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第9回
目に入ったものは、全部撮ってみよう。


この写真も、いつものように
フラフラと街の中を歩いていると
目の前に現れた突然の「LOOK」。
だったらしっかり見ましょうと、撮影した一枚。
(クリックすると拡大します)


今回は、前回の続きのようなお話です。
それといいますのも、前回は
自身の“感覚”と、実際のカメラの“高さ”を
合わせてみましょう
という話をしましたが、
特に写真を撮ることに対して経験の少ない人にとって、
いきなり“気持ちのアングルを探す”というのは
少しばかり難しい作業なのではないかと思うからです。

だとしたら、そういった場合は、
まずは、アングル(カメラを構える高さ)とか
フレーミング(どこまでを画面に収めるか)
といったことを無視して、
「とりあえず、目に入ったものは、全部撮ってみる」
ということから始めてみましょう。
もちろんそれは、ある程度経験のある人にとっても
写真そのものが変わる、
大きなきっかけにもなるはずですから、
是非とも、同じようにやってみて下さい。

そんな時に、今の私たちには
とても便利なカメラがあります。
それはデジタルカメラです。
今までのフイルムカメラでしたら、
どうしても撮影した後に、
まずフイルム現像をして、
しかも一般的なフイルムとして使われている
ネガフイルムの場合は、
プリントにならない限り
その写真を見ることが出来ません。
それこそ、その写真を見る頃には、
多くの場合、実際に撮影した時の“感覚”みたいなものは
既に忘れてしまっていたりするものです。
なかには、スピードプリントという
便利なものもありますが、
それでは経済的にも無駄が多く、
今回のような場合には、特に意味がありません。

その点デジカメの場合は、
少なくともその環境さえある程度整っていれば、
何度も撮影を繰り返し、
何度も写真を見るということが出来ます。
ただし、たくさん撮るということを考えると、
その記録メディアは、
それなりの容量のものを用意されることをお奨めします。
現在、500万画素ぐらいのカメラが多いので、
512MBぐらいのメディアが
あるといいのかもしれませんね。

次に、そういった撮影を繰り返す時の
具体的な方法として、
とりあえず、デジカメの“撮って、すぐ見ることが出来る”
という魅力的な機能を、一時的に封印して
デジカメを、今までのフイルムカメラと
同じように使ってみて下さい。
どのようにすればいいのかというと、
「撮って、すぐに見ない」。
ファインダーのあるデジカメなら、
液晶を消して、ファインダーだけで撮ってみます。
液晶だけのデジカメであれば、
撮ったそばからすぐに見ないようにします。
そのかわりに、撮影後、
出来るだけ早いタイミングで、
自身のPCで、撮影した写真と向かい合える時間を作って
まずはとりあえず一人で、
一枚ずつ、ゆっくり自身の写真をみて下さい。

そうやって自分自身が見たものと、
改めて客観的に接することで
それらの写真の中から、
撮影時に感じたこととは
別の何かを感じさせてくれる写真を
少なくとも数枚は、見つけることが出来るはずです。

たとえ一度や二度、
一枚もそういった写真が無かったからといって、
気にすることはまったくありません。
とにかくめげずに繰り返していけば、
必ずそういった写真は生まれるものです。
そして、実はその写真こそが、あなたにとっての
“本当の写真”へとつながっていくのです。

まずは、きちんとした目的が無くても構わないので、
とにかく出来るだけ多く、
その“記憶”をメモするような気分で、
シャッターを切ってみて下さい。
もちろん、何かの目的を持って写真を撮ることも
時には必要ではあるのですが、
ただ、最初から目的ばかりを意識して写真を撮ってみても
不思議と味気ないものだったりします。

やはり写真の面白いところは、
この日常の中での、ちょっとした発見だったり
ちょっとした“うれしい”とか、
“さびしい”とかの気持ちの動きだったりが、
時に予想もしないほどに、
別のものにつながっていったり、
やもすると、とてつもなく大切な瞬間に
成り得たりするところだと、ぼくは思っています。
その上、いくつかの偶然が重なると、
そうやって生まれた一枚の写真が、
自分自身はもちろんのこと、
今度は、その写真を見た人が、
撮影者が思いもしないような、
別の“感覚”を持って、
別の“何か”を感じてくれることがあるのも
写真の魅力のひとつですよね。

そしてそこには、きっとあなたの
“気持ちのアングル”に通じる
ヒントがあるのはもちろんのこと、
もしかしたら、それ以上に今まで気付かなかった
“本当の自分”が写っているかもしれません。

とにかく、まずはいつでもカメラを持ち歩いて
気になるものがあった時は、
とりあえず、すぐに撮ってみましょう。
しかも出来るだけ、たくさん撮ってみて下さい。
そうやって無心にシャッターを切ることで
何よりも、写真を撮るということが、
今まで以上に楽しくなるはずです。
そうすると、今度は当たり前のように
今まで見えていなかった、いろんなものが、
自然と写って来るでしょう。



まず最初は、デジカメを持って外に出よう。
そして、目に映るものをたくさん撮る。
撮ったら、ひとりで、ゆっくり、それを見直す。
撮ったときに感じたこととは
別の何かを感じさせてくれる写真を選んでみよう。



この写真は、映画「青い魚」のロケハンの折、
那覇の市場でロケ場所を探している時に、
カメラアングルを探して階段を上って、
下を見ると、そこには南国ならではの
果物が並んでいました。
その時は、思いもよらない時に、思いもよらないものを
見つけた気がして、今でもこの写真を見ると、
いつでもそんなことを思い出します。
(クリックすると拡大します)


次回は「ファインダーを覗いてみないと、
見えないものもある」というお話です。
お楽しみに。


2006-02-10-FRI
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