SOFTWARE
シェアウェアは
ひょっとすると
デジタルユートピア
かもしれない。

シェアウエアが生まれたときの、
その定義について。


おひさしぶり。
前回までは、どこまでいったのか、先ずおさらい。
つまり、前回までは、
「足元をきちんと知ろう」ということで、
シェアウエアのルーツを探ってたわけです。

そこで、みつけた「シェアウエアの父」二人。

片一方は、海辺の街で楽隠居、もう一方は、行方しれず。
今回は、この行方しれずの方の、Andrew Fluegelmanさんが
1982年(シェアウエア誕生の年)に、発表した、
シェアウエア(当時はフリーウエアと呼ばれていた)の
発起書を御紹介しようと思います。

このテキストをどうやってみつけたか、
などの経緯については、前回をお読みください。
(ちょっと悲しくなりますが。)

では、いってみよう!
フリーウエア
ユーザーによるサポートにもとづいたソフトウエアは、
以下の3つの原則にもとづいた、
コンピュータープログラムの流通の実験である。

(1)ソフトの価格と機能は、
ユーザーの使用するコンピューターの環境で
査定される。ソフトが必要か、
自分のテイストにあっているか、等は、
プログラムを使用した後のみに決定される。

(2)独立系のコンピューターソフトの創作は、
コンピューターコミュニティーによって
支えられるべきものである。

(3)プログラムのコピーは、禁止されるのではなく、
奨励されるものである。
通常の商業的なチャンネルの外で行われる流通は、
電子情報の弱さではなく強さである。

ユーザーによるサポートのコンセプト:
ユーザーによってサポートされたソフトウエアは、
フォーマットされた空のディスクと、
切手を張り付けて、住所を書いた返信用の封筒を
プログラムの作者におくれば手に入れることができる。
ディスクには、ソフトのコピーと、
関連したドキュメントが書き込まれ、
ユーザーのもとに送り返される。
プログラムには寄付の依頼が同封される。
寄付をするかしないかは、
ユーザーの判断にまかされている。
寄付をする、しないに関わらず、ユーザーが、
ソフトを個人的かつ非商業的にコピーすることを
奨励する。支払いは、それぞれのユーザーの判断に
まかされる。

ユーザーによるサポートに基づいたこのコンセプトは、
本当にうまくいくのだろうか?

ユーザーにサポートされたソフトウエアという
コンセプトは、通常のマーケットの外側での、
クリエイティブな仕事に対する、
コンピューターコミュニティーのサポートである。
これは、利他主義以上に、経済の実験である。

ソフトウエアの無料配付と、ボランティア的な支払いは、
マーケティング、広告、コピープロテクションに関する
コストを削除することが可能である。

そして、純粋に「便利である」
ということが判断基準となって、
実際に一番便利なものが
生き残っていくことになるだろう。

実験に参加してください。

FREEWAREは、Headlands Pressのユーザーのサポートに
基づくソフトウエアのトレードマーク(商標)です。
しかし、上記のコンセプトに同意してくれる、
すべてのソフトウエア製作者には、使用を認めます。

ということでした。

もう片方の父のJimさんに比べて、
すでに、とてもコンセプチュアルに
「シェアウエア」を考えていたということが
伺える内容になっている。
すでに、「いままでにない」
流通のシステムになりうるのではないかと、
見抜いていたわけだ。

そして、実際、Andrewさんの実験に参加して、
成功していひともいる。

「もうかたほうのシェアウエアの父」のJimさんは、
実験に参加したおかげで、会社を起こし、
かなりの利益をあげていたということは前回までに
御紹介した。
ほかにも、ある程度のお金を
「シェアウエア」で儲けている人もいるということが、
過去のシェアウエアの作者の人々へのインタビューで
判明している。

さらに
『ソフトウエアの無料配付と、ボランティア的な支払いは、
マーケティング、広告、コピープロテクションに関する
コストを削除することが可能である。』
ということに関しても、DragThingのJamesさんによって
現実に肯定されている。

1982年当時の発起書と、変わったことといえば、
流通経路が、「郵便」から「インターネット」に
変化したことくらいで、他の定義にはあまり変化がない。
さらにいえば、
インタビューと発起書をあらためて読み直してみると、
1982年のAndrewさんの想いは、
現在のシェアウエアの作者の心にきちんと
生きているということがあらためて分った。

さて、次回は、この『寄付をするかしないかは、
ユーザーの判断にまかされている。』
という、ユーザーの判断というのが、
いったいどんな具合なのか、実証してみつつ、
私の行動をもふり返ってみよう。

調査は、某コンピューター関連業ではたらく
そこそこのヘビーユーザーを対象におこなわれた。

1998-11-04-WED

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