谷川俊太郎質問箱  冬だよ! ツアー質問箱の巻
質問 七  ぼくは、プログラム関係の仕事をしているせいか、 なんだか職人の世界に憧れを持っています。 職人の世界では「一人前」という言葉が使われます。 だけど、会社では、上下関係もあり、 どこまでいっても上司を意識している状態で、 自分の能力がよくわからないんです。 「一人前」というのは、どのあたりからを 指すのでしょうか。  (川島正寛 三十歳)
谷川俊太郎さんの答え  スキル〈技能〉が必要な世界では いまでも「一人前」があるんでしょうけど、 そうじゃない世界 (詩や芸術の世界もそのひとつですが) では、「一人前」の判定が難しいですね。 英語では一人前になることを、 ひな鳥の羽毛が生えそろうという言葉(fledge)で 表現するそうですが、 人間社会では 法律上の成人イコール一人前とは 言えない感じ。 結局各人が自分なりの「一人前」のモデルを、 歴史上の人物や、 現在活躍している人の中から (身近な人も含めて)探すしかないのかなあ。 ぼくは自分を詩の世界では 一人前と言っていいと思ってますが、 実生活の上では、 他人の目になって自分を評価すると、 一人前であるかどうか 疑ってます。
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2010-01-07-THU
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