SHIRU
まっ白いカミ。

 

 

no.110   トーキン・アバウト・スノーマン

 

 

まぶしく目覚めた朝はごはんを食べるのももどかしく

いちばんに君をたたき起こして

カルフォルニアからやって来たオレンジを胸ボタンに

ひろってきた枯れ枝をつき刺し

クローゼットからパパの帽子をとってきて

おおききなスノーマンをつくった

暖かい紅茶と焼きたてジンジャーブレッドが家で待ってる

模擬コークスが火につつまれて怒ったように赤く

びしょぬれの手袋とマフラーとセーターと靴を暖炉の前に並べた

ママが編んでくれたセーターはいつだって

ぼくの未来を過大評価しすぎてぶかぶか

ふたりは子供部屋にひっこんで

倒したベッドに毛布をかぶせて小屋をつくると

マザーグースの絵本を立てた煉瓦塀

トランプをならべて小麦畑

猫の人形は耕作用のラバ

おくさん役のぼくはそのままで

口紅を塗ってるみたいだと

君に赤いくちびるを笑われた

寒い日はつづいて

スノーマンが庭に立っていないか

カーテンをあけてガラスの露を

パジャマで拭いてねぼけまなこの朝

何日ぐらい続けたんだっけ

真夜中のリビングでこっそり受話器をとって

スノーマンにつながらないか適当な番号を押した

そして雪の消えた街を散歩していたある日

グローサリーでオートミール抱えた先生をみつけたんだ

スノーマンは空に昇って雲になったり雨になったり

海になったり涙にもなったりもするのよって

先生はぼくの頬をおしつぶしながら教えてくれたっけ

この街は、もとスノーマンばかりなんだから

 

I wish you a merry Chiristmas !

S.M.III

1999-12-25-SAT

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