PHILADELPHIA
遙か彼方で働くひとよ。
フィラデルフィアの病院からの手紙。

手紙59 水泳2 10分泳

こんにちは。

1年間続いた水泳の授業はいつも
水に入って自分の心拍数を数えることから始まりました。

自分の普段の心拍数より飛びぬけて高い場合は
(低いことはめったにありませんでした)
「いつもとちょっと違う。変だ」と思って、
自分の体調をよく考えて
無理だと思ったら休むように、と教えられました。

自分で「大丈夫だ」と判断したところで
授業の始まりです。

1年間を通して、いろいろな泳ぎ方や
水との付き合い方を学んだ授業でしたが、
最初の10分間にやることは決まっていました。

10分泳。

自分の好きな泳ぎ方でともかく泳ぎ続ける10分間。
競争ではないし、プールは広くて空いているので
自分のペースでのんびりできます。

最初の授業の時に
「自分のペースで、無理をせずに泳ぎつづけるのが
 10分泳です。
 毎回記録をつけていきますが、
 たぶん1年を終わる頃には
 みんな1割から2割くらいは距離が伸びると思います」
と言われたときには、
そんなにうまくいくものかなあ、と思いましたが
実際、慣れてくるに従って
本当に長く泳げるようになっていきました。

また、体は正直で
最初の心拍数が高かったり、
気分がすぐれなかったりしたときには
10分間に泳げる距離も少なめで、
自分の体調を把握するのにも実際に役に立ちました。

10分間泳いだ後にも、心拍数を測りました。
「競争じゃないんだから、泳いだ後に
 やたらと心拍数が上がりすぎるのも問題なんだよ」。

無理をしない
自分のためのスポーツというのが大切なんだ、ということを
先生はわたし達に繰り返し教えてくれていました。

各学期の終わりには10分泳の拡大版、
60分泳というのがありました。
水泳はもちろんのこと、
どんなスポーツも1時間もやり続けたことはなかったので
ほんとにできるのか心配でしたが
実際にやってみると、
何回ターンしたのか覚えておくのが大変なくらいで
あとは退屈しのぎに頭のなかで歌を歌いながら
50メートルプールを行ったりきたりするだけで
1時間は大して苦もなく過ぎていきました。

10分泳の後は、その時々のテーマを決めて
(たとえば、基本的な近代泳法の練習や
 当時、独特の泳法で記録を次々と樹立していた選手の
 泳ぎ方の解析、水球の入門編など)
授業は進められていきました。

どのテーマのときも、たいてい
「そうすればもっと速く泳げるようになるのか」とか
「呼吸もこうやれば楽になるねえ」といったように
一人で泳ぐときも、思い返して
実践できることが多かったのですが、
ただ一回だけ、
「なるほど、よくわかった。
 でも、たぶんそれを生かす機会はないでしょう」
(というか、あってほしくない)
ということについて教えられた授業がありました。

そのことについては、次の機会に。

あともうひとつ、水泳とは関係ないのですが
ここを読んでくださっている方のなかには
どなたかご存知の方もいらっしゃるかもしれないので、
今探していることを伺わせてください。

8月の下旬から2週間、夏休みで日本へ帰るのですが、
わりとゆっくりできるので、その間に
処分しそびれていた雑誌を
古本屋へ売りに行こうかなと思っています。

ロッキング・オン社が発行している
「CUT」という雑誌があるのですが、
その創刊号から月刊に移行するまで
(今、本が手元にないのでちょっと不確かですが
 たぶん、1998年5月号が最後か
 最後から2番目だと思います)
が全号あります。

東京からフィラデルフィアに引っ越すときに、
近所の早稲田の古本屋さん数軒に聞いてみたのですが
どこも「うちでは、ちょっと扱ってないねえ……」と
引き受けてもらえなくて、
捨てるのもちょっと忍びなく
そのまま置いてきてしまいました。

たぶん、この手の本を扱っている古本屋さんは
どこかにあるとは思うのですが、
馴染みがなくて良くわからずに困っています。

読んでくださっている方の中で、
もし、そんな古本屋さんを
ご存知の方がいらっしゃいましたら
教えていただけないでしょうか。
よろしくお願いします。

では、今日はこの辺で。
みなさまどうぞお元気で。
本田美和子<

2000-08-13-SUN

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