身内をはじめ、ごくごく一部で好評だった
ザッハトルテの「試食会」を‥‥
ことしもやらせていただくことになりました!

チョコレートケーキの試食会は、
前回同様、「とある家庭のお茶の間にて」
という設定で行われます。
この寸劇の登場人物は、すべてしろうと。
どうかご寛容に、お読みください。
ハードルをいちばん下までさげて、ご覧ください。

試食人(ししょくびと)は、ことしもこの面々。

現場監督は山下、写真係はモギでお届けします。

山下 なんと、5年目です。
モギ ことしも同じ顔ぶれで。
一同 よろしくお願いしまーす。
山下 あきれるくらいおなじみになってしまいました。
モギ 「ザッハトルテ家族」、その配役は‥‥
山下 田口さんがお父さんで、
おのちゃんがお母さん。
モギ わかたちゃんが長女で、
とやまちゃんが次女。
あきれるくらい同じキャスティングです。
山下 そしてみなさん、わかってますね?
このコーナーは完全な「オマケ」です。
とやま オマケ!
モギ たいせつな情報は、ほぼございません。
なのに、なぜに、これをやるのか?
山下 ケーキを待つワクワク感や、
届いたときのうれしさなど、
そうした「きもち」の部分を
毎回フレッシュにお伝えしたいからです。
田口 それってある意味、
めっちゃ重要なポイントじゃないですか。
山下 ええ(深くうなずく)。
ですから、こころを込めてやりましょう。
いいですか?
ぼくらには、こころしかないんです。
演技力はゼロです。
ならばせめて、精一杯のまごころを!
誠心誠意、茶番劇をやりきりましょう。
一同 はい!
山下 ついでに申し上げれば、
このキャスティングは今回が最後です。
モギ なぜならば。
山下 なぜならば、
外山ちゃんが「ほぼ日」を卒業するから。
モギ たしか、2月で退社?
とやま はい。
「ザッハトルテ家族」出演もことしが最後です。
山下 ‥‥なんかきょう、お化粧が濃いね。
モギ ほんとだ、お化粧が濃い。
とやま 気合いを入れてきました。
山下 すばらしいと思います。
最後の「まりこ」役、がんばってください。
とやま はいっ。
山下 いっぽう、田口さんにも気合いが入ってます。
最近、疲れが目にくるようになった田口さんは、
なんと自前のメガネを装着して
お父さんらしく見えるよう、役作りです。
一同 おおーー。
モギ まだ若いけどそれなりに老けた(笑)。
山下 さあ、はじめましょう。
いつものシーンです。
「お父さんが茶の間で新聞を読んでいる。
 子どもたちはマンガを読んでいる。
 そこへお母さんがやってくる」
出たとこ勝負で、いきまーす。
田口 ことしもぶっつけ本番‥‥。
山下 モギさんはじゃんじゃん写真を撮ってください。
モギ 了解(カメラを構える)。
山下 よおーい‥‥スタァーーーート!!
田口 ‥‥‥‥(新聞を広げる)。
新聞っていうのはいいもんだなぁ。
なにがいいって、新しいことが書いてある。
田口 お前たち、マンガ本はおもしろいかい?
わかた うん。
とやま おもしろい。
田口 むかしは『ぐりとぐら』ばっかりだったくせに!
おの みかんを持ってきましたよ。
田口 おお、母さん、りっぱなみかんじゃないか。
おの はい、いいみかんですよ。
田口 ああ‥‥やっぱり、あれだな。
わが家がいちばんだな。
お父さんはずっと出張に行ってたから、
なおさらそれを感じるよ。
おの 出張、お疲れ様でした。お帰りなさい。
田口 うむ。
留守のあいだ、変わったことはなかったかい?
山下 ピンポーン。
田口さーーん、宅配便でーす。
田口 あ、はーーーい。
田口 ‥‥そのヘルメットは自前ですか。
山下 そう。なんか感じがでるかと思って。
田口 宅配便というより、それはピザ屋さんですね。
山下 ‥‥そんなことより、ここにハンコを。
田口 はい(ハンコを押す)、ご苦労さまでした。
山下 ‥‥(ひそひそ声で)
「なんやろう? この荷物はなんやろう?」
と言ってください。
田口 なんやろう? この荷物はなんやろう?
山下 (ひそひそ声で)はたと思い出す。
