MUSIC
虚実1:99
総武線猿紀行

総武線猿紀行第292回
「ジ・エンドへのカウントダウン
 そのマイナス9番」
〜これからの方々と、対談10番勝負〜
その2
「秋葉原から世界を走れ!喪服ちゃんという社長」

またまた大変にご無沙汰してしまいました。
総武線猿紀行、ラストに至るカウントダウン、
今度こそ、走ります。
ラストのその回まで、サエキが考える
「次の時代を生み出す人々」をゲストに、
総武線猿紀行でなくしては聞けない、
お話を引き出していきます。

今回のお客様は、桃井さんに続き、
秋葉原で、女子を中心のライブカフェ
「ディアステージ」を大々的に展開し、
その若き女性社長として、
今や各種メディアでも引っ張りだこの
「喪服ちゃん」です。

喪服ちゃんは、あの東京芸術大学を卒業した才媛。
アット驚く有名人との交流も数多い。
サエキは、ネオガールズ・イベントTOgetherを通じて、
また「ディアステージ」のアイドル
古川未鈴のプロデュースなどを通じて、
2年ほどのつきあいになりましたが、
ここではサエキも知らなかった
驚異のエピソードの数々がご開帳されます。

サエキ 「喪服ちゃん」って凄い名前。
誰がいつ考えたの?
喪服
ちゃん
大学に入った頃に喪服をテーマにした作品を
いろいろ作ってたら、
周りから、そう呼ばれて(笑)
ダークな名前がいいなと思ってたんで。
サエキ 喪服がテーマの作品って、どんなのよ(笑)。
大学は<あの>東京芸大だよね。
喪服
ちゃん
音楽環境創造科という音楽科の一期生でした。
今のデジタル化社会において、
音楽もどんどん変わってきてるので、
そういうことを文化から音楽の環境にいたるまで、
いろいろ考えて行こうみたいな。
サエキ なんと50年ぶりにできた
新設学科なんだってね!!
いかに時流に流されなかったか。
さすが芸大。
でもさ、そこで音楽技術的なものは身につけたの?
喪服
ちゃん
うーん。そこそこ(笑)。
ピアノは結構有名な先生について、
ちゃんと習ってましたよ。
ちなみに高校は国立音大付属のピアノ科。
サエキ 全くエリートじゃない!
そんな音楽のきちっとした
教育を受けてる人が、
ロックやポップスの分野でも、
アンダーグランドに思われてる
秋葉原の「地下アイドル」に関わるなんて、
いわゆる「芸術的」に気にならないの?
喪服
ちゃん
私は絶対音感も持ってますよ(笑)。
大学でも、ピッチ(音程)とか、
音の綺麗さを大事にしてたし、
音響マニアでもある。
サイン波マニアだったり、
いくとここまで行った。
無響室で聴いて
「こうじゃないとダメ」とか。
で、途中で振り切れた。
サエキ では途中で、自分の中で構築してきた
音楽の美学構造を壊したの?
喪服
ちゃん
そう、ぶち壊した。
最初は、電波系といわれる
MOSAIC.WAVさんの音楽に最初に触れて。
音楽的にもレベル高いじゃないですか。
サエキ MOSAIC.WAVは、君たちも出る、
サエキ主宰の5/18イベント
Togetherにも出演するよ。
これは嬉しい偶然!!
喪服
ちゃん
MOSAIC.WAVが、
アキバ系音楽に触れるきっかけでした。
ネットで聴いて頭がつんと殴られたみたいな衝撃。
サエキ レベル高い、アキバ系音楽だからね。
ニューウェイヴ好きなら驚くと思う。
でも、それに出会う前は、
ジョン・ケージとか現代音楽聴いてたんでしょ。
喪服
ちゃん
ケージも、キセナキスも。
哲学的な感じにまで入り込んでた。
ノイバウンテンも。
自分でテープを切ったりしてた(笑)
サエキ 一方で喪服ちゃんは相撲好きのデブ専、
そしてPファンク好きって
「チャームポイント」があるんだけど、
それは現代音楽方向のリセットとからむの?
喪服
ちゃん
ずっと小さい頃からクラシック、
親が厳しくて上品なものしか
聴いちゃいけないみたいな家だったんです。
で、こっそり行ったレコード屋で
Pファンクのパーラメントの
「チョコレートシティ」がかかってて。
それでデブの
ジョージ・クリントン大好きになって。
高3の頃だったから、
普通のピアノ科に行くのはダサイ、
これからの音楽やらないと、
みたいになってしまった。
サエキ よりによって、
最初に聴いたのがパーラメントとは。
さて、喪服ちゃんは、
いろいろサブカル系有名人との繋がりが深くて。
たとえばアラーキーさんとか
中森明夫さんとかとも交流があるんだよね。
喪服
ちゃん
大学で一人暮らしをはじめて、
「モーニング娘。」とかも聴くようになって。
そんな頃、中森さんに会って、
アイドルの洗礼みたいのを受けました。
サエキ いきなりサブカルの本流だね。
喪服
ちゃん
アラーキーや山形浩生さんとかは
大学時代に知り合って。
ピテカントロプスを最初に立ち上げた
メンバーだった先生っていうの芸大にいて、
その人から「80年代とは」みたいな
洗礼もうけました。
サエキ 芸大に、ピテカントロプス
立ち上げのメンバーが!!
就職はどうしたの?
喪服
ちゃん
芸大ってさあ、サエキさん、知ってる?
なんと(一説には)就職率8%なんだってよ!
就職するっていう文化がない!!
サエキ えええ? 8%?
それじゃニート大学じゃない?
親はみんな知ってるのかなあ?
あの芸大だよ!!
結局のところ、さすが芸大だなあとは思う。
喪服
ちゃん
凄いでしょ?
で、私も何も考えずに4年生になっちゃって。
しょうがないから知り合いの
現代美術のギャラリーに就職したんです。
当時はアートバブル真っ盛りで、
村上隆さんとも繋がって。
ヒルズ族の元に通いまくった。
ヒルズクラブでランチとかして。
サエキ 村上隆さん! そしてヒルズ族!
喪服
ちゃん
私がみすぼらしい格好してったら、
ギャラリーの社長が
「貧乏な格好して俺の横歩くな」って
10万円の服を買ってくれる。
社会勉強になった。
森ビル社長さんの家や
浜崎あゆみのマンションにも行きました。
サエキ いきなりギラギラじゃないですか?
ニートの世界から。
喪服
ちゃん
スイス、バーゼルでの
世界最大のアートフェアにも行った。
世界中の金持ちが自家用ジェット飛ばして、
