コンビニ哲学発売中。
(300歳で300分バージョン)

第8回 不安定なところに追いこむ


「300歳で300分、というイベントで、
 9月13日の吉本隆明さんの講演に触れた人は、
 78歳の詩人から、いったい何を感じるのか……」

こんなきっかけで、
日本人の先達の言葉を紹介すると、
おもしろいものが見えてきそうだと感じて、
これまで、静かに、短期連載をつづけてきました。

そうは言っても、吉本さんの言葉を紹介するところで、
短期連載の枠組みとしては、タイムリミットを迎えました。
(※もしも要望があれば、またいつか、何らかのかたちで、
  吉本さんやその他の人が生涯で抱えた疑問を中心に、
  つい反応しちゃうような言葉を紹介するかもしれませんが、
  それはまた、いつかの機会を見て、ということで……)

今日は、いったん終了ということで、
吉本さん本人は、先輩の言葉について、
どう考えていたのかについての一部を、紹介したいと思います。

「前の年代の偉大な批評家に小林秀雄がいて、
 批評をやる場合、いつも気になって、頭におきながら
 ずっとやってきましたし、ぼくのそのつどの年齢の頃、
 小林秀雄はどういう仕事をしていたかなと考えます。
 歴史には、進歩もなければ退歩もないと思っていますが、
 表現をする生涯としてみると、
 いつも同じところしか掘れない
 小林秀雄を偉大だなぁと思うのですが、
 ああいうふうに年をとりたくないとも感じるんです。
 真理や美の前に立ち尽くしたときの感動を
 どこまでも掘っていくという具合には、
 ぼくは年を重ねたくないのです。
 もっと絶えず意識的にでもいいから、
 じぶんを不安定なところにとか、変化するところに
 追いこんでいって、もし年齢というものを考えるなら、
 そこで終わりがきたら終わりだ、というふうに
 いけたら理想だ、ぼくはそういうイメージを抱くわけです」


ひとつの年のとりかたについての意見ですが、
あなたは、この言葉を読んで、何を考えましたか?
そして、どういうふうに年をとりたいと思っていますか?

9月13日に、壇上に登場する5人の長老たちの語り口からは、
おそらく、生き方や年の重ね方が、伝わってくることでしょう。
それを見たとき、実際には、どういうことを感じるか……。

そんなこともたのしみにしつつ、あと5日、
ゆったりとイベント当日を待っていてくださいませ。

「あの言葉、自分は、こういう角度で読みました」にしても、
「あそこで語られていたのは、自分は違うと思う」にしても、
特に、「ついつい、自分に引きよせて考えるテーマ」を選んで
しかもハッキリした答えを紹介しないままに、
疑問や問題意識を、そのままおとどけしてきた連載でした。

もし会う機会があったら、またどこかで、お会いしましょう。

このコーナーへの感想などは、
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2003-09-08-MON

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