MUSIC
虚実1:99
総武線猿紀行

総武線猿紀行第138回
「LA郊外のフレンチかぶれとは?」その4
郊外の芸術集落とは?

え〜、4回連続になりました、
アメリカのフレンチかぶれユニット、ポペレッタですが、
今月9月号のサウンド&レコーディングマガジン



で、なんとカラー4ページにわたる
大特集を組んでいただきました。
僕がしたインタビュー全貌をそのまま載せてくれたのです。
内容はこのエッセイと違って(笑)
レコーディングとかについてですので、
ロックのレコーディングに興味がある人は
是非読んで見てください。

また、特製CD−R付き・ほぼ日販売で買ってくれた
haruさんから、うれしいメールが届きました。

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サエキさんの文面に惹かれて、購入を申し込んだ処、
これ、非常に良かったです。
お盆休みの最中、昼下がりに洗濯物を畳みながら、
夕食後にのんびりしながら等々、掛け続け、
我が家のとッ散らかったリビング兼ダイニングキッチンが、
妙にオシャレな雰囲気に包まれ続けていました。
今度はドライブにも連れてこーっと。
おまけの曲もカッコ良かったです。
指紋がしっかり付いた手書きのCD-Rが
余計にイイ味出てます。
とはいえ、あのジャケット気に入ったから
初回限定の絵葉書も欲しいなぁ。
友達のプレゼント用に何処かで1枚買って来て
絵葉書だけ自分のにしちゃおっかなぁ。
*波留*
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あ〜、こういう手紙は本当にうれしいです。
絵葉書は後でお送りするので、
もしこのページで買われた方で欲しい方がいらっしゃったら
メールをください。
後送します。すいませんでした。

さて、このポペレッタ一家を語るには、
オーハイの街のイメージを避けては通れません。
オレンジ畑が主産業で人口7000人という、
LAとサンフランシスコの間に位置するこの街、
スペイン人部落だったようですが、
もうひとつの側面として
ヒッピーコミューンだったという説もあります。
といってもドラッグの匂いはなく、
芸術家が人口に占める割合が多い、
という形でその痕跡を留めているようです。

具体的には知り合えませんでしたが、
たくさんのアーティストが住んでおり、
趣味の良い雑貨屋さんがあったりするのは
その影響と思われます。
また、けっこう有名な寄宿学校があるそうで、
中学高校をこの学校に入れるために
オーハイに子供を送る家庭もあるようです。

ポペレッタのこのアルバムのジャケットは、
グレッグの近所、車で10分に住む
Andy Engelさんという人が作っています。
ラウル・デュフィ



を思わせるような時間経過を色のズレでしめす、
にじんだ絵のジャケット



はまさに南仏風ですが、
この達者な絵は彼自身が書いたもの。
彼はEMIレコードを中心とした売れっ子デザイナーで、
ザ・バンドの3枚組みCDボックスの
デザイナーを務めたのも彼です。



その他、ウルトラ・ラウンジという人気コンピや
たくさんのCDを手がけていますが、
例えば1950年代のSF映画ポスター風のジャケット



など
「これはどっから拝借した絵ですか?」とか聞くと
「いや、自分で描いたんだよ」と答えるのです。
モンド風の絵は、けっこう昔の絵葉書などを
そのままコピーして使用されることが多いですが、
彼は
「だいたいイメージは頭に入ってるから描いた方が速い」
と、なんでも自分で描いてしまうのです。
フレンチ風のジャケットは初めてだったようですが、
「こんな感じかなあ〜」とチャッチャと描いたそう。
ラウル・デュフィのことも知りませんでした。
「こんな感じかなあ〜」で
なんでもかんでも描けてしまうその筆力は
まさにアーティスト。
それがオレンジ畑の真ん中で
ゆうゆうと仕事をしているのですが、
もちろんそれを支えるのはインターネットの力なわけで、
入稿などがネットやCD−Rで
できるようになったからです。
昔はLAの街中に住んで仕事をしていたわけです。

この写真を撮った後、
真夜中の真っ暗な山の中のこのスタジオに
原稿を取りにいったのですが、
本当に暗い夜のド田舎に不夜城のように
煌々と明かりを灯し、
マックのディスプレイに向かっている姿は、
ある種今のアメリカを感じさせます。


デザイナーの庭もこんな感じ

日本だと、たいていの田舎でも必ずコンビニなどがある。
反対に、コンビニがないほどの田舎だと、
社会との連続性がなくなる感じがする。
このオーハイはたとえばグレッグやその仲間の芸術家の人が
連絡を取り合って住んでおり、
レストランでは近所の人同士が
仲良くご飯を食べている様子がとても微笑ましいが、
みんなネットなどで
都市との関係性は確固と持ちながらの関係なので、
そこがある種の情報パワー感を
かもし出しているような気がします。

前回もいったように欠けているのは
飽食とクラブや映画館、ギャンブルなどの娯楽。
それらは2時間のドライブで獲得しなければなりませんが、
親にとってはまさに超安心な環境だし、
芸術家もそれでかまわないのです。
夜、帰ろうと車を走らせたところ、
ちょっとした信号無視ですぐにポリスがやってきました。
LA在住のコーディネーターの身元が
洗いざらい訊かれていました。
「ツインピークス」みたいな街にならないように
警官もとっても真面目に仕事してるな、という印象。
イロイロ危険な田舎があるのでしょうが、
こういう安全なところもあるのですね。

そんなところでスクスクと育ったグレッグの娘エヴァは、
親の血を継ぎ歌が大変に上手で、
このアルバムの
「ハウス・オブ・ラブ」という歌を歌っています。
音楽のハウスと、
ファミリーのハウスをかけているわけですが、
そのリアリティーはすごい。
このオレンジ畑の真ん中のプール付きの家で、
歌とプール芸術(お母さんは絵も描く)に囲まれながら
「ウェルカム・トゥー・ザ・ハウス・オブ・ラブ」
と歌うわけですから。

