「イメージの中のリア王」の
ヒゲをたくわえたみうらさんは
今回、シェイクスピア的に
ゆかり深い県を
訪れることになりました。
千葉県 浮き沈みを取り入れることが必要です。
ほぼ日 今回は、千葉県です。
みうら 千葉県、いいねえ。
ほぼ日 千葉県は、大きいですね。
みうら 千葉県というと、いろいろありますね。
しかし、その中でも、
特筆すべきことを教えるコーナーですもんね?
ほぼ日 あ(笑)、いや、そうですね、
無理なお願いだと認識しております。
みうら ほんとうはすべての町のことを
言いたいんですけども、
その中でもとりわけ、
この短い時間にとりわけ、ですもんね?
ほぼ日 お願いいたします。
みうら

では、まず御宿(おんじゅく)を選びましょう。
ここは御宿の海女祭りが、当然、
語られるべきところです。
海女さんがおられる場所は
日本全国にありますけれども、
海女祭りは、たいまつを手に持った
たくさんの海女さんが夜の海に入って行く
とても幻想的な祭りです。
海女のことは、三重県の回で
さんざん語ったとは思いますが。

ほぼ日 はい、はい。
みうら わかっておりますけれども、
ここの海女祭りについては、言わせてください。
さきほど言いましたように、夜に海女さんが
1列になって海に入って行かれるんですが、
実は、お祭りは昼間からやっております。
「今か今か!」「今か今か!」
もう最後には
「今か今か!」コールが
「海女か海女か!」
になってるぐらいの盛況ぶりです。
ほぼ日 夜の盛り上がりをみなさんが
たのしみにされているということなんですね。
みうら でね、その、最前列に歩く海女さんの年齢は、
ぼくぐらいの方でした。
歩く順番というのはふつう、年功序列です。
「あれ?」と、
「トップが俺かよ」と思ったんですが、
年功序列で、どんどん年を取っていかれて、
最後のほうはものすごいお年の海女さんでした。
スピーカーからは、ちょっと音が割れた、
ピンクフロイドのようなプログレのような
音楽が鳴っています。
ほぼ日 ますます幻想的ですね。
みうら

たいまつの光が夜の海に
きれいに映るんですけれども、
じーっと見ていると、
後ろのほうの海女さんの金歯も
光っていることがわかります。

ほぼ日 はははは。
みうら それほどまでに
海は映していくんだということが、
わかるお祭りでした。
ほぼ日 ええっと、千葉県といえばほかにも、
成田空港、ディズニーランド、
九十九里浜などたくさんあります。
みうら ああ、九十九里浜というと、プロモビデオですね。
ほぼ日 プロモーションビデオ、
昨今は「PV」といわれるやつですね。
みうら MTVでプロモビデオが頂点を極めましたね。
しかし、1990年代に入ってからは、
プロモビデオを扱う番組が
少なくなってきまして、最終的に
テレ東の深夜枠に落ち着きました。
テレ東の深夜枠、とくに
深夜から朝4時〜5時ぐらいまでのあいだ、
ロシアンルーレットのように
ビデオが流れる、あの枠をご存知でしょうか。
いちばん最後の人はもう
10秒ぐらいしか放映されない
あの番組を垂れ流しのように見ていて、
わかったことがあります。
あの時間帯に流れるビデオのうち、たいがいは
九十九里浜で撮影されています。
つまり、予算のないプロモビデオは
九十九里浜で撮っていると思って
間違いありません。
ほぼ日 そうなんですか。
みうら ぼくは「青春ノイローゼ」という、
シングルCDを出したんですが、
プロモビデオの撮影は、当然、九十九里浜でした。
海辺にラジカセを持ち込んで、
曲を薄く流しながらギターを弾いたり、
あるときはギターも置いて、手ぶらで
カメラに向かって歌いました。
それはそれはトンマな図で、道行く人たちの
「誰? 誰?」
という声が耳に届きました。
しかし、そこは耐えてやりきりました。
ビデオは夕方までしか撮れませんから。
ほぼ日 そりゃ焦りますね。
みうら 撮影後は近くに蛤を焼くところがありますんで、
そこで軽く打ち上げをして帰るのが
低予算プロモビデオの定説でした。
千葉県にはシェイクスピア記念館もあるんですよ。
ほぼ日 え‥‥ええっと、
シェイクスピア・カントリー・パークと
いうようですね。
いらっしゃったことがあるんですか?
みうら

もちろん行きましたよ。

ほぼ日 ‥‥日本中は、
いろんなゆかり(縁)で
いろんな記念館があるんですね。
みうら

はい。日本中はもうゆかりだらけです。
油断しているとすぐ
「ゆかりゆかり」言い出します。
何かご質問があればどうぞ。

ほぼ日 はい。では、読者のOTさんからのメールです。
「自分は千葉県に住んでいますが、
 全てにおいて中途半端なところが好きです。
 位置的にも自然も気候も特色も半端です。
 世界の気温が上がって水位が上昇したとき、
 日本で真っ先に沈むのが千葉県だそうです」
みうら あのね、いまはそんなに
入ることはないと思いますけども、
昔は五右衛門風呂というものがありました。
ドラム缶のような鉄製のお風呂で
薪を燃やして
下からお湯をあたためる方式のお風呂です。
小学生のときのぼくの家がそうでした。
ほぼ日 はあ。
みうら お風呂の底に足がつくと
素材が鉄なだけに熱いので、
円形の木の板を下に沈めるんです。
ほぼ日 足もとに板を敷いて
湯槽に足が当たらないようにするんですね。
みうら ただ、その板は
木でできているので、浮くわけです。
浮いて大変なんです。
一方を沈めると、
逆側からブーンと上がってしまう場合があります。
次に反対側を押さえると一方がまたブーンと出る。
ほぼ日 はい、はい。
みうら ですから日本も、
五右衛門風呂で考えると、
千葉県をぐっと押すと
石川県のあたりが
ブーンと上がってしまうんですよ。
石川県を踏むと千葉県が上がるわけです。
そうやって、たまに出たり、
引っ込んだりしてるだけのことです。
スイッチだってそうじゃないですか。
押すほうと押されるほうで
そういうしくみになっています。
考えてみてください、もっとも浸水しているのは
どこでしょうか。真ん中なんですよ。
ほぼ日 日本を五右衛門風呂やスイッチに見立てると、
たしかにそうですが‥‥
みうら ずっと浸水しているのではなく、
浮き沈みがあるのは端のほうです。
そういう意味では、人生もそうですが、
浮き沈みがあったほうが
波瀾万丈でおもしろいじゃないですか。
真ん中の、なにかいっつもぬるま湯に
浸かってるようなことではいかんと思います。
人生は、やっぱり
波瀾万丈あってこそのものでしょう。
浮き沈みは
外因からどんどん攻められることもありますが
自分から沈んだように持っていくことも
必要なんじゃないでしょうか。
ほぼ日 浮き沈みがないのは寂しいですね。
今回のお話をノーカットでごらんになりたい方は
下の動画でおたのしみください。

波瀾万丈の千葉県に
シェイクスピアの記念公園があるのは、
『ハムレット』で
特産のローズマリーがたくさん
登場するからだそうです。
日本には知らないことが
まだまだたくさんあります。
来週もたのしみになさってください。
2008-03-09-SUN
みうらじゅんさん&安斎肇さんが
結成した「勝手に観光協会」作の
すばらしい千葉県ご当地ソング
「バチバチ☆チバチバ」を
どうぞお聞きください。