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虚実1:99
総武線猿紀行

第4回
「悪の失楽園・秋葉原」

総武線といえば、秋葉原。
まだ東西線も京葉線も快速総武横須賀線もなかった頃、
JRを使って東京に行くには、
秋葉原を経由するしかなかった。
パンパンに詰め込まれ、汗だくになった、
日本の黒人・総武線のサラリーマンは
秋葉原のミルクスタンドで喉を潤し、
アンパンをくわえて、山の手線に乗り換え、
丸の内や新橋へ向かったのだ。

新橋はスーダラ・サラリーマンの
聖地だが、おそらくその中の
30%以上は秋葉原から乗り換え
総武線イモざむらい戦士たちだった。

新橋・秋葉原の共通点は、両者のガード下の雰囲気や、
ミルクスタンド、生ジュース屋のたたずまいに
よく現れている。
明らかに利用者がダサい。
今でも戦後。

さて、そんな秋葉原は世界に誇る電気街だ。
外人ミュージッシャンも一度はみな訪れるという。
日本が誇るエレクトロシティ。
その発展は、先述のスーダラサラリーマンたちも
大きく貢献していると思う。
自転車ランプの松下、
トランジスタラジオのソニーの物語を例に取るまでもなく、
真面目!従順!器用!
こうした純粋に実直なタイプの民族性が
この街の発展を支えてきたといえる。

その秋葉原に先日いって驚いた。

所は駅前ラジオ会館の2階。
僕の記憶では昔はラジオ、
オーディオ用品のパーツ専門店が軒を
ならべていたはず。
剥き出しのスピーカーや、コード、 真空管類に囲まれ、
マメで人の良さそうなアマチュア無線マニアの青年たちや、
それだけが趣味といったメガネオヤジたちの
静かな幸福と安らぎの一時を約束していた場所だ。

10数年行ってなかったとはいえ、
そこは変わり果てていた。

棚を埋め尽くすのは、あまりにものものしい、
高価そうな得体の知れない特殊無線機器の数々!

そう、そこは盗聴マニアの巣に変わり果てていたのだ。

団地や住宅地、そして歓楽街といった場所での
エッチ電話盗聴、はたまた警察や事件電波の傍受、
それらのあからさまに「黒い」盗聴を目的とした
マニアの雑誌「☆☆☆ライフ」 がコンビニでも
売られていることは知っていたが、
改めて現場を見ると壮観である。

かつての真面目なアマチュア無線メガネ君たちは、
ここで、そのまま、
イヒヒヒ盗聴エッチくんに変わっていったのだろうか?

かつての平和の戦士たちは、
学校や職場での態度は素知らぬふりで真面目にしつつ、
秋葉原や新宿で堕ちていくというのか?

そんな感じで、かつての日本のマジメ君たちの
現在の悪変身の系譜を思いつくままを考えてみよう。
すくなからぬ電気系の関与あり。

文化系映画青年
  ==アイドルやコンパニオンのパンチラ撮影オタク

新聞配達高校生
  ==インターネット裏ソフト販売

文化祭委員をするような前向き女子高生
  ==携帯で援助交際もとじめ、あるいは夜の薔薇

マジメな課長どまりお父さん
  ==バイトで始めた浄水器マルチ販売員から、
   正社員 (友人の父に例あり)

ああ、日本の[善]が音をたてて[悪]になっていく

ちなみに、先日、その性能の停止を発表された、
下着や水着がスケスケに写る
赤外線機能付きビデオカメラ(SONY)
は、在庫限り売られているが、発表翌日、
秋葉原ではかなりプレミアがつき、
専用フィルターレンズなど、
大変な品薄でプレミア高騰ときく。
悪やのう。

オウムのコンピューター店/マハーポーシャ
(現在は名称を変えている)
も大繁盛だそうです。
なにもいうことありません。

1998-09-05-SAT

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