PHILADELPHIA
お医者さんと患者さん。
「遥か彼方で働くひとよ」が変わりました。

手紙221 日本のHIV 50代・会社員
「HIVとは無縁の人生を選択することはできる」
 


こんにちは。

「『病人になってしまった』のではなくて、
HIVと共に暮らす人生が始まったのだと思っている」と
おっしゃる50代男性のお話の続きです。

今は寝る前に1回、4粒の薬を飲んでいます。
治療を始めた頃と比べると
ものすごく楽になりました。

僕がHIVの薬を飲み始めたのは10年以上も前で
当時は1回に飲む薬の量もすごく多くて、
しかも一日に何回も飲む必要がありました。

1日に4回も飲むことになると
職場にいる仕事中の時間にも薬を飲む必要があって、
飲みだしてしばらく経って副作用も落ち着いた頃、
「何飲んでるの?」と聞いてきた
親しい職場の同僚に話すことにしました。

とても信頼できる人でしたが、
最初に切り出すときにはとても緊張しました。

薬を頻繁に飲むけれど、
普通に仕事はできるし、生活もこれまでのまま。
ただ、副作用で
トイレに頻繁に行くことがあるかもしれない、
月に1度病院へ行くために仕事は休む、
といったことを話しました。

相手は黙って聞いてくれたのですが、
すごく驚いている様子でした。

その後も
「この人はいつ死ぬんだろう?」という感じで
見られていたような気がします。

腫れ物に触るように扱う、というのは
こんなことを言うのかなあと思い、
気を遣わせてしまうのは悪いので
それからは周りの人に
積極的に病気のことを話すのは止めました。

別に特別な配慮をお願いする必要もないし、
何より結核やインフルエンザと違って
同じ部屋で仕事をしていても
同僚たちにうつしてしまう可能性はないので、
話しても、話さなくても
あまり違いはないのかもしれない
と思うようになりました。

病気のことを話した同僚は、
10年たった今では
ごく普通に接してくれるようになっています。
ときどき「ねえ、まだ死なないの?」と
冗談で言われることもあるほどです。
僕にとっても、彼らにとっても
HIVに関する限り
「死」は身近ではなくなりました。

その他の同僚たちは
今でも僕がHIVに感染していることを
知りません。

多くの人は
「自分の周囲に
HIVに感染している人なんていない」と
思っているでしょうが、
本当は「見えていない」だけなんだと思います。
僕の職場にいる大多数の人たちと同じように。

HIV感染のことをもう少し話します。

HIVには、絶対にかからない方が
良いに決まっています。

僕もようやく病気と自分との関係に
折り合いをつけることが
できるようになってきましたが、
「HIVとは無縁の人生を選択することもできた」
と考えるたびに、
誰もHIVにかかるべきではない、と思います。

また、自分は絶対に大丈夫だと思っていても
自分のパートナー、その人の昔のパートナー、
そのまた昔の‥‥というように、
人は性行為を通じて
すごいネットワークでつながっています。

「自分は絶対に、大丈夫」って
言える人なんて、ほとんどいないと思います。
性行為の経験があれば、
誰にでも感染の機会があり、
感染している可能性があると思います。

感染しているかどうかは
検査を受けることでしかわからないのですから、
ぜひ、検査を受けて欲しいと思います。
怖がらないで、受けて欲しいと思います。

そして何より
HIVは防げる病気だということを知っておいて、
そして、実践して欲しいと思います。


「カレシの元カノの元カレを知っていますか」
という言葉は
昨年エイズ予防財団が作ったポスターのコピーです。

このポスターをどこかでお見かけになったことのある方が
いるかもしれません。
テレビのコマーシャルでも流したと聞きました。

このコピーの意味するところは、
この方がおっしゃっている
「自分は絶対に大丈夫だと思っていても
 自分のパートナー、その人の昔のパートナー、
 そのまた昔の...というように
 人は性行為を通じて
 すごいネットワークでつながっているんです。」
ということと、全く同じです。

最後はいつもと同じことになってしまいますが、
もしよろしければ、
HIVの検査を受けてみていただければ、と思います。

あと、以下はHIVに興味をお持ちの方々への
お知らせです。

聖路加国際病院の日野原重明先生が
30年以上前にお作りになった
ライフプランニングセンターという名前の
財団法人があります。

ここでは、1年間にわたって
主に看護の仕事に携わる方々向けの
医療に関する講義が続けられているのですが、
その中の単元のひとつとして、
HIVについて話すことになりました。
興味のある方はどなたでもご参加になれます。

2月27日火曜日午後6時から8時までで
東京の地下鉄・永田町駅が最寄りの
砂防会館(東京都千代田区平河町2-7-5)5階の
ライフプランニングセンターの講義室です。

この講座は基本的には
1年間の学費を払って受講している方々向けで、
1回あたり3000円の受講料がいるのですが、
事前予約の際に
「本田の紹介だ」とおっしゃっていただければ
受講料は不要にしてもらえることになりました。

ただ、大変申し訳ありませんが
配付資料がいくつかあり、
その資料代500円はご負担をお願いいたします。

ご希望の方がいらっしゃいましたら、
ライフプランニングセンター
講座担当:福井みどりさん宛に
FAX:03-3265-1909
もしくは
電話:03-3265-1907
にて事前にお名前をお知らせのうえ、お越しください。
「本田の紹介だ」とお伝えになることをどうぞお忘れなく。

では、今日はこの辺で。
みなさま、どうぞお元気で。

本田美和子

2007-02-16-FRI

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