- ──
-
鮫島さんは、経営者として、
エチオピアの職人さんたちの「やる気」は
どう出してもらってるんですか?
- 鮫島
-
そこは‥‥とっても重要なテーマなんです。
製品のクオリティに直結してますし、
そもそも非常に難しい、
レベルの高い作業をやってもらってますから、
仕事に対する気持ちは、
やっぱり高めていってもらわないと。

- 酒井
-
「えー、そんなことできないよー」って
思われちゃったら、ダメだもんね。
- 鮫島
-
そう。だから、はじめのうちは、
日本式の方法で無理に「管理」しようとして、
何度も職人とぶつかりました。
今は、童話「北風と太陽」でいう太陽作戦で、
自分から、より良いものづくりを
目指してもらえるように、
まずは彼らのモチベーションを上げようと、
そのためにできることは
ぜんぶやろうと決めて、
順番にとりかかっているところです。
- ──
- たとえば?
- 鮫島
-
工房の環境つまり清潔さや明るさ、
作業のしやすさなどは当然のことですけど、
自分たちの成長を
自覚しやすいような指標をつくったり、
みんなが意見を言いやすい場を整えたり。
社員旅行もありますよ。
エチオピアで社員旅行をやっている会社は、
うちくらいかもしれません。
- ──
-
社員旅行って、
どういうところへ行かれるんですか?
- 鮫島
-
このあいだは、
南部のアワッサという湖畔のリゾート地に、
2泊3日の旅程で行ってきました。
首都のアディスアベバからは「3時間」と
言われていたのに、
トラブルに遭って6時間もかかって、
着いたのが夜中で、大変だったんですけど。
- ──
- わあ(笑)。
- 鮫島
-
旅自体が生まれてはじめてという人もいて、
私はツアーコンダクター兼カメラマンで、
1000枚くらい写真を撮らされました(笑)。
- ──
- 2泊3日なのに。
- 鮫島
-
みんな大はしゃぎで、すごく楽しかったです。
あとは、新年の日に羊を1匹、買ってきて、
自分たちでさばいて食べたりとか、
職場の交流については、大切にしています。
- 酒井
- いいなー。楽しそう。

- 鮫島
-
フェアトレード、つまり
公正な賃金を支払うことは当然ですけれど、
やっぱり「この会社ではたらきたい」
と思ってもらうには、お金だけじゃなくて、
ここではたらけることが誇りだし、
幸せだって感じてもらえるような、
そんな会社にしていかないとダメですから。
- 酒井
- そうだよね。ほんと、そう思う。
- 鮫島
-
バッグを買ってくださったお客さまからね、
ときどき、お手紙をいただくんです。
その内容を現地の言葉に訳して、
ミーティングのときに読み上げてるんです。
- ──
- ええ。
- 鮫島
-
うちでは、誰がどのバッグを担当したのか、
わかるようになっているので、
その人を、みんなの前で表彰するんですね。
- ──
-
それは、うれしいでしょうし、
仕事へのモチベーションも高まりますよね。
- 鮫島
-
彼らにとって、
ソニーやトヨタを生んだ日本という国は、
今でも、あこがれの先進国なんです。
そのあこがれの先進国のお客さまから
「あなたがつくってくれたバッグ、
とても素敵だから
とても大切にして、愛用しています」
という手紙をもらったら、
もう鼻高々になるし、泣いて喜ぶ人もいて。
- ──
- 自分の仕事に誇りを持てますよね。

- 酒井
-
あらためて言いますけど、
サメちゃんところでつくってるバッグは、
デザインも個性的だし、
クオリティも本当にしっかりしてるよね。
- ──
-
ええ。なんなんでしょうね、
あのポテっとした、かわいらしさって。
- 鮫島
-
うれしいです。ありがとうございます。
ブランドものには、
ロゴマークやエンブレムがついてますけれど、
わたしは、それがなくても
「あ、アンドゥアメットだ」って
わかってもらえるような、
個性的なバッグをつくりたいと思ってました。
- ──
- 実際、ひと目でわかりますよね。
- 鮫島
-
好きでいてくれる人には
「わたし、アンドゥアメットじゃなきゃダメ」
と言ってもらえるような、
そんなデザインにしたいんです。
- ──
- 無難なものは、つくりたくない。
- 鮫島
-
逆に言うと、嫌いだって人が出てくることも、
あんまり恐れてはいません。
誰からも愛されたい、みたいなデザインじゃ、
結局、誰にも選んでもらえないと思う。
- 酒井
-
このデザインも、手が込んでいるよね。
モザイクは、革を重ねて切ってるんだっけ?
- 鮫島
-
これは、日本の寄木細工の伝統技法を、
革で再現しているんです。
さまざまな色の革を、
すべて手作業で貼り合わせるのですが、
その色の合わせ方も、
職人がそのときどきで決めていくので、
ひとつとして
同じ組み合わせの柄ができないんです。

- ──
- へえ。
- 鮫島
-
お客さまの手元に届くバッグすべてが
「一点もの」なんです。
- ──
- 工房では分業ではないということですが。
- 鮫島
-
ええ、ひとりの職人さんが、
最初から最後まで通してつくっています。
- ──
- それって、めずらしいことなんですか?
- 鮫島
-
日本の職人さんに、
技術指導に来ていただくことがありますが、
みなさん、驚かれます。
「今までたくさんの国で工場を見たけど、
ここの職人さんたちは、
たぶん、いちばん幸せだと思う」って。
- ──
- それは、ぜんぶ、ひとりできるから?
- 鮫島
-
そう、最初から最後まで、
ひとりでやらせてもらえるところって、
あんまり、ないらしいんです。
今は、高級品であっても、
オートメーションみたいにして
分業でつくるのが、一般的みたいで。

- ──
-
気仙沼ニッティングという会社があって、
あそこのニットも
港のおかみさんたちが修練を積んで、
一着のニットを
ひとりで仕上げてらっしゃるんです。
ようやく編みあがったニットが
お手紙といっしょに、
お客さんのもとに届くんですけど、
鮫島さんの会社と、
なんとなく似てるなあって思ってました。
- 鮫島
-
そうなんですね。
気仙沼ニッティングの御手洗瑞子さんとは
過去にいくつか、
同じ賞をいただいているんですよ。
- ──
- え、どんな賞ですか?
- 鮫島
-
カルティエの
チェンジメーカー・オブ・ザ・イヤーとか、
日経ウーマン・オブ・ザ・イヤーとか。
日本政策投資銀行の若手女性起業家の賞は、
里奈さんも受賞したよね。
- ──
-
酒井さんも、受賞歴すごいんですよね。
なんか、偉い人と会ったりしてる写真を、
Facebookで見たりしました。
- 酒井
-
わたしが会った偉い人、
ケネディ大使と、デンマークの王子さま。
- ──
- おお、王子さまにまで!
- 酒井
- 謁見しました。
- 鮫島
- いいなぁ、王子さま、かあ(笑)。
- 酒井
- いいでしょー、王子さまよ!(笑)

<つづきます>
2017-05-22-MON

