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虚実1:99
総武線猿紀行

総武線猿紀行第235回
「愛地球博に行ってきたよ。万博とは何だろう? その2
 大阪商人に買わされちったよ。


 (前回のあらすじから)
 EXPOドームフランス館がらみの
 イベントに出演するために名古屋万博に。
 昼過ぎのパヴィリオンはどこもいっぱいで、
 ヨーロッパ館群から
 大歩行路に出たところにある、
 「ピーロート・ワイン・オブ・ザ・ワールド」
 というパヴィリオンとも
 店ともつかない建物に
 吸い込まれていった。
 「お試しになりますか?」と
 ひとくせもふたくせもありそうなお兄ちゃん。

 

 これは、ようするに試飲ハウス?
 パヴィリオン・ウロウロに疲れた足。
 用意される席。もちろんお試しになります。
 ドイツワインが5本ならぶ。

 

  「ウマイ!」
 ドイツワイン、甘いワイン、いかがだろうか?
 疲れにもよるな。疲れていると、甘い酒がうまい。
 ドイツ人は疲れているのか?
 ギターの窪田晴男は
 「このワインは、
 白ワインとは思えないコクがあるんです」
 などというリコメンドに対して、
 クチャクチャワインを、口に含みながら
 「このワインは日本食にあうな?」などと
 ウンチクを述べてしまっている。
 思うつぼだ。

 

 これは、私見であるが、
 ワインのウンチクをのべるのは、
 試飲ハウスの場合、ヤバイ。
 「お客さん、わかってますね!お目が高い!」
 とおだてられて向こうの思うツボになるからだ。。
 「お客さんほどの人なら、
 このワインの味がわかるでしょう?」と
 本命の高ワインを勧められるのがオチである。
 「いや〜、そうですかね〜、
 僕は、ワインなんて
 ポリフェノール2倍ワイン(某安ワイン)
 しか知らないから!」
 と音痴バカのマネをするのが一番だ。
 酔ってはいたが、冷静な僕。
 最悪の事態(買わなければいけなくなる状況)
 を案じて、
 5種目に突入したとき、質問した。
 「すみません、
 この3つめのワインいくらですか?」

 「いや、まだ教えません。」

 ヒエエエエエ、
 教えてくれない!
 なぜ?どうなっちゃうの?僕たち。
 このまま飲まされたアカツキに、
 買わないと出て行かせない、と追い込まれるのか?
 いったいいくらするの?
 ついに5種すべてを試して、
 完全にイイ調子になってきた僕ら。

 「赤が飲みたいな〜」

 もう、どうにでもなれ!
 どうせ、2、3本買えば許してもらえるだろう。
 赤は、ドイツとブルガリア、チリなど。
 冷えていてウマイ!
 (夏は赤も冷やすもんだよ)
 やっぱり、辛口の赤のほうが好き。
 「いや〜、うまいですね。
 ところで、マールとかフィーヌとか、
 カルヴァドスはないの?」
 蒸留酒、ブランデーの、
 最近おぼえはじめた、親戚のヴァリエーション。
 マールは、
 ワインをつくるためにできた葡萄の
 「しぼりかす」からつくられる
  ブランデー(グラッパ)の一種で、
  フランス産のものをさす。
 あまり日本では手に入らないが、
 間違いなく、どれもうまい。

 

 フィーヌは、コニャック
 又はアルマニャック以外で、
 A.O.Cワインを産出する地域のもので、
 =オー・ド・ヴィー・ヴァン
  =通称フィーヌ
 と呼ぶらしい。
 平たくいえば、
 コニャックがあまりにもブランド化した今、
 粗製濫造&オケ買いの危機があると思うが、
 フィーヌは、その陰に隠れたメッケ物ということだ。
 カルヴァドスは、
 フランスのノルマンディ地方、
 カルヴァドス県でつくられる
 りんごのブランデーのこと。
 これは甘めだが、フランスかぶれの人は間違いなく好き。
 知り合いには
 VIP系秘密結社「カルヴァドスの会」も存在する。
 うっとりする甘さは、疲れた夜にピッタリだ!
 「マール、フィーヌはないけど、
 カルヴァドスはあります」
 と出てきました。
 カルヴァドスとCUVEEという10年物のコニャック!

 

 「く〜〜!こいつあ〜たまらん!」
 きましたきました!
 うまい、うまい!酒はこれだ!
 濃くて芳醇なブランデーに限る。
 というのが、僕の趣味であります。
 もうイイ気分だ。
 買ってしまえ!
 「じゃあ〜お兄さん、
 値段おしえてくださいよ!」
 ワインの値段は、
 確か1本2000円ちょっとだったっけ?
 (酔っぱらったから覚えてない)
 「じゃあ、それ2〜3本買えばいいじゃん。」と
 ワインを買う気はまるでない僕は、
 窪田晴男にすすめる。

 「いや、
 1本2本ではおわけしてないんですよ。
 1ダースからおわけします」
 
 ヒエエエエエエエエ!1ダース!
 すっかりワインをブラさげて
 帰るつもりだった窪田は、
 腕組みして、般若のような形相になった。
 「いちだあすうう〜〜?
 それは、持って帰れないね」
 「はい、当店では、
 ワインはすべてお届けになっているんです、
 ここからは持ち帰れないんですよ」
 なぬう?
 お届けで、1ダース以上?
 1ダース家に同種類のワインが届けられても、
 置く場所にも困るではないか?
 なるほど、
 1ダース以上の大口の客以外はいらない!
 という商売だったのだ。
 「ピーロートワインオブザワールド」。
 「すみませんブランデーは何本から?」
 「ブランデーは、6本以上からになってます。」
 (大阪弁アクセント)
 「そんなの無理だよ、もっと少しにならない?3本とか」
 たくさん来ても飽きるからな。
 しからば飲み逃げで、けっこう。
 武士の旅といえど、恥は時にかき捨てである。
 フっとまじめな顔をして
 ケッコウ!ケッコウ!
 という表情をしたとたんに、
 「じゃあ、もうブランデー、
 3本でもけっこうですよ」
 ん?
 ならばたたみかける。
 「カルヴァドス2本に、
 ブランデー1本でもいい?」
 そうとう渋った末に、
 「それでOKしましょう!」
 しめしめ、と思ったが、考えてみると、
 ブランデー3本、計16800円也の出費である。

 

 まあ、5人でいって、
 チョビ飲んだ飲み代と思えば、しょうがないか?
 実際、ブランデーはその値段は
 必ずするわけだからとはいうものの。
 ま、結局のところ、甘い話はないわけである。
 それにしても、
 2〜3本ぶら下げて帰ればいいや、
 と思わせておいて、
 いいかげん酔っぱらってから、
 1ダースという攻撃は見事!
 しかし、まてよ?
 大阪には奥の奥がある。
 大阪弁による交渉によっては、
 ワイン3本や、ブランデー2本
 という購入もありなのではないか?と思う。
 恐るべし、大阪!
 ほろ酔いをさますため、散歩をする。


(続く)

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2005-05-24-TUE

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