MUSIC
虚実1:99
総武線猿紀行

第39回
「本当の2000年問題」


2000年、ついに明けましておめでとう!
いやあ、結局ご無沙汰してしまいました!
やはり年末問題は11月には解決しないといけないですねえ。
クリスマスCDをけっこう(50枚ぐらい)コレクトして
いるのですが、そのありかを探すこともなく、
結局聞いたのは例年のとおりフィルスペクターと
ビーチボーイズ、ブロッサムディアリーの3枚だけ。
今は30日午前5時にこれを書いてます。
去年(1999年)の暮れは例年になく「年の暮れ感」が
速かったのが印象的でした。もう12月10日ぐらいには、
通りかかった小田急線沿線千歳烏山あたりにそこはかとなく
クリスマス以後の御正月手前気分が漂っていたのを
感知しましたが気のせいだったでしょうか?
そんな年の暮れ感が強まったのと、
2000年感が全くないのは何か関係があるのでしょうか?
そう、何が2000年問題かといって、全く2000年が来た
感じがしないことが最大の問題なのではないでしょうか?
僕らが子供の頃に予想していた2000年はもっと緊張に
充ちたものでした。空にはエアタクシーが飛び立ち、
シューターで荷物が届く、食べ物はけっこうチューブ化し、
勉強はテレビで、アンドロイドがそろそろできる、といった
科学物語を本気で信じてました。
それらは「鉄腕アトム」「サイボーグ009」「8マン」
といったSF漫画の影響が圧倒的に強かったわけです。
(90年代は「アキラ」だからなあ。この違いは大きい。)
現実はやっと「アイボ」(ソニーの作った犬ロボット)が
できただけ。それらの夢に比べたらそうとうなロウテクだ。
(余談ですけど「ニャーボ」を作って欲しい。どっか
書いてあったネタだが、「ニャーボ」はいうことを
全然聞かないのです)
僕は子供だったからサンタクロースを信じるように
「アトム時代」の到来を信じていましたが、当時の青年や
大人達はどうだったのでしょう? 実はそこが問題だなあ、
と思っているのです。
その辺が、今もなお世の中の雰囲気を決めていると
思われる、科学に対する人々の無意識な期待と大きな関係が
あるからです。
現実の科学者たちはSF漫画を科学振興あるいは科学信仰の
よきリーディングマーケッターだと捉えていたでしょうし、
我々子供にとってそれらの漫画は最高の友達でした。
科学者は本気で21世紀早々、アンドロイドができると
考えていたのでしょうか?
とにかく、まずSFの世界で描かれた未来世界
(「1984」とか古くは「火星探検」など)と現実の世界が
違うということがかなりハッキリしてきたのが
この20年ぐらいではないでしょうか?
アイボやiマックといったヒットする現在の科学商品は、
デザインなどにそういった古き良きSFを後追いしている
部分があり、かなりレトロ趣味になっているところが
魅力となっています。
レトロといえばノスタルジック、ノスタルジックといえば
「寅さん」や「水戸黄門」。いわば時代劇のようなものに
科学に対する期待が近づいてきているしるしなのでは
ないかと思います。
しかし、我々の信じていた未来はもちろん時代劇などでは
なかったわけで、かなりそれだけでも予想と開きが
でてるなあと思うのです。
アポロの1969年までの時代は間違いなくそうした
「進歩への期待」と科学が足取りをいっしょにしていたと
思いますが、それ以降、こうしたノスタルジックな方向に
すこしづつ変わっていったのでしょうか?
2000年感が出なかったのは、そうした事情も
関係しているのではないか? と思うのです。
確かにノストラダムスのパニックが起きなかった事とかも
原因としてあるとは思うのですが。(しかし、もし戦争や
災害が頻発したとして、それで予想していたような
世紀末感が本当に出たかどうかも疑問に思う。)
実はこんな事を考えてしまったのは、CDのせいなのです。
輸入盤店で買い求めた「ザ・フー」の
「マイ・ジェネレーション」というアルバムは
現行では廃盤になっているはずのもので、
よくよく見ると印刷が甘く、東南アジアの屋台レコード
みたいだったのです。ようするに海賊盤なのですが、
久しぶりに、買って半年ぶりに聞こうと思い、
出してきたらかからない。プレーヤーとの相性の問題では
なく、すべての機械で全く感知しないのです。
その盤は最近オーディオでも本格的に流行り出してきている
「CD−R」といわれる手焼きの盤と思われるのですが、
このCD−R、正規のCDより寿命が短かいのかも?
と思いあたりました。
そこでさらに思い出したのが「CD30年寿命説」。
現在売っているCDは寿命が
あり、年数ははっきりしませんが、例えば30年ぐらいで
音が再生できなくなってしまうという説です。
詳しい友人に今一度確かめてみると、
「ああ、それは本当だよ、焼いている媒体が酸化してしまう
からなんだよ。」と「事もない」というように
教えてくれました。
ヒエエエ。せっかく集めたCDが! 30年後にはただの
プラスチック。音をとっておくためにはなにに落としたら
いいのか。
DAT(デジタルオーディオテープ)か? MDか?
ハードディスクか? CDがだめというなら、
これらもなんか信用ならない。カセットなんかは20年で
かなり劣化する。しかし、テープはまだ劣化する
だけだからいいのか。データが消えてしまうというのは
もうどうしようもない! しかも消える前に
「もうすぐ消えるよ」といってくれるならいいんだけど、
僕の「ザ・フー」のようにいきなり聞けなくなるのだから。
だいたい何千枚もコピーしてられるか!
結局一番残るのはアナログレコードなのです。
なんてったっておじいちゃんのアナログ、プレーヤーが
あればまだ聞けるからな。
30年ってけっこう早いぞ。最初に買ったアルバム69年の
ビートルズの「ホワイトアルバム」がもう聞けなくなる
年だ!
30歳以降の音楽ファンやDJが
「僕はアナログを集めてますから平気です」とか
そんな事言って済む問題ではないと思う。
いったい何が「進歩」したおかげで
「消えてしまう音楽メディア」に移行しなければ
ならなかったのか、悲しくなる。
これは進歩ではない。
この先DVDオーディオやネット配信になって
こうした問題がどうなるのかちゃんと知りたいです。
将来的には解決される問題とは思いますけど。
20代以下の子ってこうしたことにけっこう敏感なのだと
思います。なにせCDで育ってるわけですから。
2000年で盛り上がらない原因はこうした「進化感」に
対する思惑のズレが生んでいると思います。
新しい時代感覚、進化感覚が欲しいよ〜〜〜〜〜〜!
またすぐねええええ!

僕の恒例のイベント「コアトーク」は次回1月19日
水曜日。なんと第50回記念でえのきどいちろうさんを
御迎えして行います!! 来てくれた人には記念に僕から
ビールを一杯オゴリます!
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新宿歌舞伎町1−14−7林ビルB2F
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tel 3205−6864
fax 3205−6874

2000-01-04-TUE

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