シリコンの谷は、いま。
雑誌の記事とはずいぶんちがうみたいです。

第13回
日本人もシリコンバレーで
転職できますか?



日本人がシリコンバレーで働くには
取っ掛かりとして日本語化関連の仕事が一番だと考え、
僕はシリコンバレーにやってきました。

英語が上手でない以上、
正面突破は難しいと考えたからです。

そんな僕も、前の職場では環境に馴染むにつれ、
なんとか同僚のエンジニアたちと
同じように仕事ができるようになってきました。
2年以上経った今でも英語では苦労していますが、
一応チームの一員として、足を引っ張ることもなく
仕事はできるようになったと思います。

前の仕事場の環境はすこぶる良く、
その上、2年間ほとんど同じ面々と
仕事をしていたので、
その恵まれた環境に、
これならそんなに頑張らなくても大丈夫だなと
少々甘えてしまいました。

その頃、心の中では、
「僕もシリコンバレーで通用するんだ」
と勝手に考えていたのですが、
日本人であるという利点を生かして就職した以上、
本当に通用するのかは証明できません。

もともとアメリカに来る前には、シリコンバレーの
会社を1社か2社、見てみたいと思っていました。
1つの会社を見ただけでは、もしかしたら、その会社が
例外なのかもしれないし、2つを比較してみて分かることも
色々あるだろうと思ったからです。

そういう理由から、
僕はシリコンバレーで転職できるものなのか、
試してみようという考えが頭に浮かびました。

僕にはシリコンバレーに来る前から
気になっていた会社があり、
その会社の仕事は今でも大変面白そうで、
その上、技術力が高いという定評がありました。

転職してみようとは言っても、
切羽詰っているわけではないので気が楽です。
さっそくその会社を受けてみることにしました。

まずはインターネットで掲示されている求人を見て、
履歴書をメールで送りました。
後から考えると正攻法すぎて、
他にいい方法があることを知りましたが、
その時はともかく普通の手段で申し込んだところ、
しばらくして忘れたころに電話が掛かってきました。
まずは書類選考をクリアです。

履歴書は日本のものとはまったく形式が異なります。
まず写真はありません。
そして年齢も書く必要はありません。
アメリカでは人種差別問題がありますから、
その辺りは敏感ですし、採用に当って
年齢による差別もしてはいけないことになっています。

書くことは、自分にどのような技術があるのかと、
今までの職歴と学歴です。
その中で最も重要なのが職歴です。

日本の履歴書では、古い順に
いつ入社して、どの部署、
どの役職だったかを書きますが、
アメリカの履歴書の場合は順番が逆で、
今の仕事のことを先頭に書き、
段々昔に遡って、
最後に学歴になります。
つまり、最近何をやっていたかが
重要だということです。

また、職歴もどういう役職だったかよりも、
その会社で働いていた時に
どんな実績を挙げたかを1つずつ書いていきます。
ここでの実績が、書類選考で主に見られる内容なので、
ここでアピールできる実績を残していくことが重要です。

さて、書類選考を突破すると、
次は電話による面接に進みます。
電話での面接はもちろん英語で、
30分ほど色々な質問に答え、
これも何とか突破することができました。

そしていよいよ実際に会社に呼ばれて面接になります。
一般的には実際に足を運ぶ面接は1度または2度で、
1日に3、4人の面接官と会います。

幸い、僕は、こちらに来てから何度か
面接官の役回りをやったことがあったので、
大体聞かれる事は分かっていたのですが、
それでもかなり苦労し、自分での手ごたえは
あまり良くなく、落とされたかなと思いました。

実際、僕の評価は微妙なところだったようですが、
それでも数日後に採用決定の電話が掛かってきました。

運が良かったということもあるのですが、
こうして僕は新しい会社で働くことになりました。
そして今度の職場では、日本語化とは離れて、
別の分野での開発をしています。

日本人ならではのアドバンテージを生かすことは
できませんが、それでも特に困ることはないので、
シリコンバレーのエンジニアとして
一応通用しているんだろうなと、
今度はちょっと自信を持って
言えるようになりました。

以前、日本人エンジニアのレベルも意外に高い
ということを書きました。その理由は、僕の
知り合いに、飛びぬけて優秀なエンジニアが
何人もいるからです。彼らと1対1で技術を
競ったら、僕にはとても勝ち目はありません。

それでも僕は何とかシリコンバレーで
やっていくことができています。
だとすれば、彼らが活躍できることは
言うまでもないですよね。

今回は、僕が転職した時の話を書いてみましたが、
その採用プロセスの中で日本と違っていて面白いのが
面接の方法です。
次回はエンジニアの面接について
もうちょっと詳しくご紹介したいと思います。

上田ガク

2003-10-31-FRI


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