人事担当・趙+CFOシノダが語る 糸井事務所の、はたらきかた。

糸井事務所では、アルバイトも含めた社員のことを
「乗組員」と読んでいます。
ひとつの船に乗り、その船を前に進ませるために
たがいに協力しあって仕事をするイメージです。
そんな我ら「乗組員」の「仕事のしかた」について
ふだんから考えたり話しあったりしている
人事担当の趙とCFOシノダに
ざっくばらんに、話してもらいました。
テーマは「糸井事務所の、はたらきかた」について。
聞き手は「ほぼ日」読み物チームの奥野です。
応募の際の参考にしてみてくださいね。



── 当事者意識、という言葉が出てきましたが、
それってどうすれば持てるんだろう‥‥
ということについては、どう思われますか?
篠田 うん、この前ね。
── はい。
篠田 「当事者意識」を
とりあえず3つの要素に分解してみたんです。
── おお、なんと!
篠田 いや、私、好きだから、こういうの(笑)。
── はい(笑)、ぜひ聞かせてください。
篠田 ま、そんなにたいしたことでもないんですが‥‥、
まず1つめは「自分で決める」こと。
── たしかに、最近思うのは
「ここで自分が決めないと、誰も決めてくれない」
という場面ばっかりだなあということです。

僕は、そのことに慣れていなかったので、
糸井事務所ではたらきはじめたばかりのころ、
「自分で決める」を引き受けるのに、
けっこう時間がかかったような気がします。
「自分で決める」って、言いかたを変えると
何か難しい課題に突き当たったとき
「どうしよう?」じゃなくて、
「ああしようか、それともこうしようか」
というふうに
前向きにアイディアを出していく、いうことですよね。
篠田 そうそう、そうなんです。

悩んでいて何にも決められずに
半日も経っちゃった‥‥
とかだと、仕事になりませんから。

で、2つめが、
「自分で決めた」ことから生じる「結果」を
良くも悪くも、引き受けること。
── なるほど、引き受ける。
篠田 で、3つめが、
「自分で決めて、その結果を引き受ける」
というプロセスを、
自分ひとりのなかで「閉じず」に
周囲に見える、きちんと開いた状態でやる。
つまり「ごまかさない」ってことですね。
篠田 「約束する」と言い換えても、いいかも。
── 「当事者意識」と聞くと
つい「自分が、がんばればいいんだ!」みたいに
内側に入ってしまいそうになりますが‥‥。
篠田 それだと、ダメですよね。

やっぱり、
読者やお客さまに、もっとよろこんでもらったり、
約束したことを守るためには、「ひらく」が必要。

まわりに「ひらいて」さえいれば、
「あ、これ、できないかも」というときにも
はやめに相談に行ったりとか、できると思うんです。
うん、うん。
篠田 反対に、自分の内側に閉じこもっちゃうと
ヤバくなっても相談しない。

で、ひとりで何とかしようとしてズルズルズル‥‥
みたいな仕事の仕方って
本当の意味での「当事者意識」では、ないですから。
── ひらいていくこと、約束すること。
篠田 インターネットというのはバーチャルな場ですけど、
糸井事務所の仕事って、
全員が、お客さんと「直接対面」してるんですよね。

それは、原稿を書く人やデザイナーなど
つくったものを、直接に見てもらえる職種以外にも。
── つまり、管理部門でも。
篠田 はい、読者からのメールは
直接の担当だけでなく、
すべての乗組員に共有されていますから、
1歩先には、読者やお客さまの顔が見えるんです。
逆にいえば、お客さまからも見られてる。
篠田 そう。
── 管理部門といえば、
今回は「経理チーム」の募集もありますね。
篠田 そうですね。

たとえば、もし
「今の法規制とか慣行では、こうなんです」
というところに
社内のルールを型通りに「当てはめていく」のが
これまでの一般的な管理部門の姿だったとしたら
糸井事務所の総務や経理や人事は、
もう、いちいちゼロから考えてると言えます。
── ルールありきで考えていないと。
篠田 それを「おもしろい」と思えるってことが
「自分の動機」を大切にすることだし、
その動機に、個々の専門技術を組み合わせて、
今の糸井事務所に
いちばん貢献できるかたちをつくるのが理想です。
やっぱり、会社のルールをつくることの意味って
「乗組員のみんなが
 はたらきやすくなるため」じゃないですか。

だから、つくったルールに縛られて
現場の動きが制限されてしまうことになるのは
本末転倒ですよね。
篠田 そうそう、管理部門が
自分たちの仕事をやりやすくするためだけに
ルールをつくる‥‥のではなく、
糸井事務所では
管理部門が「発明」しなきゃならないんです。
── なるほど、なるほど。

ちなみに、冒頭のところで
最近の糸井事務所の「キーワード」のなかに
「企業人と生活者」ってありましたが
これ、僕ら乗組員にも耳新しい言葉だと思いました。
篠田 はい、最近、いろんなミーティングの場で
糸井さんと話していると
よく出てくる言葉だったので挙げました。

