伊藤理佐の実家から、
近所の人が鉄砲でしとめたイノシシをもらってきた。
もらってきたはいいが、イノシシ肉をいじるのは初めて。
しかも1.5kg以上はあり、
実際に肉塊を手にとったときは途方にくれた。
ああ、自分は肉はちょっとあればいい人間なのだ、と
思った。
食生活にないとさびしいが、こんなになくてもいい。

大自然の恵みに対する感謝の気持ちなど、
この段階ではまるでわいてこない。
どうするんだこの肉。この脂身。
幸いなことに毎年恒例の餅つき新年会がひかえていたので、
そこに集まる連中に食わせることにした。

【材料】
・イノシシ肉
・ニンニク
・ネギ
・大根
・ゴボウ
・ショウガ
・しらたき

まず塊肉を出刃包丁で切り分けた。
切れ味はいいが、薄切りにするのに向いている
包丁とはいえず、やや厚めの切り身になった。
湯通しをして、ニンニク、ショウガ、ネギの青いところ、
酒で煮始めた。
あくをすくいながら、ある程度煮たところで、
大きめの肉片をとりだして細かく切った。
あまり若くない個体だったようで、
かなりの歯ごたえがある。

豚肉のようにラードが
こんこんと浮いてくるようなことはない。
脂身は、豚肉だと煮ればトロトロになるけど、ならない。
脂肪の繊維というか組織がしっかりしている印象。
「山クジラ」というけれど、
本当にクジラの脂身に近いように思った。
そんなにきつい匂いではないが、
あきらかに部屋中が獣くさくなったところで、
ネギ、ショウガをとりだして醤油を入れて火を止め、
一晩おいた。

翌日、冷えたブツを容器に入れて鍋とともに友人宅へ移動。
庭先にカセットコンロを設置、再度煮始める。
しらたき、ネギを入れ、醤油で味をととのえた。
みんな酔っぱらっていたせいか、幸いにも大好評だった。
豚汁のようだがやはり独特の風味があり、うまいと思う。

青空を見上げて、映画『茶の味』の劇中歌「山よ」を
心の中で歌い、イノシシに感謝をささげた。

2009-01-08-THU
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