田口 はたっ! 思い出した!
山下 (ひそひそ声で)
おれがネットで注文したやつやん。
みんなをサプライズさせようと思ってたのに、
自分がサプライズしてもうた。
田口 おれがインターネットで注文したやつやん!
みんなをサプライズさせたろ思てたのに、
なんや、自分がサプライズしてもうたがな!
おの お父さん、それは何ですか?
田口 母さん、聞いて驚くなよ。
これはな、あれや‥‥
とやま ザッハトルテやーーー!!
モギ ことしも次女が言っちゃった!
しかも最後だから気迫がすごい。
山下 いいぞぉーー。
ここまでほとんど去年と同じだぞぉ。
しかし、この先は予定調和では済みません。
恒例の‥‥
モギ 「本気じゃんけん」だ‥‥。
田口 みんな、わかってるな。
この、箱を開けるのがいちばんたのしいんや。
その最高の役を誰がやるのか‥‥。
ことしも田口家では、
恒例のじゃんけん大会で決めようと思う。
わかた ドキドキ‥‥。
とやま ドキドキ‥‥。
モギ このじゃんけんは、ノンフィクションです。
ここだけは、やらせではございません。
田口 いくぞっ、さいしょはグーー!
田口 ん?
‥‥ちょ、ちょっと待て。
わかた どうしたの?
田口 ‥‥‥‥腕が、いっぽん多いだろ。
田口 この腕のヌシは‥‥‥‥‥。
田口 ‥‥‥‥‥‥。
山下 さあ。
モギ さあ。
山下 お茶の間に、こつ然とあらわれた男は‥‥
モギ 今回のゲスト、
イラストレーターの福田利之さんです!
一同 (拍手)
福田 呼ばれたので、よくわからずに来ました。
ぼくはなにをすればいいのでしょう。
山下 なんとなく流れで、
空気を読んでお願いします。
あまりしゃべらなくて大丈夫なので。
福田 わ、わかりました‥‥。
山下 さ、続けましょう。
お父さんにしてみれば、
「どちらさま?」となりますよね。
‥‥どうぞ。
田口 ‥‥どちらさま?
福田 ‥‥‥‥。
おの 福田利之さんですよ。
田口 ふくだ、としゆきさん‥‥。
わかた お父さんに言ってなかったっけ?
福田さんは、まりこちゃんの彼氏なのよ。
田口 まりこの?! 彼氏ってお前‥‥
わかた さあ、福田さん、
まりこちゃんのとなりに座って。どうぞどうぞ。
福田 あ、はい、すんません。
田口 おれが出張に行ってるあいだに‥‥
どういうことなんだ、これは。
おい、母さん‥‥母さん?
田口 みかんを見てないで、
どういうことなのか説明をしなさい説明を。
おの さいしょは、グーー。
田口 母さん!
おの じゃんけん、ぽいっ!
わかた ‥‥あいこだ。
とやま ‥‥ものすごい緊張感。
おの あいこで、しょっ!
一同 ああーーーー。
田口 ‥‥どうせ負けると思った!
モギ お父さん近年、勝てないわぁ(笑)。
わかた まりこちゃんとお母さんが勝ち残ったね。
山下 これ‥‥まさか‥‥。
おの ‥‥‥‥。
とやま ‥‥‥‥。
おの ‥‥じゃんけん、ぽんっ!
一同 おわーーーーーーー!
とやま ぎゃーーーー!!
とやま はじめて勝った! 最後に勝ったーー!
モギ こいつ、もってるなぁ‥‥。
わかた まりこちゃん、今よ!
今のその勢いで、
お父さんに福田さんのことを話すのよ!
とやま ‥‥お姉ちゃん、ありがとう。
お父さん、
お父さんに言いたいことがあるの。
この家はいごこちがいいし、
毎年のザッハトルテもたのしいけど、
わたしはそろそろこの家を出て、
彼氏と一緒に住みたいと思っているんです。
田口 ‥‥‥‥まりこ、いくつになるんだっけ。
とやま ‥‥31。
田口 え?! そんなにいってるの?
‥‥じゃぁ、まぁいいのか。
山下 まりこ、ほんとの年を言っちゃったよ。
モギ 寸劇なんだからサバをよめばいいのに。
田口 年齢のことはどうでもいい!
そんなに家を出て行きたいなら
勝手に出て行けっ!!
とやま ‥‥‥‥。
おの お父さん、わたしは見損ないました。
こんなにムードを悪くして。
たとえ何があろうと、
「じゃんけんで勝った人がたのしく箱を開ける」
それが田口家の家訓じゃなかったんですか?
