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虚実1:99
総武線猿紀行

総武線猿紀行第102回
「寄宿学校入りたかったですか?」




「ハリー・ポッターと賢者の石」見て来たよ!
英国で早くも興行収入
「スターウォーズ・エピソード1」抜いたって。
とにかくものすごいSFXではある。
予告編のホウキにのって
ビュ〜〜ンと空中を飛ぶところに魅せられて見に行ったよ。

主人公の生まれながらのエリート魔術少年
ハリー・ポッターは、
ロンドンのキングスクロス駅にある
人間には見えない9と3/4番線から急行にのって
魔術学校に入学する。
(7と1/2フロアに入りこむ
 「マルコビッチの穴」に似てるなあ。
 マルコビッチが似てるのか?)
そこは、宿舎のある学校。
寄宿学校が舞台なのです。

この郊外にある寄宿制の魔術学校というのがミソ。
思わず萩尾望都の「ポーの一族」を思い出す。
寄宿学校、ギムナジウム(ドイツの中等学校)
リセー(フランスの中等学校)など、
ヨーロッパの厳しい学校のノスタルジアは
けっこう日本の子供にもアピールするのでは?
好きな世界です。
寄宿学校に対する憧れのようなものは今でもある。

自分の住んでいるところから、父母兄弟から離れて、
友達と先生しかいない世界に隔離される。
まず、父母兄弟から離れるというところが
意外と少年には憧れだったりする。
さみしいだろうけど、
友達だけでエスカレートさせたい世界がある。
この話しでも、夜中に友達と学校をウロついて
メチャクチャ怒られるが、
夜中の学校探検はしてみたかったことのひとつ。

なにかというとコワイ先生に怒られるのだが、
先生がやたらとコワイというのも
今ではノスタルジックな現象なのか?
僕の小学生(普通の市立)の時代は、
まず男性の担任によく殴られた。
左のホッペタをギュウっと握って餅のようにのばし、
ひっぱった上で右のホッペタをビビンビンと
水木しげるのネズミ男のようにビンタする。
これが痛かったが、不思議と先生を憎む気持ちはなかった。
それは一方で可愛がってくれていたからだ。
僕を可愛がってくれてない女先生も僕をビンタした。
その人に対しても「ハマグリばばあ」などと
悪態ついてはいたものの、とくに憎くはなかった。

今にして思えば、
女性の先生はハマグリばばあや修道オバケ、
ゴジラなど怪物のような人ばっかりだったが、
先生が妖怪のようであればあるほど、
学年に活気があふれていたような気がする。
(上位学年にはベテランの妖怪先生が就く)そして、
そんな面白おかしい学校ほど、
夜は深い闇の中を休んで鋭気を養うのだ。
正直いってこういう妖怪先生たちの体罰は賛成なのである。
今でもゴジラにビンタしてほしいぐらいなのだ。
僕のマゾっぽい気質はこの時代に養われたのだろうか?

SFXを駆使したハリーポッターの学校の先生方の
特殊メイクやぬいぐるみには、
そうした怪物のように見える、
昔の老年のベテラン先生に対する
ノスタルジアがあふれている。
学校たるもの、
人間離れしたキャラクターがいて欲しいといわんばかりだ。
そういう人に囲まれての寄宿生活は悪くないのでは?
という気持ちが、心の底にはある。

実際の寄宿生活はどうであろうか?
日本のある寄宿高校を卒業した僕の歯医者の友達は、
男らしい大変堂々とした人格だ。
人付き合いがこなれているというか、動じるところがない。
男同志のつきあいの、
大体の呼吸を高校時代に体得しているからのようだ。

しかし、こんなエピソードもある。
その友達の部屋で隣りの奴は、なんとゲイだったようで、
ある日昼間に部屋に帰ってきて見ると、
なんと、その友達がホモ達をベッドに連れこんで、
セックス本番の真っ最中だったという!
ささってたわけだ。
さすがに衝撃は大きかったらしい。
想像をするだに、匂いたつ。
しかし、それも寄宿舎ならではの
風景なのではないだろうか?(笑)

コワイ先生、ウスぐらい学校、
父母から離れて友達とだけ過ごすホロにがい日々…
ハリーポッターの映画が用意した
リアルなノスタルジアの仕掛けはけっこう渋いと思う。

表面的なウリの部分について。
スターウォーズ真っ青のSFXはかなり楽しめる、
というか全体がスターウォーズの作りに似ている。
場面展開とか、対決の構図とか、飛ぶ見せ場とか。
ジェットコースタームービーだ。

しかし、ものすごく単純な勧善懲悪的な設定や、
あまりにエリートすぎるハリーポッターの設定は、
魔術の両義性(善でも悪でもない)イメージを
膨らませるにはちょっと物足りないかな?
グリムとかイソップのトロっとした毒って
こういうメジャー映画で出せないのか?
アダムズファミリーはいい線いってたぞ。
神が悪魔のようにコワかったり、その一方で優しかったり、
毒っぽかったり、無責任だったりするというのは、
何も東洋の専売特許ではない。

悪でも善でもない世界に観客をたたきこむ物語性の奥深さは
「千と千尋・・」は、世界に誇れます。
勝ってます。
 


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2001-11-21-WED

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