シリコンの谷は、いま。
雑誌の記事とはずいぶんちがうみたいです。

第34回
転職が多いと、愛社精神は育たない?


以前の「シリコンの谷は、いま」でも書きましたが、
シリコンバレーでは転職が多く、
今まで1つの会社で働いてきましたという人は少数派です。

転職が頻繁なので、企業への忠誠心が低いとよく
言われているのですが、どうも実感が沸きません。
それは多分、自分の周りではそうでもないからです。

いわゆる「忠誠心」は実際に低いのかもしれません。
でも、愛社精神というのは随分高く、僕の周りで働く人は、
みんな自分の働いている会社が大好きです。

一番象徴的なのは、会社に自社のロゴ入りTシャツを
着てきて仕事をしている人が結構いることです。

まあ日本に比べてアメリカ人は服装に無頓着な人が多く、
何を着てても別にいいからというのが理由かもしれませんが、
それでも、会社のことが嫌いなら
自社のロゴ入りの服なんか着ないはずです。

シリコンバレーの会社は、昔からよく会社のロゴ入りの
ノベルティーグッズを作ります。
そして、何かにつけて、それを社員に配ります。
例えば、新しい製品が出たとか、
会社設立何周年、はたまた、○○さん送別会記念などが
そういった機会です。

配られるものもTシャツを筆頭に、マグカップ、
ボールペンからバッチ、野球帽など様々で、
なぜか会社のロゴ入りフリスビーが配られたことも
ありました。

中でもアメリカらしいノベルティーグッズといえば、
自動車のナンバープレートの枠です。
アメリカではナンバープレートの枠をつけるのが普通で、
大抵は自分がクルマを買った店がくれたものをつけて
みんな走っています。信号待ちなどで後ろに止まると、
ナンバープレートと共にその枠に書かれた文字が
目に飛び込んできます。
その枠に社名が書いてあるのです。つまり、
「私は○○って会社で働いています」と
主張しているわけです。

そう主張することが恥ずかしく思わないぐらい、
みんな会社が好きなんです。

シリコンバレーでは転職が頻繁なだけに、
会社に不満がある人は、より自分にあった会社へと
移っていきます。
そして、社員に見放された会社はすぐに衰えていきます。

企業が成功しつづけるためには、
お客様に愛されるだけでなく、
社員にとっても良い会社でなければなりません。

多くの社員が愛社精神を持っているだけあって、
みんな会社が成功するようにと思って働いていて、
自分だけが良ければ良いという個人主義的な
考え方の人はほどんどいないように見えます。

そして、転職の数が多いことは事実ですが、
不満があって止めていく人が多いというより、
次のチャレンジを求めて
仕事を変わっていく人がほとんどです。

ですから、転職をした後も、
昔働いていた会社のことは好きだし、
転職した後も、前の職場の人たちと、
交流を持ちつづけてきます。

確かに企業が沈み行く状態で、最後までお供します
という忠誠心には欠けるのかもしれません。
しかし、それがない代わりに、他の場所で
好きな会社を見つけ、その会社のために働いていると
思えば、それもそんなに悪いことではないように
思います。

そして、以前の職場の仲間と良い関係を
持ちつづけていることが、人的ネットワークの
基礎になっているように思います。

このシリコンバレーの人的ネットワークというのは
どんなものか? ということを
次回書いてみたいと思います。

上田ガク

2004-02-24-TUE


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