シリコンの谷は、いま。
雑誌の記事とはずいぶんちがうみたいです。

第28回
有給休暇ってちゃんと使えますか?


シリコンバレーの会社は、
祝日の数が日本に比べると少ないのですが、
有給休暇はどうでしょうか。

まず有給休暇がどれぐらいあるのかと言うと、
平均で年間15日〜20日の間だと思います。

シリコンバレーでは転職が頻繁にあるため、
企業側は有給休暇を社員を繋ぎ止めるための
手段として使っている一面があります。

たとえば、会社によっては入社1年目は、
有給休暇が年に10日でスタートしますが、
2年目になると、一気に15日に増え、
以降、毎年1日ずつ増えて20日まで増える
といった仕組みになっていたりします。
他の会社も最初の1、2年は少なめで、
長く居れば居るほど得をするような仕組みに
なっています。

つまり、ある会社で3年働いた後に転職をすると、
年16日の休みが10日分まで減ってしまいます。
こうして、なんとか社員を
引きとめようとしているのですが、
どれほど効き目があるのかは
多少の疑問が残ります。
確かに年に6日、つまり1週間以上の有給休暇が
減ることになるので、もったいないのですが
それでも転職していく人は
転職していってしまいます。

この有給休暇が年に15日〜20日という日数は、
ヨーロッパの国に比べると少なく、
こちらの人はすぐ
「フランスとかドイツの人たちは、沢山休めていいよねー」
という話をします。

そういっているものの、日本人の僕からすれば、
「大体思い通りに休みの取れるシリコンバレーの会社は
 いいじゃないか、贅沢な。」
なんて思います。

休みはあらかじめ予告しておけば
ほぼ言った通りの時期、日数で取ることができます。
1週間ならほぼ問題なく、2週間続けての休みでも
大丈夫でしょう。

チームのメンバーが休みを取って抜けることになると、
マネージャーは即座にスケジュールを再調整します。
その人の担当している部分の作業は、
彼の休みの間は進みませんから、
帰ってきてから再開することになります。

一方、時間的な制約のある仕事については、
残りのメンバーでその作業を振り分けていきます。
その分、残りのメンバーの仕事量は
増えることになりますが、自分も逆に休みを取る時は、
同じようにみんなに仕事を
肩代わりしてもらうのですから、お互い様です。

僕の働いてきた職場ではいずれもそのように、
休みたい人は休みたい時に休む
というようにしていましたが、
それでも仕事の進み具合には、
さほど大きな影響は出ていませんでした。

これは仕事の仕方によるところもあるのかもしれません。
チームの中で、ぞれぞれのエンジニアは自然に
担当分野というものが出来上がってきています。
しかし、それは、ハッキリ決められたものではありません。
チームのほかのメンバーも、自分の仕事に必要があれば、
他のメンバーの担当の部分の作業をすることがあります。

ですから、同僚が休みの間、その人の担当領域で、
何かしらの変更が必要となれば、
その変更を必要と感じた人が自ら作業をすればよいのです。
そして、それがやっていけるようになっていないと、
こちらのネット企業でエンジニアはやっていけません。

実際に、システムの中核を成すデータベース部分を
担当しているエンジニアが
3週間まとめて休んだことがありました。

その間にデータベースがトラブルを起こしたりもしましたが、
そのエンジニアと連絡は取っていくつか質問をしたものの、
残りのメンバーでそのトラブルに対処することができました。
そして、その3週間の間はデータベース関連の開発は、
一時ストップしたわけですが、それでも、
プロジェクトに対して特に影響があったとは言えません。

振り返ってみても、メンバーが
全員ちゃんと揃っていないと困る時期というのは、
1年間のうち、せいぜい1週間か2週間で、
新しいシステムを世の中に送り出す時など、
大きなイベントがあるときぐらいです。
それを除けば、誰がいつ休もうと、
それほど影響がありません。
「○○さんに休まれると困る」と
普段は思うものでも、
実際にやってみれば
それほど困るものでもないのです。

それから最後にいいなと思ったことは、こんなことです。

有給休暇を使ってお休みを取る時、それを伝えるのは、
上司ではなく、チームみんなに対して
伝えるということです。
「来月2週目から2週間ほどお休み取って
 ハワイに行ってくるので、よろしくね。」
とミーティングなどで言うわけです。
突然休まれなければ、仕事をしている側も
そんなに困りませんよね。

上田ガク

2004-01-13-TUE


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