MUSIC
虚実1:99
総武線猿紀行

総武線猿紀行第108回
「俺のフランス、君のフランス」その2


オシャレなフランス像を求めたければ、
外国にあるフランス物を選ばなければならない、
という恐るべき現実があるということを前回話しました。

歴代のアダモ、ダニエルビダル、
クレモンティーヌといった、
日本人に絶大な人気を誇るフレンチポップスの有名人は
フランス本国ではあまり知られていない
という事実もあります。
(フランス・ギャル、ミッシェル・ポルナレフ、
 ヴァネッサ・パラディなどは本国でも人気)
明らかに日本人のイメージするフレンチがあって
それに合ったアーティストが売れるのでしょう。

実は、今回僕の作ったオムニバス、
【chez elle, hiver (シェゼル、イベール)
 〜La musique des quatre saison〜
 彼女の部屋、冬〜キャトルセゾンの音楽】
の一曲目を飾るアーティスト
popperetta=ポペレッタは、
意外なアーティストでした。





「もうこれ以上、フランスをイメージするグループはない!
 しかも南仏の海岸のたゆたう夏と青空を彷彿とさせる!」
と選んだポペレッタは
去年EMIフランスのみからデビューした、
バキバキにフレンチを気取ったグループでした。

彼らに直接アルバムに曲を入れさせて欲しいと頼もうと、
アドレスをたぐりましたが、
その住所はなんとロサンジェルスでした。
その中心人物GregPennyはなんと
エルトン・ジョンやk.dラングなどを手がけた
まぎれもない米国人であり、奥さんが仏系らしく、
フランス語でも歌わせて、
ジャケットなども完全フレンチ仕様にしてデビューした
「偽フレンチバンド」だったのです。



「フランスは遠くにありて思うもの」とは
日本だけのことではなく、
アメリカでも多々、そういうことがあるのです。
万年・夏日よりの西海岸の米国人が憧れて描き出す
フランス南海岸のたゆたう夏…。
ああ、ややこしい。

意外とポペレッタのような、
フランスかぶれの米国人と僕らは
気が合いそうな気がします。
フレンチ盤CD店のバイヤーは
「ポペレッタみたいに『フレンチっぽい』
 ポップなフレンチポップスは本国にはほとんどない。
 もっと僕達、外国人のイメージするフレンチポップが
 現地で生まれればもっと儲かるのに・・・」
とグチります。

このようにフランスの外にフランスあり
というような状況もありますが、
日本で出会うフランス人に
「これが本当のフランス人か?」
と驚かされることもあります。
今ではオープンカフェの草分けとなった
原宿のパレフランス1階の「オーバカナル」。
ここはカフェオレやグラスシャンパンが気軽に楽しめる
オシャレ極まりないフランス発カフェ。
この店の開店時1995年の4月、
人前に初めて出現したカヒミ・カリイさんや、
夏木マリさんをフィーチャーした
「第一回ゲンスブール・ナイト」もここで行いました。

このカフェには当時1年ぐらいの間、
地下にフレンチレストランがあったのです
(現在は閉鎖中)。
鳩の香草焼きとかなんとか、フランス人サイズで安く、
結構美味しかったので
たくさんのフランス人が御用達でした。
そんなレストランにある日、
30人ぐらいのフランス人サラリーマン男の集団が
やってきました。
みんなフランス男子らしく、
そこそこカッコいい背広を着こなした短髪の好男子です。

その騒ぎ方がすごかった!
言葉の調子とか、普段キドっている態度をカナグリすて、
怒鳴る、歌う!
その壮絶な泥臭さには
ホントにフランス人のイメージが変わりました。
フランス語はわからないので、
どんな調子に僕に聞こえたか、
空想で書いてみることにします。
「お〜パトリック、歌えや」
「う〜、俺は歌なんか歌えね、ピエールが歌えや」
「いいど、さあ、歌うどう!みんなもいっしょに歌えや!」
みんな「オー!」
「手拍子、手拍子」
ザッザッザッザッザッザッザッザッ!
「おーらが国さのご自慢はよ〜」
合唱「オーラの国さのご自慢はよ〜」
「ワインにバケット、七面鳥!」
合唱「ワインにバケット、七面鳥!」
「乙女が葡萄を踏みまする」
合唱「乙女が葡萄を踏みまする!ヒョウヒョウ」
「隣りの国さのご自慢は」
合唱「隣りの国さのご自慢は〜〜?」
「ヘビに野ウサギ、モグラにジャガイモ」
合唱「ヘビに野ウサギ、モグラにジャガイモ?」
「処女は滅多におりませぬ」
合唱「処女はほとんどおりませぬ!ヒョウヒョウ」
「ギャア、ワア!」・・・
まあ、妄想の歌詞ですが・・・。
こんなちょっと下品な歌詞を歌っているような
ドロくさ〜い「雰囲気」。
この光景を見たら、アニエスbを愛する女性のみなさんは
間違いなく考え方を45度ほど変えたと思います。

