簡単でも、それを
「コンピュータを使ってどうやればできるのか」
ということに、はっきりとした答えはありません。

このような問題は、
誰がやっても同じという仕事にはなりません。

うまい解決法を見つけ出して、
上手に迷惑メールを撃退できるものを作れる人もいれば、
逆にどうやって作ったらいいのか見当もつかず、
まったく作れない人もいることでしょう。

言い換えれば、誰が作るかによって、
出来上がったものの良し悪しに
大きな差がでるということです。
インターネット上のサービスの多くは無料ですから、
サービスの出来の良し悪しが、会社の競争力に直結します。

こうなると、ネット上のサービスを開発するときは、
コストを安く作るというよりも、
コストは少々掛かっても良いから、
世界で一番になれるものを作ることが重要になってきます。

アイデアを実現していくのに必要なのは、
もちろんエンジニアだけではありませんが、
そこで重要な役割を果たしていることは間違いありません。
会社を強くするには、
アイデアをうまく形にすることのできるエンジニアを
いかにそろえるかが鍵になります。

そんなわけでシリコンバレーの企業、特にネット企業は
エンジニアに働きやすい環境を提供して、
惹きつけようとしているのではないかと思います。

逆を言えば、どうやって作ればいいのか
分かりきった開発の場合は、
激しいコスト競争に曝されてしまいます。
そういった仕事は今やインドのコストの安い開発と
競争しなければならなくなってしまいました。

今、必要とされているのは、
言わばプロのソフトウェアエンジニアです。
目の前にある問題に対して解決策を自分で考え、
それを動くものとして作り上げる能力が必要です。

誰でもやればできる仕事をするわけではない。
そして、自分の能力が会社の競争力に直結する。
そんなソフトウェアエンジニアという職業は、
ここ最近の問題の高度化で、
面白くなってきたように思います。

上田ガク

2004-03-23-TUE


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