SOFTWARE
シェアウェアは
ひょっとすると
デジタルユートピア
かもしれない。

シェアウエア作家に聞いてみよう
-ドメスティック編 古原伸介さん

こんにちは、ごぶさたしちゃって。
またもや。
お休みしてたり、捻挫してたりいろいろあったのよ。
ってそんなのどうでもいいか……。

前回は、匿名でなら、
というシェアウエア作家のかたの回答を御紹介しました。
私にしては、めずらしく「自己表現」なんていう
カタい言葉をつかったりして、
考察してみたりしたわけですね。

今回、回答を紹介させていただくのは、
古原伸介さん。
古原さんは、
ホームページ製作ツールの
『HTMLエディタ HyperEdit』や、
ツリー形式で文章を書くソフト
『アイデアプロセッサ アイデアツリー』、
手軽なデータベース『カード型データベース TCARD』、
スケジューラ『スケジューラ SelfManager』などなど、
たくさんのシェアウエアを作っています。
どれも、対応OSはWindows3.1/95/98/
NT WindowsCE DOSです。

彼のソフトのことをもっと知りたいひとは、
http://www.dicre.com/へいってみよう。
もちろんダウンロードもできるし、
なんと、コンビニでシェアウエアの送金も可能。
(ホームページで必要事項を記入して、フォームを
おくれば、振り込み用紙が送られてきます。)


まずは、回答を先によんでみましょう。

(1) いつ頃からプログラムを書いているのですか?
きっかけなど交えてお教えねがえませんでしょうか?


コンピュータ系専門学校に入ったのをきっかけに、
オンラインソフトというものを知って、
そのようなものを作りたくなった。
また、昔からものを作ることが好きだった。

(2) あなたのシェアウエア作品は
いつ頃製作されたものなのでしょうか?

主に、4年ぐらい前から現在まで。
最古のシェアウェアは6年前ぐらい。

(3)製作にはどの程度の時間がかかるものなのでしょうか?

ソフトによって全然違うので一概にいえない。
最初のバージョンは一週間から2ヶ月ぐらい?
また、このような質問の最大の問題点は、
ソフトはバージョンアップしていくというもの。
とりあえず、ある程度作ったら発表する人は多いと思う。
ある程度作る分には短くてすむと思う。
また、バージョンアップを終了するというのも
オンラインソフトには珍しいので、
どのソフトも発展途上だと思う。
だから制作時間は無限ともいえる。

(4)ふだん、シェアウエア関係の作業に
どのくらいの時間をかけるのでしょうか?
そのなかでも時間がかかるものっていうのは
どんな作業ですか?


僕は専業なので、普通の人が会社で働くぐらい
時間をかけます。
一番時間がかかるのはもちろんプログラム開発です。

(5)製作なさったソフトをシェアウエアに
しようと思ったのはなぜでしょうか?
フリーウエアではなくて、 シェアウエアにしたのは
何故なのかという点についても
教えていただけますか?


最初はフリーウェア作家でしたが、サポートの大変さ、
会社員との兼業の大変さなどからシェアウェアにしました。
ある程度有名になるとオンラインソフトの作家は
かなり大変です。
いったん発表したのに、フリーソフトとはいえ、
途中で開発をやめるのもなんですし。
ちょっとしたソフトならともかく、
本格的なソフトを作ろうとするのであれば、
シェアウェアにしないと大変です。

(6)ソフトウエアの価格をおしえてください。
また、その価格はどのように決めたのですか?


1000〜3000円。決め方は様々。
当時の相場だったり、
そのソフトの価値を自分なりに考えたり。

(7)本当はズバリ
いくらくらいの利益があがっているのか
教えていただきたいのですが、
ムリなときは、比喩的な表現で構いませんので、
このシェアウエアをつくって 、
あなたのフトコロに入ってきた
金銭的なことをおしえていただけませんでしょうか?


有限会社を作って夫婦二人暮らしていけるぐらい。

(8)インターネットでのシェアウエアの
送金が可能になってから、
全体の送金に関しては増加しているのでしょうか?


シェアレジ、Pipenet、U-CARD もちろん対応しています。
しかし、インターネットのものからは
それほどではありません。
一番多いのは今も昔もNiftyServe送金代行サービスです。
これはどの作者もそうだと思いますが・・。

(9)ユーザーからのメールは結構頻繁にくるものなのですか?
その主な内容はどんなものなのでしょうか?


頻繁に来ます。
主な内容はソフトのバグ報告や要望、
使い方に関する質問などです。

(10)シェアウエアにお金を払わずに
使いつづける人が中にはいると思います。
「ソフトに仕掛けをしてあるから、
はらわないのだったら使えなくなっちゃうから」
という観点からではなくて、一般的に、
そういう「悪いひと」について
シェアウエア作者としてはどんな感想をお持ちですか?