冒頭に紹介した、haruさんが感じた家庭感覚
「昼下がりに洗濯物を畳みながら〜掛け続け、
 我が家のとッ散らかった
 リビング兼ダイニングキッチンが、
 妙にオシャレな雰囲気に包まれ続けていました」
というのも偶然ではなく、
実際にそういう美しい生活を
物凄いパワーで作り上げながらの音楽制作だったので、
リアリティがあるのでしょう。
グレッグの音楽の先生はエルトン・ジョンですが、
エルトンにあった都市型の生活感覚が、
プロトゥールスなどの自宅録音機材の発達により、
実に具体的に郊外ビジョンとして変化、
結実したのでしょうね。

昔の映画、例えば「ピクニック」とか
TV映画「奥様は魔女」のように
60年代までのアメリカの家庭は
家父長制っぽさが残っており、
父親は毅然として、ちょっと威圧的な存在ですが
グレッグは家が仕事場のせいもあり、
イヒヒヒとした腰の低いスマイル満載で
全身全霊で郊外家庭構築に邁進しているイメージです。
奥さんはむしろ
グレッグより主然(あるじぜん)としていて、
悠然と絵を描いていたりします。
ずいぶん30年前とは、
家庭のイメージも変わったものです。
友達の家庭にも
そういうお父さんはチラホラみられますけど、
見上げたものです。

彼らはサントロペにも別荘を持っているわけですが、
ポペレッタのアルバムはそうした南仏の風景と、
こうしたLA郊外の家庭環境のビジュアル感と、
そして南仏における妻との出会いや愛の物語が、
フレンチ感と絶妙に結びつき、なんだか不思議な
インターナショナルな美しい世界観を作り出しています。

例えばフレンチセンスは、
こうしたミックスされる要素の距離性から、幻想の、
ヴァーチャルなセンスになっていくのかもしれません。

同じように日本的センスのようなものも、
将来的にはネットや飛行機の力で、
少しづつインターナショナルに
溶けていくかもしれないのです。

ポップスは従来、都市中心に作られてきましたが、
こうした長距離で結ばれたインターナショナル感覚とか、
変化していく家族感や恋愛感覚で、
また別の可能性を見出していくような気がするのです。
(この項終わり)



あの「想い出の渚」のワイルドワンズが
オリジナル4人編成、レパートリーでGS時代の感覚で、
演奏することになりました。
これは貴重な機会で、30年ぶりの出来事になります。
また、サリー久保田、サミー前田他、
豪華なDJやライブゲストで、僕が大橋巨泉を意識して
GSマニアの大森眸さんと司会します。
25歳以下(精神年齢)という
入場制限が設けてありますが、
「ほぼ日」読者は当然フリーパスにします。
(万が一の場合、入り口で
 「ほぼ日でサエキに聞いた」といってください。)

BEATPOPS IN GINZA
 featuring THE WILD ONES



TV「ビートポップス」の感覚で、
DJ&ライブ・パーティを
元銀座「メイツ」のケネディハウスで!
ライブ:ワイルドワンズ、
鈴木やすしとゴールデンサウンズ、ドンキーズ
DJ:サミー前田、サリー久保田、鈴木やすし
ホスト:サエキけんぞう、大森眸

9月1日(日)午後4時30分開場 午後5時開演
入場資格:(精神年齢)25歳以下。
入場料:1500円(1ドリンク付き)
at KENNEDY HOUSE
http://www.wildones.co.jp/kennedy/index.html
TEL 03-3572-8391〜3
中央区銀座7-108 コリドー通りB1F
●ソニービルより、
 新橋に向かい2つ目の信号を右折、正面突き当たり。
●帝国ホテルより、
 JRガードをくぐり高速道路下を右折7軒目


ジョルジオモロダーのアシスタントも勤め、
スティーリーダンのウォルターベッカーと
リッキーリージョーンズを造り、
k.d.ラングでグラミー賞5部門ノミネート、
エルトンジョンの後期最高傑作をプロデュースした
グレッグ・ペニーが作り上げた
POPERETTAのCDがついに発売になりまた!
これを聴けばきっと結婚できるぞ!
(詳しくはこちら)
http://www.jla.co.jp/amusement/

キャトル・セゾン コンピレーションCDシリーズで
人気を博しているユニットとしてもおなじみです。
大貫妙子さんもコメントを寄せてます。

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poperettaの音楽はまさに香り高い
絶好の美味しいワインなんです。
ミュージシャン魂を揺さぶる「おいしい」が
いっぱい詰まった代物で、
ちょっと、ちょっと、ちょっとー!!
これ、知らないとマズイでしょ!なんです。
[大貫妙子]
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このページの愛読者のみなさんのみ!
に、なんと素敵な特典「サエキ特製CD−R
(お楽しみトラック入り〜内容は秘密)」
がついたこの新作CDを限定予約にてオーダーを承ります。
(限定10枚としていましたが、
 あまりの好評にサエキが気を良くしまして、
 増産することに決定しました。
 現在20枚突破、30枚までは焼きます!
 ふるってご応募ください!)

お申し込みはメールで。
あて先はこちら!
pearlnet@kt.rim.or.jp

振り込み確認後、すぐにお送りします。
(発売日とほとんど同時に送付作業を開始しますので
 今申し込めば、すぐ届きます)

なお、郵送、郵便書留等でもお申し込みいただけます。
(有)パールネット
〒150−0001
渋谷区神宮前6−28−5宮崎ビル402
(TEL)03−3486−8045
(FAX)03−3486−8945

2002-08-21-WED

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