MUSIC
虚実1:99
総武線猿紀行

第16回
「虚実1:99総武線猿紀行 番外編」
君は生サエキを見たか! ボクは見た

『ほぼ日編集部 日活が行く、
古きよき、そして新鮮な新宿の地下』改め

新宿でサエキさんのトークライブを観る


ひっきりなしの喧噪とむせ返るほどの雑踏。
誰かれかまわず声をかける客引き・・・。
新宿ってどうも好きになれないんです。
特に歌舞伎町。
以前働いていた職場の先輩とふたりで
典型的なボッタクリバーにはまって、
8万円をボラれたことがトラウマにもなっていますし、
どうしてもなじめない。

それが、どういう風の吹き回しか、
我がほぼ日で好評連載中の
『虚実1:99総武線猿紀行』の著者、
サエキけんぞうさんの『コアトーク』へ行きたくなって、
新宿のコマ劇場の正面にある
『新宿ロフト・プラスワン』というライブハウス(?)へ
向かったのでした。
そそられたとおぼしき理由は、

1、ほぼ日にイソウロウするようになって、
  そろそろ屋外活動をせにゃならん。
2、邦楽メインのボクが『音楽雑誌をつくろう
  〜1999年はこうなる!〜』というテーマに惹かれた。
3、生サエキに会いたい!
4、今年最後のイベントだ!

ということなのです。
それは12月15日(火)、午後6時半のできごとでした。

このロフトプラスワンは、
その道ではかなり有名な場所らしく、
ほぼ毎日何かしらのイベントが行なわれているんです。
うちの新聞みたいなんです。
まあ、正月三が日は休むらしいんですがね。

クリスマスイヴには大槻ケンジ他出演のライヴ、
大晦日には“朝まで生本番”と題して時事ネタ、エロ、
とにかく何でもありの今年を振り返るイベントが予定。
その間には“変態性欲ナイト”とか、
“ガメラ祭り”なんて、サエキさんも真っ青の
コアネタがスキマなく詰まっています。
「AVギャル多数乱入予定・・・」
なんて言葉、そそられるじゃないですか。
ねえ、セイヒローさん。
かと思えば
“犯罪報道は悪か”なんて、まじめなテーマのものもある。
このすべてが渾然一体になった感覚がすごい。
奥が深いのか、それとも浅いのか、
はなはだ疑問ではありますが。

場所は、新宿コマ劇場の正面。立ち食いソバ屋の隣。
林ビルのB2Fです。
ということは、歌舞伎町のどまんなかってことですね。
でも、今日はちゃんと目的があるんだから
こわくない。こわくないです。

果たして、ビルは見つかりました。
そこで、ボクは地下2Fに向かって
歩をすすめたのです。
というのも、エレベーター前では
何やら外国人の団体が騒いでいて、
国際的でないボクはとってもこわかったからです。

階段を下っているときには誰ともスレ違いません。
蛍光灯に照らされた自分の影がぼうっと
壁に浮かび上がり、スニーカーの摩擦音が耳障りなほど。
そうこうしてるうちに
やっと、地下2Fを示す案内版が出てきたぞ、と。

ところが、店名はあるものの、
それは店の案内とはほど遠いもので
「楽屋の裏口に紛れ込んだのかあ?」
と思わせるような小さな黒いドアがあるだけ。
思い切ってドアを開けてみても、
これから始まるライブ前のあわただしさの微塵も
感じられない。
新宿歌舞伎町にあって、
この静寂が逆に無気味なほどです。
さらになかへ入ると
マンガの棚がならんだマンガ喫茶のような空間があります。
人は誰もいない。
いよいよ冷や汗が、ボクのスウエットを濡らし始めました。

でも、ここまで来たら帰れない。
さらに1歩1歩進んでいくと、
屋台村風の飲み屋なスペースにブチ当たったのです。
なんと、ステージもあるぞ!

すると、ボクの姿を見つけるやいなや店員がふたり現われ、
「前のほうからお好きな席にどうぞ」
と促されました。
すかさず取材の旨を告げると、
1、「ふつうのお客様として、
  飲食されつつ取材いたしますか?
2、それともサエキさんたちスタッフに
  面会されますか?」
と店員のお姉さんが慣れた態度で
応対してくれました。
もちろん、2番のほうを選んだぼくは、
お姉さんのうしろに続いたのです。

スタッフルームに案内されると、そこには
オレンジ色のタートルネックを着て、
トレードマーク(?)ともいえる黒縁のメガネをはずした
素のサエキけんぞうさんがいたのです。
そして、こころよく来訪をねぎらい、
飲み物をすすめてくれたのでした。
サエキさんは、
「この場所のイベント開催常連というか魁であることや、
ピンチヒッターとしての登場もしてる」
と、未経験のボクに快いアドバイスをしてくれました。
マイセンのカツサンドもいただきました。

さて、このスタッフルームには
本日出演する2名の音楽雑誌編集者もいたのですが、
サエキさんと饒舌にトークしながらも
本番へ向けての緊張感をみなぎらせていました。
「リハしといていいですか?」
出演者のひとり、美馬さんがサエキさんに尋ねています。
でも5分前ですよ。
サエキさんもサエキさんで
「やらないよりはやったほうがいいでしょう」。
美馬「でもお客さんいますよ」。
サエキ「少ないうちのがいいでしょう」。
美馬「・・・」。

とかなんとか言いながら、
サエキさんは比較的マイペースで本番への準備を
しています。
そうか。飲食しながら本番ができるくらいなんですから
それだけでも気楽になれるってもんなんでしょう。

そこでボクも
「今日の流れというか進行は、どういう感じなんですか?」
と聞いてみました。
すると、サエキさんは
「ないですね。すべてそのときの流れでやっていきます」。
きっぱりと、そして力強くおっしゃってくださいました。
感動しました。

