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第47回 一台のカメラと一緒に、
     旅に出よう。



ある冬の、早朝の琵琶湖湖畔の風景。
この日もちょっと寒かったけれど、気持ちがよかったので、
あたりがまだ暗いうちから、ぼくは湖畔を歩いてみました。
すると、やがてあたりが青一色でつつまれていったのです。
そんなある一日のはじまりが、ぼくにとっては
何だかとても特別な朝のように感じました。
Camera : Leica M4+Summikron35mm
Film : Fujifilm PN400n135/36
Shooting Date : f8 4s.
(クリックすると拡大します)


今年の冬は、例年に比べると暖かいですね。
おそらくまだまだ寒い日も続くのでしょうが、
季節は、少しずつ進んでいます。
そしてこの冬のあとには、おそらくみなさんにとっても
新しくいろんなことが始まる季節、
春がやってきます。
寒い冬から、暖かい春に向かう季節というのは、
誰もが経験する卒業があったりと、
一年の中で、もっとも節目を感じる
季節なのかもしれませんね。
ぼくはこういうときに、遠出がしたくなります。
日常が存在する場所を少し変えてみることで、
新たな発見があったり、新たな楽しみが
たくさん見つかりますし、
節目の時の旅というのは、
あとになって、大切な時間だと気付くことも、
たくさんあるからです。
(旅に出られそうにないときは、
 すこしだけ遠出します。)

もちろん、カメラもいっしょです。
それに、じつはこの冬という季節の光は、
実は写真にとっても好都合です。
大気が一年の中で、もっとも澄んでいることもあって、
光の純度もとても高いので、とてもきれいに写ります。

さて、いざ出かけようとした時に、
おそらく多くの人が、カメラを持って行くとしても、
どのようなカメラを持っていったらいいのか、
けっこう悩んだりするものなのではないでしょうか。
たとえば、コンパクトカメラなどの
レンジファインダーのカメラがいいかな、
いやいや、一眼レフもあった方がいいかもしれない、
などなど、考えるときりがありませんよね。
そこで今回は、そのようにして旅に出るときに、
どんなカメラを持って行ったらいいのか、
ということについて、お話ししたいと思います。

とにかく、どこかに出かける前というのは、
特に、行ったことのない場所に行くときなどは、
勝手にいろいろと想像しているわけですから、
ついつい、持って行くカメラにしても、
何台かのカメラを持っている場合などは、
あれも、これも、となってしまったりしますよね。
海外旅行の旅支度と同じです。
とはいっても、カメラというのは、
一眼レフなどは、それなりにかさばりますし、
それに加えて、レンズももう一本、などとなると、
かなりの大荷物になってしまいます。
それでは、ただ単に、写真を撮ることだけが
目的になってしまって、
なかなか、楽しいお出かけにはなりません。
もちろん、いろんな写真をたくさん撮ることで、
見つけることが出来ることだって、
たくさんあるのですが、
今回は、“もしもカメラを一台持って行くとしたら”
ということで、話を進めたいと思います。

一眼レフ? それともコンパクトカメラ?

どこに行くにしても、“旅行をする”ということは、
“移動する”ということです。
そして、その移動にも、大きく分けて、
2つの移動があると思うのです。
まずひとつは、たとえば「どこどこで、何を観る」
などの、わりと目的がはっきりしている移動。
そして、もうひとつは、一言で言うと
「旅行そのものを楽しむ」ための移動です。

ぼくはこんな風にしてカメラを使い分けています。
まず、前者の目的がはっきりしている場合は、
その被写体に対しては、迷わず一眼レフを使います。
なぜなら、一眼レフというカメラは、
ファインダーの中で見える像が、
じっさいに写っている写真と同じであることも手伝って、
その被写体となるものごとと、
しっかり向かい合うことが出来ます。
そのことで、より一層“しっかりと観る”、
ということが出来るのです。
また、後者の場合のように、
旅そのものが持っている好奇心を楽しんだり、
気分転換だったりする場合は、
ライカのような、レンジファインダーのカメラを使います。
レンジファインダーのカメラというのは、
先述の一眼レフとは違って、
ファインダーは、あくまでもガイドですので、
そのことで、自身が見ていること以外の部分も、
わりと自然に写ってくるのです。
そして実は、そのことというのは、
たとえ、その時点では具体的に気づいてなかったとしても
感じていた“気分みたいなもの”だったりするのです。
とにかく、こうやってカメラを使い分けることで、
少なくとも、自分自身が身軽になることが出来ますし、
だからこそ撮れる写真だって、たくさんあるのです。

もちろん、これはあくまでも、
ぼくなりのやり方ではあるのですが、
そんな風に、カメラを使い分けてみたらどうでしょうか。
そして、もしもその違いがまだよくわからない場合も、
いろいろ迷わずに、好きなカメラを一台持って、
一緒に、出かけてみてください。
そうやって、たった一台のカメラを持って行く、
ということで、
何台ものカメラを使い分ける手間が
なくなるのはもちろんのこと、
きっと、その“一台のカメラ”が、あなたにとって、
おそらく最高の相棒になってくれるでしょうし、
そうなれば、かならず一緒になって、
あなたの大切な瞬間を写してくれるはずです。



たまには一台のカメラと一緒に、
どこかに出かけてみませんか。
たとえ近くでもいいですから、
少しでも気分を変えて、
それこそ被写体は、何だってかまいませんので、
ぜひとも、写真を撮っておいて欲しいと思っています。



 
これは、ヴェネチアのサンマルコ広場の回廊の柱の写真です。
ぼくは、はじめてその回廊を歩いたときに、
そのひとつひとつの柱が、まるで人のように、
ひとりひとり別の表情があることに気が付きました。
そして昼間は、ヴェネチア島の中を歩き回って、
人が少なくなった夜に、一眼レフを持って、
そんなひとりひとりの柱たちの写真を撮りに出かけたのです。
(クリックすると拡大します)

2007-02-02-FRI
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