PHILADELPHIA
お医者さんと患者さん。
「遥か彼方で働くひとよ」が変わりました。

手紙167 医療制度のしくみ・4 医療保険


こんにちは。

前回の分が掲載されたあと、
思いがけず、たくさんのメールをいただきました。
どれも、とてもうれしかったです。
どうもありがとうございました。

さて、公衆衛生の授業に出ていたときに聞いた話を
お伝えしていますが、
今日はその4回目です。

現在、医療はどの国においても
大きな産業に育ってきています。

ある国で一年間に造り出された財やサービスの価値の
総計を国内総生産・GDPと呼ぶそうですが、
日本のGDPはだいたい500兆円です。

日本・米国・カナダ・英国の
それぞれの医療費がGDPに占める割合が
授業の中で紹介され、
その背景について、少し勉強することになりました。

上に挙げた4か国で
医療費がGDPに占める割合は、
1位・米国  13%
2位・カナダ 11%
3位・日本   8%
4位・英国   7%
となっているのだそうです。

日本の場合だと、40兆円くらい。
すごいですね。

いずれの国でも少なからぬ額のお金が
医療産業に投じられているのは明らかです。
医療費の支払いについては、
どの国も「医療保険」を柱としているのは同じなのですが、
その成り立ちはさまざまです。

そして、残念なことに
この中のどの国の医療保険も
経済的には、破綻のほぼ一歩手前です。

わたしたちは
米国の医療制度の中で仕事をしてたので、
その問題点には毎日のように直面していました。

また、カナダや英国出身の医師や
日本の制度を知っているわたしも
授業に参加していて、
それぞれの国の問題も
経験者の立場から紹介することができましたから、
この授業は
各国の医療保険制度の実像を知る、
とてもいい機会になりました。

医療保険は、
医療費を誰が支払うか、という点から区別できます。

カナダ・英国では、政府が医療費を全額負担する、
Single Payer Systemと呼ばれるシステムが
使われています。
原則として
患者さんは医療費を払う必要はありません。
そのかわり、所得税率50%という
高い税金を納めています。

日本では、みなさまよくご存知のように
公的な医療保険(健康保険や国民健康保険など)があり、
雇用主と本人がそれぞれ毎月納める保険料が
その財源になっています。
この制度は、昔、中学校で習ったように「国民皆保険」。
つまり、すべての国民が
何らかの医療保険でカバーされているしくみです。
そして、医療機関を受診するときには
かかった費用の3割を患者さんは改めて支払います。

米国では、原則として、
医療保険は
民間の保険会社が売り出している商品の中から
自分に合ったものを選んで買う、
というやり方をとっています。
また、そのほかに
お年寄り・貧困層・障害をもつ人などを対象にした
政府の保険、Medicare・Medicaidと
よばれるものもあります。
どの場合も、医療機関を受診したときには
一定の費用を患者さんは支払いますが、
その額は、自分が持っている
保険の種類によって異なります。

そして、米国での大きな問題のひとつは
医療保険を持たない人の多さ。

医療保険を持たない、つまり医療保険を購入できない人が
米国の人口の16%を占めています。
これには、不法滞在者は含まれていませんから、
実際には、米国内に住んでいる人の2割くらいは
医療保険を持っていないことになります。

医療費を全額政府が負担する、カナダ・英国。

自己負担はありますが、
公的な保険の性格が強い、日本。

民間の競争社会の中で医療保険を選び、
5人に1人は保険を持っていない米国。

それぞれの国の実像については
次の回でご紹介しようと思います。

では、今日はこの辺で。
みなさま、どうぞお元気で。

本田美和子

2003-04-20-SUN

BACK
戻る