また、在日フランスの商工会議所のトップが集まる
赤坂のホテルの晩餐会のニ次回のディスコタイムに
光栄にも出席できたことがあります。
男性はタキシード着用、女性はドレス着用ですが、
この女性のドレスがスゴイ!
グッチやシャネルなど、トップデザイナーの
その年のモードを着るのがたしなみだそうで、
50〜100万円するものをみんな着てくるのです。
ヨーロッパ社交界とはそういうところなのですね・・・。

その会場のトイレでのこと。
タキシードを着た
恰幅のよい30代の若者がやってきました。
彼は「ああ、酔っ払った」というように
洗面台の蛇口の下に頭を突っ込むと
猛然と水を流してジャアジャアと頭を洗い始めました。
周囲3〜4メートルに飛び散る水しぶき。
そして、頭を洗い終わるやいなや、
今度はペーパータオルで「グシャグシャ」と
頭を拭き始めたのです。

なにせ、頭を洗ったのです。
そう簡単にペーパータオルでは
ぬぐえるわけではありません。
2〜3枚を一度気に引きつかんでは
「グワシャグワシャ」と拭きまくる。
そしてフタが回転式になっているゴミ箱に、
中に入れるではなく、上に乗せる!
その回数14〜5回を経て
ゴミ箱の上はグチャグチャになった紙タオルでいっぱい!
周囲に散乱!
頭がなんとか乾くと、手グシで整えて、
口笛を吹いて立ち去っていきました。

小さな事件ですが、
この時にも僕のフランス観が変わりました。
「アメリカにはいいクスリになったわよ、全くいい気味!」
某有名フランス女性は僕に
ワールドトレードセンター事件について
こうコメントしました。
単にアンチアメリカな日本人の発言と違い、
キッパリとしたこういう発言には
歴史の重みを読み取れないこともありません。
しかし、フランスとはオシャレ、というイメージとは
ちとズレてくるような・・・。

フランス好き、フランスマニアの筆頭で知られる
僕のごく親しい男性友人は
「フランス好き、同時に韓国好き、
 おまけに大阪弁とか名古屋弁などまるだし」
といった無視できない性向もあります・・・、等々。
このようにリアルなディープ・フレンチは
ちょっと泥臭い・・・?かもしれない。
 
そんな下味の知識を仕入れながら、
オシャレな(外国産)フレンチに酔いしれて見ませんか?
(この項終わり)


第六回 緊急牛肉スキスキ・キャンペーン! 「長春館」

先端に東京で美味しい店を、
通のように良く知っているわけじゃない。
だけど、ここにみんなで行けば
たいていの場合「ウメエ!」と満足される
というレベルにあると思うのが
新宿三丁目、御苑大通り沿いの「長春館」だどん。
特にバーゲン価格はしてないと思うから、
スポンサー(会社社長、親戚のオヤジさん)
とかいたら連れてってもらいたい。
まあ、昔でいう普通の値段。ロース1100円とか。
「牛角」もいいけど、こういうベーシックな店で
タマには伝統の味も食べたいですな。
若い子といったら、
ユッケを焼いちゃったのが忘れられない。

「長春館」
TEL: 03-3354-5141
FAX: 03-3341-7864
住所: 東京都新宿区新宿3-8-10
営業時間: 12:00〜24:00
定休日: なし
http://www.kikumasamune.co.jp/
guide/list_t/t030/tyousyunkan.html

2001-12-24-MON

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