SHIRU
まっ白いカミ。

(子供心におそろしかった犬(の子供?)が
まだ同じ所にいた… 。
)

29枚目:「孫稼業」

 

世界中の人がみんな1円ずつ
僕にくれれば、すぐ50億円も手に入るのに…
どうしてみんな送って来ないんだろう!

「無能の人」みたいに河原の石やら
セーターに出来る毛玉…
これさえ売れれば無尽蔵に稼げるのに!

ね。色々と夢みる年頃。
こんにちは、シルです。

「世の中ってのは上手くできてるもんだねぇ」
とよく言われますけれど
そうでもなく

こんな感じで
若者は全体的にお金に困っています。
私も本ばかり読んで大人しくしてみても
お腹とお金は気づけば減ってる。

それで遊ぶ金欲しさに考えてみました。
今、私はアルバイトも何もしていないのですけれど
かわりに時間はある程度余裕があります。
でも遊び歩いたり食べ歩いたりするには
ちょっとお金が足りない。
そこでアルバイトをしたとしましょう。
時給700円とかの安い労働力として
資本家に搾取されつつ働く。
すると今度は時間がどんどん無くなってきます。
しかも会社に勤めるともっと時間が無くなってくる。
そのうち、のんびり時間が出来る頃には
こんどは遊ぶ体力が無くなっていたり。
遊ぶのにも「時間と資金と体力と技術と情報」がいるのです。

ここで必要なのは
「世代を越えた助け合い」とでもいうのでしょうか。
つまりは…その…
「おばあちゃんちにあそびにいっておこづかい」
ということを、先日してきたのです。
都知事は誰に投票しよう…とっくに成人なのに。

祖母にしてみれば
自分から産まれた娘がまた産んだ生物。
孫はとても身近に感じるのでしょうけれど
私にとっては一緒に暮らしている訳でもなく
「わかってもらおう」という事さえ諦めてしまう
世代を越えた相手です。
それに親戚に会うのも苦手なので
盆も正月も葬式も無視していました。
何年ぶり…という訪問です。

 

私は午後に祖母の家に着いて
しばらく話し相手をつとめた後
夕食を海鮮レストランで御馳走になると
夜には早々と帰ってきました。

それでも祖母は大変な喜びようで
炬燵に私が入れば、あちこちから
ケーキやカステラを切ってくる。
レストランにいけばメニューを眺め
あれもある、これもある…とはしゃいで。
帰宅した頃、「また遊びに来てね。」と
電話まで受けました。

もらったお小遣いは
時給1,000円(交通費支給)ってな感じで
あっという間にケーキやお酒や本や映画や漫画に
化学変化をおこしました。
それこそ私はアルバイト気分で
理解できない病院やテレビの話題を聞きつつ
話し相手をつとめてきたのです。

「どうせ持っていけないんだから
生きているうちに楽しませてくれた人にあげるよ。」
そんな74歳にしてはプログレッシブな彼女。
前述のようにとても喜んでいるし
私だって助かる。相利関係。

ただ、どうしてか。
帰ってきてちょっと気が滅入ったのは…
覗き見た祖母の人生の最終ぺージが
テレビを見て、食べて、寝て…という
繰り返しだったという事。そしてなにより
「孝行や親切というものは
無償で喜んでするべきざます。」
…そんなむちゃな倫理感が私の中に少し
残っているからなのでしょう。
喜ばれるのは、嫌じゃないけど申し訳ない。
結果的に「孝行」になっているけれど
訪問するのは別に楽しくはないし
遊ぶ金欲しさだったんです。

 

そんな事で「ほぼ日」をお読みの
遺産を遺したくて仕方ない年頃のお爺さま、お婆さま。
ボディーレンタルといいますか…
時給1,000円ぐらいで「孫依頼」承ります。

一緒に和菓子を食べ、話相手をして
肩を叩いたり、公園を散歩したり
吟ずる和歌を聞いたり、鳥に餌をやったり
オセロの相手だってつとめます。
お申し込みはメールにて。

ではでは。

プロの孫屋、シル (shylph@ma4.justnet.ne.jp)

from 『深夜特急ヒンデンブルク号』

1999-04-10-SAT

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