PHILADELPHIA
お医者さんと患者さん。
「遥か彼方で働くひとよ」が変わりました。

手紙229 日本のHIV
レベッカ・ブラウンと柴田元幸先生(1)



こんにちは。
しばらく休んでしまい、すみませんでした。

去年の5月に始めた
「ひとりストップエイズキャンペーン」も
一周年を迎えました。

どのくらい続けるか、ということは
最初からあまり考えていなかったのですが、
HIVについてお伝えしたいなと思うことを
この1年間で全部お伝えすることができなかったので、
「ひとりストップエイズキャンペーン・2年目」を
続けることにします。

どうぞよろしくお願いします。

4月の終りには
次回はHIV感染症が、
日本の医療制度に及ぼしている影響について
ご紹介しようかと思っていたのですが、
最近、立て続けに
医療とは別の立場から
HIVについてお考えになっている方々に
お目にかかる機会がありましたので、
ちょっとまわりくどくなるのですが、
そのときの話をご紹介してみたいと思います。

2年前の冬に、友人から
「すごく面白い小説なので、
もしよかったら読んでみない?
美和子の仕事の内容と
重なることもあるんじゃないかと思うし」と
一冊の文庫本をもらいました。

その本のタイトルは「体の贈り物」
著者はレベッカ・ブラウンという米国の作家でした。
とても評判になった本なのだ、と
彼女は説明してくれましたが、
わたしは彼女の作品については
それまであまりよく知りませんでした。

出張先の香港でこの本を読み始めたのですが、
いくつかのエピソードを重ねる形式で
進んでいくこの小説を、
一気に読みとおすことができませんでした。

一気に読むには
あまりにもったいなかったからです。

「体の贈り物」は
米国西海岸の街で、
HIVに感染している患者さんを対象とした
訪問介護のボランティアをしている主人公が
何人かの受け持ちの患者さんとの出来事を
一人称で綴っていくお話です。

この小説では、
強力なHIVの治療薬が
広く使われるようになり、
患者さんの寿命が飛躍的に良くなっていく直前の
米国の実情を、
とても冷静に、簡潔に、愛情をもって
綴られています。

HIV感染症をテーマとした
小説や映画や舞台に触れる機会は
これまでにもありましたが、
これほど共感をもって
受け入れることができたものはかつてなく、
本を紹介してくれた友人に感謝しながら
ようやく読み終えました。

それから1年ほどたって、
自分でHIVに関する本を出版することになったとき、
自分がお贈りしたい方10人に
拙書を贈呈してよい、という申し出を
出版社から受けました。

「体の贈り物」は、自分の本を作る際に
精神的な支えのひとつとなったものでしたので、
本当に一方的な振る舞いなのですが、
この小説を日本語に翻訳なさった、
東京大学の柴田元幸先生にお礼を申し上げたく、
いきさつを書いた礼状を添えて一冊お送りいたしました。

長くなってしまって、
ことの顛末を一回で終えることができません。
すみません。

今回申し上げたかったことは、
レベッカ・ブラウンという米国の作家の作品、
「体の贈り物」という小説が
とてもすばらしいので、もしご興味があれば
ぜひお手にとってごらんください、ということです。

では、今日はこの辺で。
次回は柴田先生からいただいた、
素晴らしい贈り物についての話の続きにいたします。

みなさま、どうぞお元気で。

本田美和子

2007-06-22-FRI

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