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いままでの記事 2006/03/15  
 
第5回 ぞくぞくするのは、快か理か?
糸井 岡田さんは、みうらじゅんと同い年ですね?
たしか村上隆さんも、そのくらいなのかな?
岡田 村上さんは、3つ下です。
糸井 なるほど。
岡田さんも、みうらも、村上さんも、
役割を自分で決めて
そこで邁進しようと踏ん張るタイプの
人たちですね。
岡田 そうですね。
みんな、心はソルジャーなんですよ。
着ている上着の裏地が、迷彩柄。
でも、なぜ戦うかは問わないんです。
糸井 たしかに、みんな裏地がアーミーだね。
みうらは、とにかくレッテルを
自分で張りたがりますよ。
「ロックンロールはそんなことしない」とかね。
岡田 わかりすぎてイヤになりますよ、それ(笑)。
ぼくも「SFはそうじゃない」って
言いますから。
糸井 みうらを見ていると、
「自分自身まで人工生産物であるような
 ふりをしたいんだな」
と感じることもあります。
岡田 そうじゃないと、
世の中に自分がいる価値や意味が
よくわからないからです。
糸井さんがおっしゃるように、
無条件で愛してほしいし愛してもらえる、
という自覚なり自信が、
まっっったく、小指の先ほども、ないです。
どうしてかというと、
自分が他人をそのように
愛さないからなんです。

自分が他人を「いい」と思うときは、
何かしらいいポイントが見えるからであって、
「その人だから」ということではないんです。
糸井 「なぁ〜んか、いいなぁ」
ということは、ないんですか?
岡田 ないです。
そういう場合は、言語化されてないだけ。
「言語化できないものがある」なんて
言っちゃったら、
ぼくは物書きなんてできないと思っちゃうから、
言わないです。
糸井 でもね、たとえば
モナリザはダ・ヴィンチの顔に似ていた、
というようなことがあります。
自分にわざと似せたのか、
そのあたりはよくわからないけど、
ダ・ヴィンチは、とにかく
「いい」と思って描いたわけです。
自分に似たものを「いい」と思うのは、
安心感があるからだと思うんです。
そこで「安心感があるから」と
文章化しようがしまいが
「いつも俺は
 こういうタイプの奴を好きになるなぁ」
というときには、
先に「好きだ」と思うものですよね?
「何々だから」と、
理念に合わせては、選ばないです。
岡田 そうですね、そうですね、
順番は、そうですね。
あ! 俺が理屈で負けてる!
人生貴重な体験!
はい、つづけてください(笑)。
糸井 はい(笑)。
心や頭が先に反応したことに対して
言葉が追っかけていくんだと思います。
最初は「快、不快」の、
スイッチの1か0かのところで
判断するんじゃないかな。
岡田 うん、うん、うん。
糸井 アメーバのような生物でも、人間でも
「快」のほうに自分が生きる正解があって、
「不快」のほうには生きる正解はない。
「不快」には危険や毒があったりするから、
快へ快へ、行くわけです。
岡田 うーーーん。
好きなものを好きでありつづけなければいけない
と思った瞬間に
人は理屈に頼るのかな。
糸井 楽しくなくなったときには、やめる、
というのは、どう?
岡田 そうですね。そうですが、何かこう、
糸井さんは、中華料理の真髄を語られていて、
ぼくは和食がいい、というような気が‥‥(笑)。
だいいち、ぼくは、自分の欲望じたいに
自信がない、ということもあります。
自分の欲望のレベルが上下するので
それに乗っかりきれないんですよ。
糸井 うん、うん、うん。
岡田 ぼくが心の底から
ぞくぞくする興奮があるポイントは
「うまくいきつつあるとき」なんです。
本を書いてるときでも、
あ、全体構成が見えてきた!
というときがいいんです。
糸井 うん。そういうときは、
うれしいですね。
岡田 アニメを作るときでも何でも、
どんどんものごとが決まりつつあって、
勝算があがっていくときは、
ものすごくぞくぞくする快感がある。
それは「自分がどれくらいやりたいか」に
関係がないんです。
「今回はすごいとこまで行けそうだぞ」
というときが、ものすごく楽しい。
糸井 問題解決型、なんでしょうか。
その問題が、難問なら難問なほどいい?
岡田 いや、難問解決というのは
M的な解釈ですよ。
ぼくはSなので、
「勝算が見えてくれば快感がある」
となるわけです。
難問であればいい、ということではない。

でも、ちょっと‥‥かなり、ぼくは、いま
話していて衝撃ですよ。
自分に関して「そうか!」と
ずっと思っています。
さっき「転向します」と言ったことが、
いまだに、喉のあたりに
ひっかかてるんですから(笑)。
糸井 岡田さんのような人が、怒らずに、
自分のことを
全部説明してくれるという機会にあうことは、
ぼくはほんとにめずらしいから、
ぼくも衝撃です。
岡田 ハハハハハ。
(つづきます!)
 
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