田口 ‥‥母さん。
‥‥そうだな、わたしが悪かった。
まりこ、せっかくじゃんけんに勝ったのに
雰囲気を悪くしてすまなかった。
とやま ううん、いいの。
じゃあお父さん、開けるね。たのしく開けるね。
おの その包装紙はわたしがもらいます。
おの この紙はたたんでおかないと。
おの なにかに使うかもしれないから。
田口 ‥‥母さん、
何度も言うが、どうせ使わないだろぅ。
とやま 利之(としゆき)さん、いっしょに開けましょ。
とやま くしゅくしゅっとした
赤い紙がかわいいでしょ?
福田 うん。
あ、チョコレートのいい香りが。
とやま ほんとだぁ(笑)。
とやま ワクワクする(笑)。
福田 うん(笑)。
山下 (ひそひそ声で)仲の良いふたりを見ながら、
お父さんはしみじみした独白を。
田口 ‥‥娘よ。
次女のまりこよ。
いつのまにかすっかりお年ごろになっていた、
わたしの娘よ‥‥。
田口 立ち会い出産をしたあの日が、
まるで昨日のことのようだよ。
そうか‥‥もう31年も経っていたのか‥‥。
田口 パパと一緒じゃないと眠れないと
泣いていたあの夜。
はじめて自転車に乗れた、あの日の夕方。
おててつないで帰り道‥‥。
おの ちょっと、お父さん。
田口 幼稚園のころにもらった肩たたき券、
あれはまだひきだしの中にある。
おの お父さん、見てください。
田口 お前はとんとん拍子で成長して‥‥。
おの ほら、見てくださいよ。
田口 なにを?
おの みかんアートです。
田口 みかんアート?!
おの 流行ってるんですよ、本も出てるの。
きょうワイドショーで見たんです。
田口 ‥‥‥‥。
おの ヘディング。
田口 ‥‥‥‥。
おの ヘディング。
田口 母さん‥‥それ、あとにしようか。
今はそれどころじゃないから。
おの わかりました。
田口 なんでたたんでるの。
おの なにかに使うかもしれないから。
田口 使わないから! ぜったい使わないから!
田口 ‥‥福田さんと、いいましたね。
福田 はい。
田口 失礼ですが、お仕事は。
福田 イラストを描いています。
とやま 福田さんはね、
すごいイラストレーターなのよ。
見てもらったらわかるの。
‥‥そうだ!
この、ツルツルのザッハトルテに
何か絵を描いてもらいましょう!
田口 そんなことができるのかね。
福田 ホワイトチョコレートの
ペンのようなものがあれば、
描けると思うんですが。
田口 あいにくそれはうちには‥‥
おの ありますよ。
田口 あるの?
とやま 利之さん、描いて。
福田 うん。
わかた わあ‥‥。
とやま すてき‥‥。
田口 ‥‥‥‥。
山下 しばらく時間が経ちまして‥‥。
一同 おおーーーー!
一同 すごーーい!!(拍手)
福田 2014年もこのご家族が、
空を駆けるペガサスのように発展しますように。
そんな思いを込めて描きました。
うまどしですし。
わかた かわいいーー!
田口 ‥‥ところで、福田さんはおいくつなんですか。
福田 46です。
田口 ‥‥46。
福田 はい。
田口 ううーーむ‥‥‥‥。
わかた そうだわ!
このケーキ、福田さんとまりこちゃんが、
ふたりで一緒に切りましょう!
ケーキ入刀よ!
福田 いや、お姉さん、それはまだ早いです。
ここはひとつ、
お父さんとお母さんに
ケーキ入刀していただきましょう。
おの まあ!
田口 (母さんがよろこんでいる)福田さん、
お気遣いをありがとう。
福田 あれですよね、チョコケーキを切るときは、
包丁をお湯であっためると
きれいに切れるんですよね。
田口 きみは! それを知ってる人か!
福田 ええ。
田口 母さん、この人はそれを知ってる人だよ。
おの よかったですねぇ。
さ、あたためた包丁で切りますよ。
田口 ああ。
‥‥それにしてもこの感じ、懐かしいな。
おの よいしょ。
わかた わあー、きれいに切れてるー。
山下 ‥‥わ、わけがわからない。
なんで父と母がケーキ入刀してるんだろう。
今回もすさまじい茶番劇だ‥‥。
おの さあ、お紅茶もはいってますよ。
