ポカスカジャンの脱線マガジン。

ツアー日記

9月10日(金)晴れのまま、夜、月出る 盛岡〜青森

朝6:00、カプセルホテルであまりに効きすぎる
館内クーラーで凍えるように目が覚める。
出発時間まで、まだ4時間もある。
サウナで寒さをいやそうにも、
なかなか体の芯まで温まらない。
のんちんも起きてくる。やはり凍えている。
省吾と福原を除くと、“まっぱ”で寝てる。
体内脂肪の差を見せつけられる。

朝10:00、集合場所の駐車場にHOTの
「おーいお茶」を買っていく。
もうあたたかい缶ジュースが買える季節だ。
なぜか省吾は、

「腹、まだ減ってねーよ」

とか言いながら、

「うれしー、肉まんだー」

と早速エンゲル係数を上げにかかってる。

今日、目指すは青森だ。
そしてそのままライブに突入だ。
故郷凱旋ライブをとっくに終えた2人は、
僕の緊張をあおろうとはしゃいでいる。
僕を緊張させてのハプニング狙いだな。

2時間も車を飛ばすと青森だ。
新しい道ができてたり、知らない建物があったりと、
なかなかに感慨深い。

僕の苦い思い出がたくさんつまった街だ。
恥ずかしい過去を置いてきた街だ。
それは僕の当時の学生証に貼られた証明写真が
一番端的に物語っている。
ギコチない顔で写っている自分。
それが当時の僕だ。
でも今日はあまり感傷に浸ってもいられない。

PM2:00に小屋入りして打ち合わせ、
仕込みをしたらスグに本番だ。
いつものように本番前、ドラゴンアッシュを聞く。

「俺まで緊張してきたよ」

とのんちん。
一所に歌を口ずさむと、
何故か泣けてきてしょうがなくなる。
2人にバレないように顔を伏せる。
心が素直になる。
それこそ“結成のうた”じゃないけど、
いろんな事が頭をよぎる。

のんちんありがとう。省吾ありがとう。

福原(通称:青二才)が呼びにくる。

「3分前、よろしくお願いします」

鼻をすすってると、省吾が

「風邪ひいたの?」

と言った。

「うん」

と答えた。

車を降りて立つと、腰が抜けたように立てない。
僕はへなちょこだ。チキンハートだ。
僕は僕のスピードで歩くしかない。
僕は僕で行くしかない。
なんだか槇原敬之みたいだ。

SEに乗って舞台に上がると、
あまりにいろんな顔があって目まいに襲われる。
ライブはすごくいい感じで進んだ。
最後、のんちんが、おもむろに一冊のノートを
取りだした。僕のおふくろが書いたらしい。

やられた。

のんちんが代読する。
僕の知らないおふくろの心情がつづられている。
我慢しようにも涙が止まらない。

「俺は吉幾三か」

と言っても言葉になっていない。
アンコールのアンコールの『八兵衛の一番長い日』も
別に何かの新人賞を取った訳でもないのに、
歌の途中、こらえ切れなくなる。

津軽弁で僕のことを“なげっつ”と言う。
終わって打ち上げは僕の“ケイヤグ”とする。
みんなうっさい。もつけだ。
こめもほりもたねも山中もひっともみんなありがとう。

家に帰ると、今日のライブを観たおふくろの友達が
感激のあまりどうしても出迎えたいと居る。
一同呆気にとられる。
軽くそばを食べ、落ち着くと、熱が上がる。

39℃だ。

座薬をさして寝る。
僕の妹にのんちんが、一緒にお風呂に入ろうと言ってる。
省吾は写真をくれと言ってる。

「寝られやしねぇ」

くらくらする頭の中で叫んだ。

(PSJ/玉井伸也)

1999-09-17-FRI

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