時間は午後7時を回ろうとしています。
それほど広いとは言えない店内に、ほぼお客さんは満員。
30人ほどはいます。
年代は20〜30代が中心。
女性、男性、半々といったところでしょうか。
もうすでにお酒を飲み始めています。

ここで、このお店の体裁を紹介させていただきましょう。
要は飲み屋に簡単なステージ設備と
少し力の入った照明、AV設備があって、
お客さんは、新宿にしてはかなり良心的な値段設定の
飲食をするわけです。
その飲み代だの食事代が参加者のギャラになり、
この場所の維持費になるというシステムなんです。
ただ、そのへんが分からない人が多くて、
入り口で「入場料はどこで払えばいいんでしょうか?」
と固まっている人がけっこういました。
入り口付近でデジカメをかまえていたボクは
何度も店員と間違えられ、問い合せを受け付けました。
途中入場、退場が自由自在といえども、
目の前のライヴを無視して、入ったり出るのは
けっこう勇気がいると思うんです。特に日本人はね。


冴えまくる
サエキさんの進行で
トークは進んだ
さあ、
長かったボクの前ふりを経て
始まった『コアトーク』。
LOFT PROJECTのプロデューサー
シンスケ 横山氏が
ステージでマイクを握ります。
「ここで、本日の
コアトークにいく前に
お決まりなんですが、
ロフト・プラスワンの
自作、ビデオを見てください」。
森田童子の懐かしく
無気味な音楽に乗せて
ロフトの企画会議風景とやらが映ります。
新人の女の子が
「給料あげろ〜、あげろ〜」
と棒読みで訴えています。
このビデオ自体がなかなかコアです。

そして、満を持してサエキさんの登場です。
ヤンヤヤンヤの大歓声。
あってないはずの今夜の予定を
軽妙なトークでざっと紹介していきます。

続いてサエキさんに促され、ゲストがひとりひとり
入場してきました。
「ライターの青木さんです!」
青木「♪アイニーヂュオーラブ アイニーヂュオーラーブ
オーナーイローン・・・♪」
なぜかカラオケがかかり、
あみーゴ熱唱の青木さんが入ってきます。
続いて美馬さんも熱唱入場中!
「何でやねん!」と誰でもツッこめる分かりやすさが
いいです。

もうひとり、ゲストが来るようですが
遅れているそうです。
そんなところにライヴ感が感じられていいですね。
しばし歓談。
音楽のネタが続きます。(あたりまえか)

  青木「T.Kさんの情熱が、ほかの歌手に移動する瞬間
    というのは興味深いですよ(笑)」
サエキ「今の情熱の矛先は、Sさんかあ」。
 青木「彼はやはり、
    インスピレーションで情熱を傾けるタイプ。
    そういう意味で言うと、
    ストレートで分かりやすい人です」。
なるほど、邦楽を土壌とするボクとしてもこういう話なら
分かるなあ。
Tちゃんなんて、イニシャルまで同じにしたのに
なんか最近、作品の力の抜かれぐあいが分かるもんな。


途中入場のお客さんも絶えず、
店内は満員
そういえば、
「ライヴが長時間にわたると、
必ずお客さんが途中でダレてくる。
そんなときに“人”の話をすると、
お客さんが再び集中し始める。
そして、
本題に入る前にも
そういう話はジャブとして
効果的なんです」。
とサエキさんが
言っていたのを思い出しました。
話の達人だけあって、いろいろと工夫してるんだなあと改めて感心。

さらに話は進み、サエキさんとゲストが持ち寄った
レアグッズのプレゼントが行なわれました。
即席のクイズでサエキさん飲みかけの朝鮮人参粒とか
故HIDE のCDなどが当たります。
そして、ビデオの上映会
注目の新人の徳永健さんという方の映像が流れます。
コアだ。

「この間にみなさん、ジャンジャン注文してください」。
気の利いたDJのような催促が入りました。

 

うたい、おどる、
サエキさんを君は見たか
ボクは見た
            そのときでした。
言葉の凶器を持った暴漢が乱入!!
「今の音楽はぜんぜんだめだね!
今のライヴハウスは恐いところだよ。
きっちりもうかるようにできてる。
昔のように歩合制じゃないからね。
客が入っても入らなくても
黒字になるんだよ。
アコギなことをやってるんだよ」
よそのライヴハウスのあり方を、
どうやら批判しているようだな。
どうやらここの店長さんのようだ。
サエキさんも壇上から
突っ込みながら、
臨機応変トークで対峙します。
こ、こわい&すごい。

そんなこんなしているうちにも
時間はかなりの速度で進んでいきます。
第1回目の休憩です。
「このお店は、お客様の飲食代が
出演者のギャラになり・・・」。
とまあ、こんな感じの流れが永遠に
午前を回っても行われたわけなのです。

最後に、来ていたお客さんに感想などを
お聞きしてみました。

女性ふたり組
「レアな話や音楽に対するマジな話を期待してきました。
アバウトな進行が心地よくて、お酒が進みます」。

男性ひとり
「サエキさんのファンで、たまに顔出します。
この空間が好きです」。
などなど、酒とトークと音楽。
このつながりをつくづく実感しました。

 

ロフトプラスワン、
イベント出演の魁
サエキけんぞうさん
                 帰り間際、
今日2曲目のサエキさんの歌がいつまでも
ボクの耳にこだましていたのは
言うまでもありません。
♪ナースコール 
パンパン(手拍子)
ナースコール 
パンパン・・・♪

みなさんも一度、
いかがですか。
専門的なことは分からなくても
楽しめます。
なんてったって、
入場料もなくトークと歌が
                 楽しめるんですから。

1998-12-27-SUN

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