MUSIC
虚実1:99
総武線猿紀行

総武線猿紀行第82回
「追悼ピチカート・ファイヴ! の巻
 その2」


ピチカート・ファイヴの
1985年、渋谷ライブ・インにおける
客席のなごやかな雰囲気は
解散のその日まで続くものだった。
彼らの音楽はある種の趣味(映画の好み、生活感)を
共有させるものだが
初めて見た人も、
そのたたずまいには新鮮さを覚えただろう。

というのも、リーダーだった
小西康陽の尋常じゃないハジケぶりに
だれもが楽しさを感じていただろうからだ。

一瞬たちとも動きをやめようとしないで、
手足をバタバタとふりながらパーカッションをやったり
ステップをふんだり。
その動きのユニークさはちょっと文字では伝えようがない。
赤塚マンガ「おそ松くん」でハタ坊が「ジョー」と
手足をバタバタさせている感じといえばいいだろうか?
(というか、それは本人が後に得意技のように
 真似してみせてくれたのであるが、そっくりであった)
とにかく手、とくに足が良く動く。
オシャレなバンドのメンバーがかつて、
そんなに動くことはなかった。
「なんでそんなに動くんだろう?」と思ったが、
それには理由があった。

小西康陽の
リズム(後にグルーヴという名前になる)に対する
飢えているのではないか? と思われるまでの激しい固執が
日本のポップ・シーンに革命を起こすことになるのである。

ピチカート・ファイヴに一貫していたこと、
それはデビューのテクノポップ的サウンドから
90年代のソウル、ドラムン・ベース、
ハウス風サウンドにいたるまで、
日本のポップに強いリズムを導入したことだ。
それはあの小西の手足の動きが
先導していたといってもいいのかもしれない。

客席にはプロデューサーである細野晴臣さんも来ていた。


2001年3月31日、
お葬式の招待状:中間が点線で切れるようになっていて、
双方の連絡先になっている。最後までオシャレ〜!



ピチカート・ファイヴが画期的であった理由として、
ヴォーカリストがどんどん変わったことがある。

デビューからファーストアルバム
「カップルズ」までを務めたヴォーカリストの
佐々木麻美子はやめて、そのまま映画業界にはいった。
(本望だったのではないか)
そしてレッド・カーテンという
ネオGSの周辺にいたバンド
(のちにオリジナル・ラブに改名)の
田島貴男が加入した。

女性ヴォーカルがやめて
男性ヴォーカルが入ったバンドなんてなかなかない。
調べればあるのかもしれないが、僕は知らない。
何せ、キーや歌詞の関係上、
レパートリーの大半は使えなくなるだろうからだ。

田島貴男の加入したアルバム
「女王陛下のピチカート・ファイヴ」と
「ベリッシマ」「月面軟着陸」は
ソウルっぽい要素を秘め
90年代を予言するサウンドになった。

「女王陛下〜」は大ネタの*****のサンプリングで
堂々登場した。
ディレクターのマイケルは
プリンセス・プリンセスと
奥田民生のいたユニコーンの担当であり、
この3つのバンドが
日本ポップ・シーンに及ぼした影響は大きい。
その彼がピチカートにはしばしばパーカッションで参加し、
ライブも手伝ったりしたということが
ピチカートの雰囲気を良くだしている。

僕もピチカートこそゲスト参加したことはないが、
小西プロデュースの小泉今日子「CDJ」という曲の
コーラス(1人で1声)に使っていただいたことがあり、
ずいぶん光栄だったな、と思っている。
キョンキョンのコーラス、う〜ん、今考えてもうれしい。

小西康陽のキャスティングの面白さは
その後ずっと炸裂することになる。
特にラッパーとして大成功する高木完と
「東京ブラボー(高木完が在籍した)のくせに」
「〜のくせに」とハタから見れば
ハラハラさせるほどのやり合いがあった直後、
「オーヴァードーズ」という麻薬用語を冠したことで
驚かせたアルバムでいきなりラップを披露させたのも、
そうした面白さを出している。

しかしなんといってもビックリしたのは
田島貴男が脱退を表明した後、
今度は僕とは旧知である野宮真貴を
女性ヴォーカルとして採用したことだ。

女−男−女。
ヴォーカリストのこの変遷は、
ここまでくればやっぱり世界でも類を見ない変化だろう。

野宮真貴は僕がデビューしたバンド・ハルメンズの
コーラスとして初レコーディングをした人で、

もう22年来の仲であるが、
ピチカートとして世に出るまで10年の月日がある。

彼女を見いだしたハルメンズのディレクター平田国二郎は
パンタ、ハルメンズ、Tバードなどを世に送り出したが、
ジム・ジャームッシュ作品
「ミステリー・トレイン」のプロデューサーとして
永瀬正敏と工藤由貴も送り出している。

その彼の、実は最大の功績ではないか?
と僕に思われるのが
野宮真貴をソロデビューさせたことである。

スタジオに現れたSF的とも思われる
特異なファッションの彼女をヒトメで気に入って
デビューさせたからである。
(この項続く)

 
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2001-06-04-MON

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