つまり「はたらく姿勢」の話なんですけど
「企業人であることと
 生活者であることの両方を追求する」
という考えが大事だよねって、話なんです。
── 詳しく教えてください。
篠田 ようするに「会社に滅私奉公しろ」か、
「よき家庭人としてがんばれ」か、
どっちかひとつのほうが
一見、まあ、わかりやすいじゃないですか。
── ええ。
篠田 でも、糸井事務所が提供している価値って、
やはり
「ふだんの生活の場面でのうれしさ、よろこび」
ですから、
「家庭人、生活者としての充実」が
仕事のアウトプットに関係するはずなんです。
── なるほど、なるほど。

つまり、ただ単に「プライベートを充実させよう」
みたいな話でもないとういことですね。
篠田 そうですね。

たとえば「虫歯のない会社宣言!」って
あったじゃないですか。
── はい、「乗組員の虫歯をゼロにする」目的で
立ち上げた、珍妙なノリの人気企画です。

ただ、ノリは珍妙でも
大まじめに「ほぼ日、虫歯ゼロ」を追求していて、
読者の関心も高く、
更新のたびに、たくさんの人が読んでくれました。
篠田 あれ、まず「歯が痛いから治療する」というのは
「生活者としての責任」ですよね。
── ええ、なにより自分自身の健康のことですし、
歯が痛くて不機嫌だったら、
家庭の雰囲気にも悪影響を及ぼしてしまうし。
篠田 でも「健康管理」というのは
同時に「企業人としての責任」でもありますよね。

その人の能力が十分に発揮できないことで、
仕事の進捗が遅れたり、
チームのメンバーにも迷惑がかかってしまうから。
だからこそ
「虫歯は放置せずに、きちんと治す」ことが
糸井事務所では
ある意味で「乗組員の責任」でもあるのかなあと。
篠田 ようするに
「企業人としても、家庭人としても
 きっちり責任をまっとうしてください」
ということです。
── 糸井さんが
「風邪をひいたら、積極的に休んでください。
 他の人にうつさない、ということが
 風邪をひいた人の責任です」
とよく言っているのと、同じことですね。
その流れで言うと、糸井事務所ではたらく人には
「自己管理」が出来てほしい、
「自分で仕事のリズムをつくれる人」
であってほしいということが、あると思います。

糸井事務所では、乗組員の一人一人が
「企業人と生活者」として
いちばんいいはたらきかたができるように
自分の勤務時間を
できるだけ自由に決められるようにしています。

ややもすると、
どんどん夜型になってしまうタイプの人も
いるかもしれないですが、
周囲とチームを組んで仕事をする以上、
それだと
長く続けることって、できないですから。
── はい。
篠田 ‥‥以前ね、某大きな企業ではたらく人と
お話をさせていただいたときに、
「糸井事務所では、
 いわゆる大企業的な意味での上司がいないので
 自分の動機から、当事者意識でやってる」
と言ったら
「上司が見てないのに
 だらけたり、ズルしたりしないんですか」って。
── ああ‥‥でも、それだと「つまんない」ですよね。
篠田 そう、何度も話に出ましたけど、
糸井事務所では
「自分で仕事を生み出していく」のが基本で
それをおもしろがる人の集まりなんです。

そういう人たちの中に混ざるわけだから
「自己」をしっかり「管理」して
意欲的に仕事を見つけられないと厳しいでしょう。
そうならないために、ここでもまた
「周囲にひらいて、約束する」ということが
重要になってくる気がします。
── 今回は、3チーム同時の募集ですけれど、
人事担当の趙さんは
どういう人に、仲間になってほしいですか?
そうですね‥‥。

以前、糸井さんと話していたとき
「毎朝、ここへ来るだけで
 もっともっと
 心も体も健康になれる会社にしたいんだよ」
って、おっしゃってたんです。
篠田 おおー、それはいい会社だ!(笑)
「虫歯をゼロにする運動」なんかは、
すごく具体的な動きですけど、
なんというか‥‥
今よりも、もっと
「ここへ来れば、元気になれる会社」
にしたい。

だから、そういう会社つくりを
いっしょに目指してくださるような人が、
どの職種であっても、理想です。
── 篠田さんは、いかがですか?
篠田 やはり、今まで話してきことに関連づけると、
わたしたちにとっても
「ああ、そういうやりかたで
 当事者意識をもって、仕事を進めるんだ」
とか、
「あ、そうやって
 企業人と家庭人であることのバランスを
 取ってるんだ」
という「モデル」になってくださるような人。

そういう人が来てくれたら
ものすごく刺激になるだろうなって思います。
── なるほどー。
篠田 みんな、いいものはすぐ真似しますので(笑)。

「会社の雰囲気に合わせていこう」よりも
できれば、
「自分はこういうふうにやるのがいいと思うので
 ぜひ、一緒にやりましょうよ!」
と自然に巻き込んでくれるような人が
加わってくれたら、本望でございます。
そうですね。

「今の糸井事務所ではたらきたい」
じゃなくて、
「この先の糸井事務所を一緒につくっていきたい」
という意識の人に、
手を伸ばしてほしいなと思います。
<おわります>
2013-09-19-THU
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