遠くに何かいる。

なんですかね、この
なんといいますかね、
道の雰囲気が、
10年くらい車が通ってないんじゃないか、
といような趣になってまいりました。
歌うたっちゃおうかな。
誰かに電話しようかな。
乗組員の‥‥奥野とかなら出てくれるだろうか。

東の端は、けっこう遠い。
人はいないです。

メールをいただきました。

スガノさん、見てますよー！
ご無事の到着、なによりです！

散策中の写真にはねこしか写ってないですね‥‥。

あの、大勢の取材陣は
いったいどちらにいるのでしょう。
皆さんそれぞれ散策中とか？？
取材の下見？

くぬるより

くぬるさん、ありがとうございます。
そうなんですよ、船にいたたくさんの取材陣、
いったいどこに‥‥と思ってたら、
ほら、いらっしゃいました。
ほっとしました。

しかしここでわたくし、衝撃の事実を知りました。
報道のみなさまに
「太陽は、東からのぼるから、
　島の東に行くべきですよ。
　ただ、日食を観測したいのであれば
　東に行くより高いところで
　見たほうがいいですよ」
と教えていただいたのです。

なぜ、わたくしは取りつかれたように
島の西端をめざしていたのか。

でも、日本の西のほうから
日食が順番に早く見えるんでしょ？
なんで太陽は東からのぼるのだろう。
自分、バカボンの歌を地でいくみたいなことになってる。
がぃーーーーん。

東に向かいます。

だーーん！
きゅうに海出てきた、
海出てきた、
わー！！　なんだろうあの島。
ぞわぞわぞわ。
うわっ、すっごい低いとこから
でかい鳥が飛んでくる。

深呼吸、
気を確かに、
コンパスを出して海の方角をチェック。
南西方向。
だめーーー。
ひ、ひ、引き返そう。

ここから先は
ちょっと行けそうにないなぁ。
（ほんとは行こうと思えば行けるけど）
引き返して、さっき左に出てきた
細い道を行こうっと。

少しいくと
人影がなくなるのが
心細いです。
島の西端めざして車を走らせます。
だれもいないだれもいない。

「オイコラ！」
ここで駐車場の百合がわたくしに忠告を。
イエス、そうです、竹島でのんびりと
ねこを数えている場合ではございませんでした。
金環日食は、早朝。
東の空からのぼる太陽が
島のどの位置から見えるのか、
探らなくてはならないのです。

さきほど道に迷ったことで
完全に車の運転から逃避していました。

もういちど、車に乗り込み、出発です。

見たところ、島に
ねこは３匹。

くろねこ２匹、
みけねこ１匹。

いろいろ、ほうぼう、歩きます。
しかし、少し行くと、いきどまり。
ここは……神社。
引き返します。