絆回廊 新宿鮫X

前半のあらすじ

語り:大沢在昌



警察官を、殺すーー。

そのどす黒い怨念を成就するための
拳銃を手に入れようと、
新宿の街を徘徊している大男がいる。

新宿署刑事・鮫島(さめじま)は
古株の薬物売人・露崎(つゆさき)から
そんな恐るべき情報を得た。

大男は白髪で、初老。

長期刑から解放されたばかりらしく、
変貌した新宿の街に戸惑っているようだ。
しかし、その存在感は、
長くアウトサイダーを続ける露崎すら
恐怖を覚えたほどだった。

鮫島は、捜査を始める。

糸口として、大男が口にした、
すでに引退した暴力団元組長に接触する。
だが、鮫島が二度目に訪れたとき、
彼は何者かに殴り殺され、
家の裏手に妻と飼い犬とともに埋められていた。

さらに捜査を進める鮫島は、
「金石(ジンシ)」という、
アジアルートの薬物密輸に関わる
中国残留孤児二世グループの存在を掴む。

「金石」

彼らは口が固く、仲間しか信じない。
目的達成のためには
どんな手段、どんな暴力もいとわない。
広域暴力団すら、彼らに手出しができない。
メンバーは日本語、中国語ともに堪能、
普段はまっとうな職についていて、
裏の顔は見せないが、
存在を暴こうとする者には容赦しない。
つまり、いつ、どこに彼らが潜んでいるのか、
誰にも分からないのだ。

鮫島は、捜査を続けた。

しかし、立場を越え協力していた露崎が
行方不明となる。
そして鮫島も、
早朝、自宅付近で覆面の集団に襲われる。
同じ日、荒川の河川敷で乱闘があり、
一人が殺害された。

被害者は、鮫島を襲った集団の一人で、
金石のメンバーだった。
さらに、千葉県の産廃施設からは
金石の仕業と思われる、
露崎の死体が発見された。
死体には、拷問を受けた無残な傷痕が
いくつも残されていた。

大男は、誰だ?

三十年間、大男に惚れ続け、出所した彼を支える
スナック「松毬(まつかさ)」のママ、
トシミの想いは報われるのか?

金石と取引があり、
アジア各地の闇社会に出没する謎の男、永昌とは?

その永昌と接触する、元キャリア警察官で
今は情報機関の関連組織
「東亜通商研究会」に所属する香田の目的は?

そして、大男が狙う警察官は、誰だ?

「新宿」という名の回廊で
さまざまな人間の絆が、交錯する。

とじる