PHILADELPHIA
遙か彼方で働くひとよ。
フィラデルフィアの病院からの手紙。

手紙103 病院評価・4 JCAHOその後。

こんにちは。

このところ、
病院評価の第三者機関・JCAHOが
3年に一度の査察にやってきた時のことを
お伝えしていますが、
今日はその後のお話です。

1月の終わりに、病院の偉い人から
全職員宛にメールが送られてきました。

「いくつかの
 改善の余地のある項目はあったものの、
 わたしたちは、今後3年間に渡っての
 JCAHO認定を受けることができそうです」
という文章で始まるこのメールは、
「いくつかの」という割には
どうも、もう少したくさんありそうな
JCAHOから指摘された問題点を、
これから6ヶ月のうちに完全に解決することで、
正式なJCAHO認定を
受けることができるであろう、と続き、
「献身的な病院職員の仕事ぶりは、
JCAHOの委員たちも非常に印象深かったようです」と
礼儀正しく、
職員の協力にお礼を述べることも忘れていませんでした。

「そして」と、メールはまだ続きます。

「皆さんには、2週間後に行なわれる
 ペンシルベニア州精神科プログラムと、
 リハビリテーション施設認定のための査察についても
 更なる御協力をよろしくお願いします」

医療施設認定への道のりは
まだまだ遠いようです。

施設が提供する医療が
ある一定の水準に達しているかどうかを
第三者機関の手にゆだねて詳しく調査する。

しかも、その結果は
医療保険の適用を左右するため、
病院の経営に直接影響を与える。

このような機能をもつJCAHOの正式名称は
Joint Commission Accreditation Healthcare Organization
(医療施設認定合同委員会)といい、
現在この委員会の査察を受ける
全米の医療機関は約1万9000施設にのぼります。

設立されたのは1951年だそうですから、
もう半世紀に渡って活動している
独立した非営利団体です。

ご興味のおありになる方は、
JCAHOのサイトhttp://www.jcaho.org/ を
どうぞご覧になってください。

以前、
ニアミス・カンファレンスについてご紹介していた時、
「ミスの要因を取り除くために
ニアミス・カンファレンスというのは
とてもよい考えだと思うし、
日本でも、
厚生労働省の指導の下にやるべきだと思う」という感想を
頂いたことがありました。

わたしは、認識が甘いのかもしれませんが、
ちょっと違うように考えています。

ニアミス・カンファレンスには、
自分たちで自浄のための努力をすることによって
外部からの(例えば政府からの)干渉を防いで
職能集団の独立を図り、ひいては権益を守る、という
側面があるように思います。

自分たちの手で
職場を安全な環境にしていこう、
(そのかわり、外からの指図は受けないよ)という
内部からの動機が非常にはっきりしています。

つまり、外から(政府から)言われてやるのでは
あまり、意味がない。

JCAHOの場合は
その認定が直接医療保険からの収入にかかわるので
多少その性格は違ってくるかもしれませんが、
医療を供給する機関としての矜持を保つ、という
その基本姿勢から考えれば
これもやはり、
独立した第三者機関が調査に当たる、というのは
政府が直接扱うよりも
望ましい形になっている、と思います。

まあ、供給側がこういう理屈をいくらこねてみても、
サービスを受け取る患者さんにとっては、
安全で、質の高い医療が手に入りさえすれば
誰がイニシアチブを取ろうが
どっちでもいいことなんでしょうけれど。

日本でも、最近JCHAOをモデルにした
病院評価団体ができているようです。
設立されたのは1995年、
実際の認定活動は97年に始まったそうですが、
全国約9300の医療施設のうち
7%程度がその対象となっているのだそうです。

認定を受けることで確実なメリットが出てくれば、
参加する医療機関も
今後増えていくかもしれません。

さて、4回にわたってお伝えしました
病院評価についてのお話はこれで終わりです。

次回は、ようやく終わる3年間の
レジデント生活の思い出にしようかな、と
思っています。

では、みなさまどうぞお元気で。

本田美和子

2001-07-08-SUN

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