読みかえす
「今日のダーリン」
2004/04/10
何かに驚いたとき、
不意に感動してしまったとき、
そういう気持ちをそのまま誰かに話すと、
予想以上に、ちゃんと伝わったりします。
気持ちの揺れも、言葉にこもったりする。
今週は、そんなふうな
「発見」のある「今日のダーリン」を、
みっかぶん、おとどけいたしましょう。


4月5日

【新人だった頃の気持ち】

「『SAY HELLO! あのこによろしく』
 の仔犬たちのページ、アルバムは
 生後18日目のところまで進みました。
 体重がだいたい
 1キログラムになったんですね。
 おっぱいを飲むことと、寝ること以外
 何もしてないみたいだったけれど、
 じっくりと
 『大きくなる』こともしていたんですねぇ。
 人間のこどもも、
 こんなふうに大きくなりますよね。
 実は、人間のおとなも、
 こんなふうに大きくなれるんじゃないかと
 ふと思ったのでした。
 おとなは体重増えたり
 身長高くなったりはしないけれど、
 昨日より今日のほうが、
 余計に経験という栄養をとってるんだから
 少しずつでも、
 大きくなってるってことじゃないのかなぁ。
 もちろん仔犬や赤ちゃんの成長とちがって
 目に見えるようなことでは
 ないんですけれどね。

 4月からたくさんの人たちが、
 新しいスタートを切ります。
 何度も何度も4月を迎えているぼくは、
 これを新しいスタートだと意識することは
 なくなっていたのですが、
 これからは、毎年、4月を迎えるごとに
 新人の気持ちになろうと思います。
 あ、うそうそ、それは無理だわ。
 ほんとうに新人の気持ちに
 なれるわけもないけれど、
 新人だったことを
 思い出すくらいはできますからね。
 この季節に新人としてスタートしたら、
 梅雨どきはどういうふうに
 感じるんだろうとか、
 夏をどんな気持ちで迎えるんだろうとか、
 想像してみることにします。
 秋になったら、
 4月にまごまごしていた仕事が、
 普通にこなせるようになったとか、
 他の人との組み方が
 じょうずになったとかね。
 あ、そうそう、大事なこと、夏は当然
 ユラールのTシャツを着てるんです!」


4月7日

【大きいことと小さいことの関係は】

「ぼくらは、無意識に
 こんな考え方をしてないだろうか。
 それは、つまり、
 大きいことと小さいことの
 関係なんだけれどね。
 国というものを、
 大きなお盆のようにイメージして、
 そこに小さな皿として
 県とか市が乗っかっていて、
 その小さなお皿の上に、
 個人が乗っている。
 そういうふうなイメージを
 持っていないかということ。
 親亀の背中に
 子亀を乗せて〜みたいな、ね。
 そして親亀がこけたら、
 みなこけるんだ、という考え。
 だから親亀を、大きなお盆を、
 つまり国を守るという考え。

 でも、歴史はちっとも
 そういうふうになっていなかった。
 1945年に日本という国は
 戦争に負けたのだけれど、
 つまり親亀はこけたのだけれど、
 子亀孫亀は生きていた。
 江戸時代から明治にいたる時代にも、
 幕府は無血開城というかたちで、
 自らの死を選んだけれど、
 この時代に生きていた人々は、
 死んではいない。
 その時期、黒船が
 日本を脅かしていたはずなのだけれど、
 日本に住んでいる人々は、
 小舟に乗り込んで、この珍しい黒船を
 見物にでかけたりしていた。

 昨年9月の
 『智慧の実を食べよう』のなかで、
 吉本隆明さんは、
 日本人は国というものを
 「そこらへんの草や木や自分や景色や、
  みんなひっくるめて
  自分の国だと考えちゃうんだけれど、
  西欧では、国というのは、
  その国の政府のことを言うんだ。
  そういうことを
  憶えといたほうがいいです」
 と言っていた。
 国が滅びても、
 そこにいる人間は滅びるもんじゃない。
 歴史は、たしかにそう動いてきた。
 今日から、
 みなもと太郎さんとの対談が始まります。
 『風雲児たち』という大長編マンガで、
 みなもとさんが描いた日本人たちは、
 悲しみや苦しみも
 背負っていたかもしれないけれど、
 なかなかしぶといんです。
 このしぶとさが、
 いままた必要なときだと思うなぁ」


4月9日

【谷川俊太郎さんの声に、震えた!】

「いずれ、二度三度と
 しつこく書くことになるでしょうから、
 ここでは軽く触れておくだけにします。
 谷川俊太郎さん
 (いまは「ユラールTシャツ」の
  モデルまで
  やってくださっているのですが)の、
 次のアルバムが、
 もう、とんでもなくスゴイです。
 まだジャケットもできてない状態で、
 まるはだかに近いような
 CD試聴版を聴いて、ほんとに、
 宇宙の果てに投げ出されたような
 怖いくらいの快感を経験してしまいました。
 いえ、怖いということが
 言いたいわけじゃないのです。
 素晴らしいのです、怖いんじゃない、
 なのに怖いくらいに、
 震えるくらいに、スゴイ作品です。
 この感想といいますか、気持ちの熱いうちに、
 「ほぼ日」読者には、
 ぜひ伝えておきたかったんです。

 みなもと太郎さんとの対談がはじまって、
 それを読んでくれている人に、ぜひぜひ、
 大長編歴史マンガ
 『風雲児たち』そのものを
 読んでいただきたいと思うのです。
 しかし、いま現在は、
 リイド社でせっかく組んだ
 20巻箱入りセットは、
 売り切れ中であります。
 でも、予約は受け付け中なので、
 ちょっと待つ覚悟で
 予約しておくことをオススメします。
 ぼく自身は、バラで1巻ずつ入手するのが、
 けっこうめんどくさかったんで」

2004-04-10-SAT


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