詩 人 と T シ ャ ツ 。
ボ ー ズ 、谷 川 さ ん ち に 行 く 。

第9回「男のほうがTシャツを楽に着られるんですよ」



谷川 なんか、女の人って、男ほど、
あんまりTシャツに思い入れがないような、
そんな気がしませんか。
もちろん女の人も着てるけど、
なんか男の子のものって感じがしますよね。
ボーズ なんか、気持ちが別なんでしょうね。
なんだろうな、その、
一張羅じゃないんじゃないですか?
谷川 ああ、なるほどね。
ボーズ ぼく、子どものころにすごく気に入ってた
赤いTシャツがあって、
それはやっぱり一張羅だったんですよ。
女の子にとっての一張羅って、
Tシャツではないんじゃないかな。
もし着てたとしても、たぶん、
もっとほかのもの、
かわいい襟のついたものなんかが
ほんとは着たいんだけどっていう感じで。
谷川 あー、そうだね。
ボーズ Tシャツにこだわってるのは
やっぱり男のほうが多いような気がしますね。
うまく着る女の人はいるけども。
谷川 それで思い出したけど、
1960年代だったかなぁ。
ニューヨークに行ったときに、
アメリカの若い女の人たちが
ノーブラになりだした時代があって。
なんかあの、とにかく、Tシャツで
乳房のかたちがすごくきれいに見えて、
乳首が浮いて見えてるっていうのが
すごいよかったね!
ボーズ (笑)。でも、アメリカの人って、それ、
いまだにぜんぜん平気ですよね。
谷川 うん、そうでしょ?
でもそのころまでは、アメリカ女性って、
けっこうブラジャーをちゃんとして、
堅いところがあったんですよ。
それが当時、一斉になくなった。
その素晴らしさ。ほんと感動したよ。
ボーズ それはやっぱヒッピーカルチャーがあって?
谷川 そうだと思う。
ボーズ 昔の映画観るとそうですもんね。
長髪の男たちとノーブラの女たち、みたいな。
谷川 そうそうそうそう。で、ノーブラでもさ、
なんか、あの、ヒッピーの人たちって、
わりとゆるやかなさ、こうブラウス的なもの、
ワンピース的なものを着てるでしょ?
あれじゃおもしろくないわけですよ。
ボーズ ぴたぴたしてないと(笑)。
谷川 ぴったりしたTシャツ着てくんないと、
なんか、生きる喜びが感じられない(笑)。
ボーズ (笑)。当時のノーブラは、
ファッションというよりも
なんかの主張なわけですよね。
谷川 絶対そうですよ。それがすごく伝わるから、
こっちも喜ぶわけでしょ?
ボーズ そうか、なるほど。
けっこう深いテーマですねえ。
でも、少なくとも、その問題がないぶん、
男のほうが楽ですよね。
谷川 そうなんですよ。つまり、男のほうが、
Tシャツを楽に着られるんですよね。
女の人はけっこう意識するんだと思う。
ボーズ ああ、それはそうですね。
けっきょくTシャツを着てても
ブラをするんだったら、
男よりも1枚多いですもんね、単純に。
ああ、そっかそっか、だからなんか、
女の子のデザインされた服で、
こう、透けてるようなもの、
なかのブラだの、キャミソールだのが、
見えるようになってるものって、
あるじゃないですか?
あれって、男からすると、
「なんで透けてんの?」とか
「見せる前提なら
 透けてなくていいんじゃん?」みたいな、
もどかしい、よくわかんない感じがあるけど、
なんか、そういうことなんだな。
難しい問題が背景にあるっていうか、
要するに、男みたいに簡単に
リラックスできないんですね。
谷川 うん。あと、脱線するけれども、
ヌーブラに乳首がないのは、
すごく不自然だと思う。
あれ、多少でもね、
やっぱりそういうものをね、
つけるべきだと思う。
のっぺりしてて不気味。あれは。
ボーズ あ〜。あれもたしかに、
「どっちなんだ」っていう問題ですね。
谷川 ね。だけど、つけるとしたら、
乳首つける位置が、きっと難しいんだね、
ヌーブラの場合(笑)。
ずれたりしても困るだろうし。
ボーズ うーん、男にとってTシャツは
リラックスできるもんだけど、
女の人にとっては
逆のことだって多いわけですね。
谷川 そうだね。
ボーズ あとは、男の子のほうが
ものを集めるのが好きですよね。
そのへんも関係するのかな。
谷川 それもあるよね。そう、女の人って、
あんまりコレクションしないよね。
必要なものはコレクションするけど。
なんか、宝石とか、きちんと価値のあるものは。
ボーズ そうですよね、うん。
谷川 女の人は、無償のコレクションは、
あんまりしないんだよね。
ボーズ それは不思議ですよね。うん。
男としては、べつに集めてるわけじゃなくて、
無意識にTシャツを買ってるんだけど。
谷川 買い漁ってるみたいに見えるんだろうね。
ボーズ 気がつくと、男の部屋には
Tシャツだけの引き出しが
いっぱいあるっていう(笑)。
撮影:MIKA POSA

2004-03-30-TUE

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