PHILADELPHIA
遙か彼方で働くひとよ。
フィラデルフィアの病院からの手紙。

手紙106 レジデントの暮らし・3 食

こんにちは。

このところ
レジデントの暮らしについてお伝えしていますが、
今日はレジデントの食生活について。

病院の1年は4週間ごとのブロックに区切られていて、
当直のブロックが始まると
レジデントオフィスから
当直の回数分の食券が渡されます。

朝食用に3ドル、夕食用に5ドル。
ブロック当たりの当直はだいたい7回ですから、
月に56ドル分の補助が出ることになります。

もちろんこれは病院の食堂でしか使えませんし、
額面を超えた分は
自分で払わなければいけません。

また、食事の値段が額面に満たない時には、
そのおつりはもらえません。

ですから、食券で食事をするときには
お盆を手に、注意深くカフェテリアの中を歩き回り
額面ぎりぎりの買い物になるように
計算しながら選びます。

さらに、レジのところには
チョコレートやポテトチップ、
アイスクリームなどがあるので
最後の微調整もできます。

まあ、たとえ額面を超えたとしても
100円分くらいのもので、
別にたいしたことはないのですが、
なんだかこれはもうゲームみたいなものです。

レジのおばさんも慣れたもので、
額面にちょっと欠けるくらいだと
「キャンディーバー欲しい?」と声をかけてくれて、
額面ぎりぎりのお買い物を助けてくれますし、
たまに、
ただぼーっと歩き回って集めたものが
5ドルぴったりだったりして
自分でもびっくりすることがあるのですが、
そんな時には
「すごい。ぴったり。おめでとう」と
ほめてくれます。

そんなふうに買った食事を
カフェテリアでみんなで食べている時に、
食券の話になりました。

「ビジネス・スクールに通っている弟は
 学生なのにもう仕事も始めていて、
 出張はファーストクラス、
 家は豪華な眺めのいいアパート。」

「なんか
 5ドルぴったりになるように、なんて考えながら
 ごはんを買ってる自分のことを考えると、嫌になる。」

同じチームで働いている男の子が
そう言いました。

その場には、UCLAのロースクールを出た後、
カリフォルニアで数年弁護士をしていたのに
何を思ったか、学校に入りなおした男の子もいました。

彼も、
「弁護士をしていたころの暮らしは、夢だった、
と思うようにしている」と、
なんだか後ろ向きの発言です。

まあ、つましい暮らしをしているのは事実ですが、
そのおかげで
「5ドルぴったりだった」というくらいのことで
ちょっと嬉しくなったりすることもあるのですから、
これも、なかなか悪くない、と思います。

では、今日はこの辺で。
次回はレジデント生活の「住」についてに
することにします。

みなさまどうぞお元気で。

本田美和子

2001-07-18-WED

BACK
戻る