POMPEII
「ポンペイに学べ」
青柳正規教授と、鼠穴で対談しました。

臨時レポート!
通天閣あかり、江戸の『ポンペイ展』に行く。


今月の末くらいから、
「ほぼ日」で『ポンペイに学べ・2』の連載が始まります。
昨年も大好評だった
青柳正規先生と、darlingとの対談です。
これが、
『学校の勉強じゃなければ、学ぶっておもしろい』
と、おおぜいの読者にとてもウケたんですねぇ。
私も、去年のこの連載、大阪で読者として読んでたんです。

突然、出てきてすみません。
通天閣あかりと申します。
連載がはじまるより前に、
今年の『ポンペイ展』に、とにかく行ってみよう、
ということで、お先に行ってまいりました。

東京では小雨の降っていた土曜日でした。

ほんの3分ほどレポートさせていただきますので
おつき合いくださいませ。

正直に申しますと、
ポンペイのことは、そう言えば学校で習ったな、
ボンベイとはまた違うのか?
くらいの知識しかなかったんです。
でも青柳先生とdarlingの
「装飾せずにはいられないポンペイの人たち」
という話に感じるところがあり、
その気持ちの豊かさぶりを見たい。
これが、あえていえば私のテーマでした。

初めて行く、その名も江戸東京博物館、でっかい!
あちらに見えるは、国技館ですか。
今日は私と同じ大阪出身の友達と一緒で、
ちょっと観光気分です。

行きそびれたんですが、
バンが停まっていて、その前でジュースなんぞが飲める
「ポンペイカフェ」なるものが出現していました。
ここでは、何かあるたびに、
カフェが併設されるのでしょうか?
「人体の不思議カフェ」とか「黒澤明カフェ」とか
できるなら行ってみたいもんじゃ。

たいていの展覧会っていうものは、
ピカソのこととか、ルノワールのこととか、
土門拳のこととか、魯山人のこととか、
鑑真和尚のこととか、
普段からまったくと言っていいほど考えていない事柄が
ずらっと展示されている空間に
「どんなんかな」くらいの気持ちで
突然飛び込むものですから・・・
その空間に馴染むのに、えらく時間がかかります。

絵画を眺めて「ほ〜お」とかいう顔をしている自分って
なんか違うなあ、ほんまに「ほ〜お」なんか? 
と、客観的なこと思ったり、
誰かと一緒に行くと、「すごい!」とか「いい!」とか
とりあえずコメントしなきゃいけないような
気持ちになったり、
なんだか普段と違う居心地の悪さを感じてしまいます。
見ているものを自分に引きつけるのが難しいんです。

ところが、
このポンペイ展って、不思議なくらい
するっと入り込むことができたんです。

「地震」「噴火」っていうキーワードが
まず飛び込んできて、
ヴェズヴィオ山の裾野に広がるポンペイの町は
なんとなく日本の田舎のようにも見えて
なんか他人事じゃないなあ、
って、一気に身近なことに感じられました。

展覧会における展示の順番って
展覧会そのものの編集作業って、
すごく重要だなあと思いました。
まったく「掴みが命」、ですよね。

次に「21世紀の日本は豊かですか」
というコピーが目に飛び込んできて
ただ単にポンペイの歴史や暮らしを知る、
っていうだけの目的から
「そう言えば、日本はどうよ?自分はどうよ?」
って問い掛けながら見る楽しみが湧いて、
友達とずっとツッコミっぱなしでした。

「ぶどうを圧搾する丸太の先に
 羊の顔、彫ったりするか、しかし!」

「ロウソク立てるためだけに、
 像を作ってその手に持たせるって、無駄やん!
 まあ、でもこの像、男前やけれども」

これがdarlingの言っていた
「装飾せずにはいられないポンペイ」なんや。
展示されているものすべてがそうでした。
秤の重りも人の顔になっていたり、
壺の足が獣の足になっていたり。
水やぶどう酒を運んだりするかめだけはシンプルで
弥生式土器のような感じでしたが。

絵画の中で驚いたのは、
ポンペイ展のポスターにもなっている
『パン屋の夫婦』っていうフレスコ画です。
あれは、タイトルもそのままに
パン屋の夫婦の肖像画なんですけれども、
旦那さんは手にパピルスの巻物、
奥さんは手にペンと板を
思いっきり顔の前で持っているんですが、
これは、
「わてらには文章を読んだり書けたりする
『学』があるんでっせ、へっへっへ」
ということを表しているらしいです。
(なんで関西弁なのか)

すご。
パン屋さんが肖像画に描かれているってことも、
おもしろいけれど、
その肖像画に、自分たちをアピールする情報を入れるって、
これはもう、広告の原点でもありますよね。
パン屋なら「学」より「腕」だと思うんですが・・・。
そういうもんじゃないんだ。
あ、「知的なわしらのパンやで」っていう、
ブランド構築かいな?

ある程度裕福な家庭で出されるという食事もすごくて、
ラザーニャとか、レバーミンチ団子とか、
松の実とくるみのデザートとか
一工夫もニ工夫もした料理が
当時から食べられていたそうです。
材料もかかる時間や手間も、たっぷり豊かですよねえ。
料理の写真を見て
「うちより豪華だなあ」と老夫婦が笑っていました。

「科学と技術」のコーナーでは、
日時計の展示がありましたが、
携帯用日時計というものも既にあったらしく、
「腕時計や携帯電話のはしりやな!」と
当然のように思っていました。

他にも「ポリビウスの家」、っていう
当時の裕福な家の復元コーナーや
災害にあったときの人型(樹脂で固めたもの)など
「大きな見どころ」が
ポイントポイントにちりばめられていて、
ほんとに飽きないです。

画像で説明した方がいい事柄に関しては
長くもなく、短くもない、
2分くらいのちょうどいい長さのビデオが
用意されていて、分かりやすかったです。
「バーチャルポンペイ散歩」のようなコーナーもあって
私も散歩してきましたよ。
「青柳先生と行くポンペイツアー」なんかがあったら
是非現地に行ってみたいと思いました。

学研マンガで歴史を学んだ世代の私は
絵本でならちゃんと読むだろうと、
『探検と発掘シリーズ5 ポンペイ』っていう
青柳先生監修の絵本を帰りに購入しました。
ちょっと安野光雅さんのような絵も
かわいくってお薦めですよ。

じっくり見回ると2時間はかかっちゃう感じでした。

全体を通して見て、
豊かさは、あるものではなくて
あるものから生み出すものだということを
強く思いました。
現代と違うのは、
ガスや電気や化石燃料の技術がなかったことくらいで、
古代の完成形はローマだという
青柳先生のお話が、目で見えてよく分かりました。
2000年も前に生きていた人たちなのに
やろうとしていることや
困ったときに考えることやなんかも今と同じです。
そう考えると不思議な繋がりや親しみを感じます。
もし、2000年後の人が「東京展」を見ても
そういう感想を持ってほしいなあと思います。
歴史を学ぶことによって、これからのことを考えることは
死を考えた上で、どう生きるかを考えるっていう
ことと通じるような気がしました。

ええこと言いすぎましたかね。え、言ってない?

そんなポンペイ展に、もし興味が湧きましたら
行ってみてください。
これから8月末に始まる連載の青柳先生のお話が
さらに立体的に見えてくると思うんです。
私は、行ってよかったと、ほんとに思ったし。

ほな。

2001-08-20-MON

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