お金を払っていないので、
ソフトの力も100%引き出せないし、
要望を出したりサポートを受けることもできないので、
その人は本当の意味でそのソフトを
使いこなしているとはいえない、
と思う。ソフトはそれだけでは力を発揮できない、
と思うし。

そういう人は、本当の意味でのユーザとは言えない、
中途半端な状態におかれると思う。
それでもいい人はしょうがない。
でも、真のユーザになった方が、
いろいろいいことがあると思う。
(また、いいことがあるように
シェアウェア作者は工夫して行かなくては
いけないでしょう。サポートの充実とか。)。

また、逆に使わずにお金を払う人もいて、これも困ります。
使わずにお金を払って、自分のパソコンでは動かない、
と言われても困るので、シェアウェアは
まず使ってみて気に入ったらお金を払う、
という原則を普及させていきたいです。

(11)市販ソフトに対して、シェアウエアが
勝っているなと思う点はどんなところがありますか?
使用者の私なんかだと、
良く分らない使い方を直接作者に気軽に聞けたりし
てべんりだな〜と思うのですが、
作者の方からみるとイカガナものでしょうか?


全くその通りでサポートの気軽さ、
要望を出せる(普通、市販ソフトには要望は出せない、
出しても通らないと思う)
オンラインでソフトに関するさまざまなことを
済ませられる、という利点があります。

そのほかに私が思うのは軽さ(動作の軽快さ)です。
市販ソフトは機能重視で機能ばかり追求しているので、
いらない機能がたくさんついた重いソフトばかりです。
シェアウェアは必要な機能に絞っていて
軽さがあると思います。

僕がTCARDというソフトを作り始めたきっかけは、
DOS/Vで動くデータベースがほしかったからでした。
データベースといってもたいそうなことを
するわけではなく、
住所録など簡単なものが整理できればよかったわけです。
そこでパソコンショップに行きソフトを探すと、
どれも値段が高い高い。しかもとっても高機能。
「そんな機能はいらんから安くしてくれ〜」
というのでTCARDを作り始めたのです。

そういうところから考えると
シェアウェアは無くならない、と思う。
大企業はどうしても高機能を目指しちゃうから。
もっと低機能な安いのでいいのに、
という人はいつの時代でもいると思う。

でもそういういのがほかの業界にあればいいなあ。
たとえばテレビとか、今電気屋に行くと
ワイドテレビばかり。
普通ので、機能も無くていいから安くして。

(12)シェアウエアを作っている時に
ウレシイことって何ですか?
逆にツラい事ってどんなことですか?

うれしいことは、ユーザさんからの
「こういう風に使ってますよ」といったメールでしょう。
作者の思わぬ用途に使われていて驚きます。
ツラいことは、困ったユーザがいることでしょう。
お店などでもそうですが、困った客というのは
どこにでもいるものです。
これも結局はマナーということですが、
具体的にはメールの書き方がとにかく威圧的だったり、
などそういうものです。

(13)まだ、書き足りないことなどありましたら、
御自由に書いてください。


シェアウェアってなんだかんだ言っても
結局おためしソフトのようなものではないでしょうか。
そういう意味では世間一般の商法と比べて
それほど画期的ではないような気がする。
「無料お試しキャンペーン」なんて普通にやってるし。
フリーソフトも無料の「同人誌」みたいなもんでしょう。
ソフトなので新しく見えるかもしれないけど、
それほど新しくないような気がするのはこの世界に
すっぽり入ってしまっているからでしょうか。


いかがでしたでしょうか。
いままで、インタビューをしてきた方々のなかで、
始めて「専業」でシェアウエアをつくって
いらっしゃる方の回答でした。
チャカチャカと頭の中でいろいろ計算してしまいたく
なりますが。

古原さんのいうとおりに、シェアウエアってなんだか
「隙間産業」みたいな感じもしてくる。
私なんかにもわかりやすい例としては、
エディターソフトはシェアウエアにも
フリーウエアにもよくあるけど、
文章をかくためだけなら、
なかなかたちあがらない豪華なワープロソフトつかうより、
余計なものがなくてすごく便利だと思う。
(プログラムとかを書いている人は
また別の意見があるとおもうけれど。)
それから、ほんのちょっとしたことだけを便利に
してくれるものだったり。

それにしても、
シェアウエアを作る人や、知るひとに話をきけばきくほど、
「特別なことではない」し、「シェアウエア」ってものが、
なんだか輪郭がぼんやりしてきてしまう。
「どこがちがうんだ??どこも違わないじゃないか!!」
って。
もういちど、ちょっと自分のアタマを揉みほぐさないと
いけませんな。

ということで、もうしばらく作家の方々の
声をきいていきましょう。

1999-04-03-SAT

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