何億っていう作品をぽんぽんっと買って帰る。
その時に「あ、なんか、
この世界を動かしてるのは、
数人の『太客』だな」って思った。
サエキ じゃあ、その世界で、儲ければ良かったじゃん。
『太客』捕まえて!
喪服
ちゃん
ところが、
「私のいるべきところはここじゃないな」
と思っちゃったんです。
サエキ 私心ないね〜。
喪服
ちゃん
ニューヨークの一番ホットな
ギャラリーにも行きました。
マドンナがいるパーティにも行った。
でもね、おしゃれなことは、
結局、背伸びしないとできないんだなと思った。
つまんないよね。そんなのって。
サエキ 一般的には、背伸びして、虚勢はって、
世に出ようとするんだけどね。
喪服
ちゃん
アメリカに行ってもスイスに行っても幻滅して、
帰ってくると日本のアートが
西洋のそういうカッコいいものに
いかに憧れて作ってるのかが
見えてきてイヤになった。
それで辞めて、今度は本当にニートになって、
ネットゲームにはまって、
廃人のようになった(笑)。
サエキ やはりなりましたか(笑)。
今回話し聞き始めて、
そういう時期が来るんじゃないかなって
思ってたよ(笑)
喪服
ちゃん
ニートになったらどんどん資金が底をついて。
サエキ そりゃそうだ(笑)
喪服
ちゃん
で、知り合いのつてで
新潮社に雇ってもらって半年くらいいました。
それこそアラーキーさんに
飲みにつれまわされたり
写真撮ってもらったりとか、
横尾忠則さんと取材旅行に
行かせてもらったりとか。
サエキ 凄い浮き沈み。
今度は、サブカルセレブだね!
そんな新潮社をなんで辞めちゃったの?
喪服
ちゃん
いよいよアキバにハマるんです。
ディアステージと新潮社ってほぼ同時期で。
サエキ 中学生雑誌の「ニコラ」とか、
写真集の「月刊シリーズ」とか、
しっかりした本作りにかかわってたわけだよね。
喪服
ちゃん
でも、そうした確立されたものって、
すでに一番のブームが
去ったものという意味もある。
なんとなく先が見える。
私は1を10にするのは嫌いで、
0を1にしたいんですよ。
サエキ ひええ、女子なのに、
凄いパイオニア精神!
坂本竜馬みたいな、
昔だったら男子がいいそうなことを、
サラっていうんだね。今の女子は。
喪服
ちゃん
そこで「何か次の探さないと」って
思ってたところに、MOSIC.WAVに触れた。
そしてアキバに本腰が入る。
メイド喫茶とか、すごく新しいと思った。
サエキ 海外の先端文化を見てきた人が、
メイドカフェをそこまで評価するんだ。
喪服
ちゃん
私はコンセプチュアル・アートが
本当に好きだったから、
見た目というのはあんまり信用しないんですよ。
要は見た目じゃなくて、その文化であったり、
文脈であったり、そこで働いているコたちの
何か芯のところを見たいって思う。
サエキ ううむ、深い。
そこまで深く秋葉原を見つめてる人は
日本人では少ない。
でも、実は海外からの評価は、
そんな深さを持ってるんだよね。
喪服ちゃん アキバの音楽の底を掘っていったときに、
これは絶対面白いことができるって感じた。
その頃のアキバの歩行者天国の感じは、
「たぶん世界で一番面白いのはここだ」
と思わせる何かがありましたね。
サエキ 音楽科出身としては、
その荒々しさは気にならないの?
喪服
ちゃん
正直、エンターテインメントとしての
表現レベルではまだ稚拙で
研ぎすまされてはいなかった。
でも、アジア的な熱さがあった。
文化レベルが実は非常に高いと思った。
同人、または路上から広まる文化が、
アキハバラでは、強烈に独特だった。
ネットでもニコ動で面白い人が出て、
そうした「下からつきあげの文化」に
ネクスト感があった。
サエキ ディミトリ・フロム・パリスとか
フランスでも一流音楽人が
マジンガーZオタクだったりするんだよね。
アキバは世界的に注目されてる場所。
喪服
ちゃん
私は絶対音感なんだけど
例えばアキハバラで出会った古川未鈴
(現ディアステージの歌手)の登場で、
頭が打ち砕かれた(笑)。
音感とかを超えた歌(笑)。
「何これ?」って。マネできない独特の
グルーブを感じるんです。
サエキ 新潮社をへて、
ディアステージに関わることになると。
喪服
ちゃん
前から知り合いだった
うさぎの波平ちゃんが常連だったバーで
新しいライブハウス開くって話を聞いて。
楽しそうだから立ち上げに参加したんです。
サエキ なみ平と一緒に、
アラーキーの「荒木経惟トーキョー・アルキ」
という本にたくさん写ってるね。
服は着てるけど(笑)
喪服
ちゃん
その頃、アーティストとの集団生活をしていて、
荒木さんがそれを面白がって、
何回もとってくれた。
サエキ そんなパワーと混沌が、
ディアの立ち上げに重なるわけだ。
喪服
ちゃん
ディアステージは、
歩行者天国でビラ配りしたりしたら、
連日満員御礼になった。
で、最初はバイトだったんだけど、
社長が辞めちゃって、
一番うるさかった私がなることになって。
好きなことを好きなように
やってたらうまくいった。
サエキ ディアステージといえば、
オタ芸がポイント。
喪服
ちゃん
オタ芸は女の子が推進するうちに、
濃いスープみたいになっていったんです。
ディアステージ発で、客がみんな路上で
かっこいいヒーローになっていった。
ところが歩行者天国が、
例の事件でなくなってしまった。
サエキ 僕がディアステージに初めて行った日は、
まさに運命的。
その殺傷事件が起きた日だったの。
当時のディアはちょっと離れてたから、
事件のことを知らずにいったんだ。
喪服
ちゃん
路上というオタ芸披露の場がなくなって、
アイドルライブを強化した。
集客も上げたから、
業界が変わったって言われました。
サエキ もっともっと話しを聴きたいけど、
次はまず、現場で。5月18日渋谷で
僕たちがしかける大イベント
「Togetherプレミアム」にかける思いを
お願いします。
MOSAIC.WAVさんともう1人、
桃井はるこさんも大リスペクトしてたんです。
その方々と同じステージに出るというのに
運命的なものを感じます。
期待しててください!

