PHILADELPHIA
遙か彼方で働くひとよ。
ニューヨークの病院からの手紙。

手紙131 家庭内暴力・2 虐待の種類

こんにちは。

家庭内暴力についてのお話の続きです。

暴力というのは、殴るとか蹴るというような
身体的な印象が強い言葉ですが、
家庭内の暴力というのは
必ずしも身体的なものには限りません。

どちらかというと
虐待(abuse)という言葉の方が
語感としてはふさわしいかもしれない、とも思います。

家庭内で起きている出来事について
その人が何らかの被害を
被っているのではないか、と疑う時、
わたしたちは、一般に、次のような項目について考えます。

1・身体的な虐待
殴られたり、蹴られたり、小突かれたり、
体の自由を奪われたりしていないか。

2・心理的な虐待
脅されたり、屈辱的な思いをさせられたり、
無理やり周囲から隔離されたりしていないか。

3・性的な虐待
意思に反して性的な関係を求められ、
受け入れることを強要されていないか。

4・経済的な虐待
経済的な自由を奪われたり、
資産を流用されたりしていないか。

また、このほかに
病気の人や、子供、お年寄りなど
周囲の助けがないと
日常生活をうまくやっていけない人に対して、
その世話を任されている人が
わざと、それを放棄して、食事を与えなかったり、
身の回りの事を助けなかったりするという
「neglect」という概念もあります。

社会生活を送っている人は誰でも、
この虐待やneglectを
行う側にも、行われる側にもなり得ます。

そして、前回も触れましたが、
このような虐待を受けることで
その人の健康は大きく損なわれてしまい、
場合によっては
命を失う、というような
取り返しのつかない結果につながりかねません。

身体的・心理的・性的・経済的、といった分類ができる
家庭内での虐待ですが、
もちろん、一番多いのは身体的な虐待です。

家庭内の身体的な暴力については
日本語でもドメスティック・バイオレンスという言葉が
使われるようになってきました。

とくに、昨年、ちょっと長い名前ですが
「配偶者からの暴力の防止
及び被害者の保護に関する法律」という
法律が施行されたことに関連して、
ドメスティック・バイオレンスという言葉を
お聞きになった方もいらっしゃるかもしれません。

家庭内での暴力、というのは
日本に限らず、どの国でも
昔からその存在は知られていたにもかかわらず、
その実態については、明らかになっていませんでした。

家庭内の人間関係には
親子、兄弟、夫婦、といった
いろいろな組み合わせがあります。
たとえば、今のわたしの仕事の中では
お年寄りと、その世話をする人の間で起こる虐待について
考えることがよくあります。

しかし、その中でも、やはり一番多いのは
配偶者による暴力です。

次回は、
配偶者からの暴力行為について
もう少し具体的にご紹介しようかと思います。

では、今日はこの辺で。
みなさま、どうぞお元気で。

本田美和子

2002-02-06-WED

BACK
戻る