西本 引き続き、自ら企画して演じたコントの
解説をしてもらいますが、
つぎは「沼野さん」のコント。
田中 はいはい。これね。
●ペルソナル活動・コント解説
『沼野 康則 43才』



画面中央に、さえない男の写真。
男の名前は「沼野康則」。
正装の田中が、沼野の波瀾万丈な半生を
思い入れたっぷりに振り返っていく。
全編を通して流れる
「で、それ誰やねん?」感が見物。
田中 まあ、このコントは、
「人の人生考えるのは楽しい」
というのがテーマで。
まえに、ダンカンさんと
コントの話をたまたましててね。
ダンカンさんが
「コントにポーンと出てくるオヤジにも
 そのオヤジなりの人生があるわけだよね」
って言ってて、そやなぁと思って。
どんな服を着ても、
どんな顔をしても、
どんな髪型をしても、
どんな歩き方をしても、
ポーンて出てきたところで
その人の人生って
当然あるわけやなあって思って。
コントを自分らで考える時でも、
「この人はこんなバックボーンがあって」
みたいなことって、当然決めるやん?
西本 ああ、そうですね。
その人が吸うタバコの銘柄すらも
全部決めていくわけだよね。
田中 そうそう。
それじゃ、人の人生をコントで
説明してやろうと思ったのよ。
「沼野さん」がどんな人なのか、
どういう人生を
歩んできたのかという部分に
スポットを当てる1本にしようと。
西本 なるほど。
1本のコントを作る時に人物設定から
どんどん広がっていくのとは逆で
一本のコントからどんどん
クローズアップしていくということだね。
田中 そうそうそう。
西本 これは本人の解説を聞くとね、
もう一回ちょっと見返したくなるね。
田中 あ、そう?
●ペルソナル活動・コント解説
『持ち物は持ち主に似る』



とあるバラエティー番組の企画会議で、
「持ち物は持ち主に似る」という
ムリヤリな企画が出される。
そういえば、芸人、田中直樹の持ち物は
田中直樹に似てきていると誰かが言いだし、
アポなしで本人の自宅を直撃することに‥‥。
西本 つづいては、テレビの
バラエティー番組仕立ての1本。
田中 うん。
「持ち物は持ち主に似る」ってやつです。
オレのあごが
「しゃくれてる」ということを
ポイントにしたコントですね。
たとえば、オレの携帯電話が、
買ったときには、
しゃくれてなかったのに、
使っているうちに、どうやら、
しゃくれてきたみたいだ、と。
西本 うん、そうですね。
ああ、これ、説明したら、
それだけで終わっちゃいますね。
田中 うん。以上! みたいな。
あと、自分の特徴としては、
「しゃくれてる」以外に、
「意外と毛深い」というのがあるんで、
もしも続編があるとしたら
「持ち物がどんどん毛深くなっていく」
という展開もありえるかなと。
西本 ああ、そうですね。
長袖を着てるとわかりづらいんですが、
意外と田中直樹は毛深いんです。
これも、豆知識ですね。
田中 豆知識ですね。
西本 証拠に写真を撮っておきましょう。
田中 ああ、はい、どうぞ。
よいしょぉ!

(これが、冒頭・タイトルの写真)
西本 さあ、最後に紹介するコントは
「ランジェリースウィーツ」。
これは不可思議なやつですよ(笑)。
田中 あ、不可思議ですか(笑)。
西本 うん。難解ですね。
●ペルソナル活動・コント解説
『ランジェリースウィーツ』



田中直樹は、語る。唐突に、語る。
「ランジェリーが、スウィーツに見える」と。
田中直樹は、語る。あちこちで、語る。
「ランジェリーが、スウィーツに見える」と。
見るものに、
なにかしらの選択をつきつける問題作。
見た後で、ほかの誰かと、
「見えるか、見えないか」について
語り合うのもいいかもしれない。
いや、語り合う必要は、ない。
田中 これはね、会議をしてる時に
ある作家さんとオレだけが
「ランジェリーが
 スウィーツに見えるよねー」
っていうので、盛り上がったんですよ。
他の人は、
全然これに関してはポカーンやった。
西本 ‥‥ま、その‥‥要するに、
「女性の下着って、
 なんか果物みたいだよね?」
っていうことですよね‥‥。
田中 見える?
ランジェリーがスウィーツに?
西本 ‥‥うーんとね、
理解しようとがんばったんだけどね、
このコントには
ずっと置いていかれた(笑)。
田中 そうかそうか(笑)。
西本 ‥‥ええと、このコント、
マネージャー的にはどうだったんですか?
(マ) いや‥‥私も‥‥さっぱり‥‥。
西本 そうですか、ぼくだけじゃないですね。
それなら安心しました。
コントって別に謎解きじゃないんだけど。
にしても、
「これは一体何を?」って(笑)。
田中 うんうんうん(笑)。
西本 まあね、仮にね、百歩ゆずってね、
見えるとしましょうや。
ランジェリーが、スウィーツに。
そう見えたとしましょうや。
でもね、どんどん展開していくなかでね、
「ランジェリースウィーツ!」
っていう風に
叫び声として使われると‥‥。
田中 ははははははは。
西本 わかろうとしてた人もね、
見えるのかな? って思ってた人もね、
「あれ?
 やっぱりオレ間違ってたのかな」と。
田中 はははははははははは!
西本 あの、野暮な要望ですけど、
もうちょっと、
こう、解説してもらえますか。
田中 ええとね、
男が女性の裸をみて興奮するのと
男が女性の下着を見て
興奮するというのは
同じ興奮をするにしても
違うなぁと感じてて。
つまり、下着には絶対、
「味覚的な甘さ」
みたいなものが含まれていると。
西本 ‥‥‥‥はあ。
田中 ま、こういうこと
言ってもしかたないですけどね。
あ、でも、ひとつだけ言わせてください!
ぼくは、ランジェリーがスウィーツに
見えるわけなんですけど、
でも、スウィーツがランジェリーに
見えるわけではないんです!
西本 ‥‥うん、わかった。。
田中 (すごく真面目に)
スウィーツはランジェリーに見えない。
ランジェリーがスウィーツに見えるんです。
西本 ‥‥うん、わかった。
田中 スウィーツはランジェリーに見えない。
スウィーツは
スウィーツのままなんですよね。
そう考えると、自分の中では
なぜそれが違うのかっていうのが、
まだ解明できてないんですけど‥‥。
やっばりその、甘さ? 砂糖?
果物が持つ水々しさとかも、
連想したりすることがあったりとか‥‥。
西本 まあ、ともかく!
このコントに関して、
とにかくあなたが言いたかったのは!
田中 ランジェリーが
スウィーツに見えるぞって
言いたかっただけで。
西本 オレの目には
そう見えるってことですよね。
田中 そういうことでした!
(次回が最終回です!)
  2005-12-27-TUE  
 
 
 
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