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第1回「写真の始まりは、いつもお散歩。」


湖東 滋賀
Kotou,Shiga
(クリックで拡大します)


ぼくは子供の頃から、お散歩が大好きでした。
そして、お散歩とは逆に、もともとは、
写真が好きだったわけではありません。

ところが今では、そのどちらも大好きです。
しかも、実は驚く程、この二つはとても似ているのです。

例えば、お散歩の最大の楽しみは、
たとえそこが慣れ親しんだ場所だとしても、
いつも新しい発見があることだったりします。
もちろん時間帯が変われば、
同じ場所とは思えない程に、その光景は変わります。
そしてそれに加えて季節が変わろうものなら尚更のこと。
そういった新しい発見というのは、
いつの日も不思議と、
ぼくたちを幸せな気分にしてくれたりするものです。

それは、写真も同じことだったりするのです。
いくら頭の中で「こんな写真が撮りたいな」と思っていても、
何といっても写真の場合は、
被写体という相手が必要となります。

ということは、相手にも都合があるということです。

だからそういった相手に対して一方的に
眼差しを向けたところで、
いつも思い通りの写真が撮れるとは限りません。

そんな時にはどうしたらいいでしょう?


撮ることをあせらずに、まずは見てみよう。

ぼくは、まずはゆっくりと
相手の状態に眼差しを向けてみることにしています。

不思議なもので、すると今度は向こうから、
放っておいても勝手に何か語りかけてくるはずです。
これは、その相手が風景ではなく、
人だったり動物だったりした場合は、尚更のことです。

ぼくは沖縄が好きでよく行くのですが、
行くと、いつも少なくとも一日二日は、
ただひたすらにブラブラと、
那覇市内のお気に入りの場所を散歩します。
ある時、こんなことがありました。
ある路地裏で、日向ぼっこをしている子猫を見つけました。
ぼくは、その表情が余りにも愛くるしかったので、
静かに近づきながら、その猫にカメラを向けました。
すると、その猫は目にも止まらぬ早さで、
ファインダーの中から、消え去りました。
そしてまた、ちょっと気落ちしながらも、散歩を続けました。
すると驚くことに、先程ファインダーから
姿を消したはずの子猫が、
真正面の日だまりの中に、突然姿を現しました。
しかも今度は、目もそらさずに、
それはまるでぼくに何かを話しかけるように、
いつまでも、その場所にいたのです。
ぼくは、何だかそれだけで、
とてもあたたかい気持ちになりました。
そんな気分の中で、自身のお散歩カメラのひとつでもある、
首からぶら下げていた「GR1」
シャッターを切ってみました。
すると後日、出来上がったその写真の中には、
その子猫の表情だけではなくて、
その時のあたたかい気持ちも含めて、
その場所で感じた、全てが写っていました。


那覇 沖縄
Naha,Okinawa
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カメラを持って散歩に出よう。

この感じは、お散歩をしているときに、
知らない間に、もう一度同じ場所に戻ってしまったとき、
その場所で、最初に気が付かなかったことを、
発見して、何となく嬉しくなる感じに
似ていると思いませんか。
「散歩」というのは、イメージとしても、
漢字ひとつとってみても、
特別な目的が、そこにはありません。
大事なのは、その気分じゃないかな、と思うのです。
そして最も一般的なお散歩のイメージというのは、
おそらくポカポカとしたお天道様の下、
その暖かい光を浴びながら、
フラフラと漂う感じなのかもしれません。
するとそんな時は、普段はあまり気にしていない
「光の温度」を感じることもあるはずです。
そんなことを考えながら、足を止めたときに見える景色は、
きっと、普段であれば見過ごしがちな、
新しい発見だったりする。
それは、気持ちが鬱ぎ込んでいるときに、
フラフラと歩くような場合でも、
きっと同じことが言えるはずです。

そんな瞬間に、もしカメラを持っていたとしたら?
その時は必ず、いい写真が撮れるはずです。
なぜなら、きっとその時の気分の中には、
「いい写真を撮ってやろう」とか、
「何か、面白いものを見つけてやろう」とかではなくて、
何となくワクワクした気分が、
きっとそこにはあるはずだから。
もちろん、それが全てとはいいませんが、
少なくとも、そんな瞬間こそが、
最も「いい写真」が生まれる可能性の高い瞬間だと、
ぼくはいつも感じています。
しかも嬉しいことに、そんな穏やかな気分というのは、
不思議と、必ず、写るのです。

まずは、いつもより少しだけ、
注意深く、まわりを見渡しながら、
お散歩をしてみましょう。
きっとそこには、新しい光景があるはずです。
そしてその光景こそが、
新しい写真が生まれる瞬間でもあるのです。



カメラを持って散歩をしてみよう。
いい写真とは何かなんて考えずに、
発見したものをそのまま写してみよう。
そのとき感じた気持ちを、こめながら。
そのとき感じた気持ちが、かならず写るから。


次回、第2回は
「ゆっくりものを観てみましょう」
ということについてお話しします。
次の金曜日に更新します。お楽しみに。

2005-12-16-FRI
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