独特の弛緩したトーンで、
さらっと激しい夢を語る喪服ちゃん。
彼女のような人が今
「邪心を感じさせない、未来への疾走」をしている。
直感と、美意識だけで、
日本の音楽と芸能の明日を切り開いているのです。


NEO GIRLS FESTIVAL TOgether〜プレミアム〜

開催日:2010年 5月18日(火)
開場/開演時間:17:30 / 18:00
チケット:前売り¥4,000/当日¥4,500(ドリンク別)
     電子パンフレット(仮称)付
場所:Shibuya O-EAST

出演:桃井はるこ
   MOSAIC.WAV (guitar 小池雅也!!)
   ディアステージ・オールスターズ
   アフィリア・サーガ・イースト
   小桃音まい
   Veil
   HARU☆HINA
   デカシャツ喫茶
   メイドのかんづめ
   葉月from大阪)
   宮倉まな(from名古屋)
   城 奈菜美(from名古屋)
   ★SAKUR∀ん☆(from名古屋)

プロデュース:サエキけんぞう
コ・プロデュース:冨田明宏

イープラスの PC用購入ページリンクURL
携帯用購入ページリンクURL

ローソンチケット Lコード:77711
JOYSOUNDの電子チケットサービス「うたスキTicket Store」

渋谷を揺るがす
強力なライブになりますよ!

produced by Kenzo Saeki(Pearlnet)
Pearlnet.Inc
サエキけんぞうの公式ホームページ

http://www.saekingdom.com/

サエキさんへの激励や感想などは、
メールの表題に「サエキさんへ」と書いて、
postman@1101.comに送ってください。

2010-05-13-THU
HOME
戻る