田口 それでは、これも田口家の恒例。
ひとくち食べて、ひとりずつ、
「おいしくてうれしい顔」を見せてもらうぞ。
山下 出ました、これも愛すべきマンネリ。
田口 まずは、次女、まりこから。
とやま ‥‥はむ(と食べて)、
んーーー! おいひーーーー!
けらけらけらけら〜!(←笑い声)
田口 いいぞ! 父さんはまりこの、その、
けらけらけらけら〜という
「から笑い」が大好きだ!
次は、わかたろう。
わかたろうだなんて、
男の子みたいなあだ名ですまん。
お前は、男まさりだったからな。
わかた (食べている)‥‥うん、おいしい。
田口 お、ことしは、クールに決めた!
次女に先を越されちゃったからな、
お姉さんは大人の魅力をアピールしないとな。
じゃあ、次はお母さん。
おの (食べる)‥‥ことしも、おしいいです。
田口 すばらしい安定感。
母さんはわが家の大黒柱だ(笑)。
‥‥さて、福田さん。
ひとつ、見せてください。
表現のお仕事をしている方の「美味しい顔」を。
福田 いただきます(食べる)‥‥‥くわっ!!
田口 ‥‥‥‥おお。
モギ お父さんが、お父さんが認めている!
田口 なるほど、まりこが見そめただけの方。
オリジナリティあふれる表現。
‥‥では、僭越ながら最後にわたしが。
モギ いよいよお父さんの番だ。
山下 なんと5年目になる、
田口さんのおいしい顔、よろしくお願いします。
田口 ‥‥いきましょう(食べる)。
一同 ‥‥‥‥(かたずを飲む)。
田口 おいしっ!
田口 おいしっ!!
田口 おいしーーーーー!!
山下 ‥‥あ、あたらしい!(笑)
モギ まったくタメがなかった!(笑)
わかた びっくりしたぁ(笑)。
田口 原点に戻って、すなおに表現しました。
山下 そうきたかぁ‥‥新鮮でした。
さすがお父さん!
一同 すごーーーーい!(拍手喝采)
田口 ‥‥まりこ。
‥‥‥‥いいよ。
ふたりで暮らしなさい。
とやま お父さん‥‥。
田口 福田さん、まりこをよろしくお願いします。
福田 はい。がんばります。
ぼくにできることは絵しかないのですが、
一生懸命頑張って、まりこさんを幸せにします。
山下 はーーーーい、ありがとうございました!
ことしも、もう、十分です。
わけのわからない感動に包まれた気がします。
誠心誠意の茶番劇は終了ー。
一同 はーーーい。
モギ いちおう注意書きをしておきますが、
このお話は
じゃんけん以外はすべてフィクションです。
山下 現実の福田さんと外山ちゃんは、
恋人同士ではまったくありません。
モギ 福田さん、ゲスト出演ありがとうございました!
山下 福田利之さんに、あらためて拍手を!
一同 ありがとうございましたー!(拍手)
福田 なんか、すみません。
山下 とんでもない!
こちらこそすみません、
ケーキに絵を描かせたりして。
モギ さすがです、急にあれが描けるなんて。
山下 すごいことですよ。
モギ 福田さん、これからもよろしくお願いします。
山下 さて、
いろいろありましたが、
ことしもお伝えしたいことは同じです。
「ひとつのケーキで、うれしくたのしく」
モギ それが伝わることを祈りつつ、
おひらきにしましょう。
山下 「ザッハトルテ家族」のみなさん、
最後にみんなでごあいさつをー。
せえのぉ‥‥。
一同 ごちそうさまでしたーー。
次女・まりこ卒業。
来年はどうなるんだろう??

福田利之さん、
ほんとにありがとうございました。
念のため最後にも申し上げますが、
福田さんはすばらしいイラストを描く方です。
ほぼ日でも、たくさんの絵をお願いしています。
福田さんのHPはこちら。
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ザッハトルテの「試食劇場」は、これにて終了。
みなさんも、ケーキの到着で、
「うれしく」「おいしく」なりますように!

※前回登場の留学生・ポンポンチャイについて
 一切触れていませんが、
 彼はずいぶん前に帰国しています(ほぼ日は辞めてません)。

とじる