よりみち
パン!セ
中学生以上すべての人たちへ。
キミたちに、
伝えたいこと。



じつは、福沢諭吉の『学問のすすめ』には、
「天は人の上に人を造らず
 人の下に人を造らず」
という言葉のあとに、こう書いてあるんだ。
‥‥賢人と愚人との別は
学ぶと学ばざるとに由て
出来るものなり。
西洋の文明を吸収し
国内では「学問」をして競争に勝ちぬき、
国際的に「侵略される側」から
「侵略する側」にまわる。
そのために国民を義務教育によって
勉強させなければならない。
そうやってできあがった
学校制度の流れのはてのなかに、
現在のわれわれはいるわけだ。



日本という国

小熊英二

(購入はこちらAmazon.com)

「若い人向けですからね、少し工夫しましたから」
という言葉とともに、
小熊英二さんから最終原稿が届いた。
ドキドキしながら読み進む。

さすがに編集者歴が長かった小熊先生、
押さえ所を押さえまくられ、
内容もさることながら、
そのリズミカルな構成具合に、感激した。
読者がスムーズに入り込みやすい導入部分からはじまり、
次には爆笑必至、「福沢諭吉の鼻毛抜き」エピソードが。
さらに「近代」の問題と、
私たちの日常的な疑問とがさらりと結びつけられ、
今の日本が抱えるさまざまな基本的な問題が、
ひとつながりの見取り図として、目の前に現れてくる。

小熊英二さんの本は
読んでおかなくちゃいけないような気がする。
だから分厚いけど、本は買ってみた。
でも、じつはちゃんと読んでいなくて。
‥‥という人は、じつはけっこう多いんじゃないかと思う。

もちろんそれぞれの本のテーマ設定は異なるけれど、
小熊先生が教えてくれるのは、
「今」が「過去」とダイレクトにつながっていて、
それがさらにこれからの未来につながっていく、
ということだ。
当たり前かもしれないけれど、忘れがちなことだ。
そして「学ぶ」というのは、
そういう認識から生まれてくる発見の連続、
ということだったりする。
発見は希望だったり、痛みだったりする。

私たちがいま生きている「日本という国」が持つ
希望と痛み。
この1冊は、日本人はもちろんのこと、
この国に生きるすべての人に、
小熊先生ともども、
ぜひ読んでほしいと心から願っています。
(……総186頁、小熊先生の本としては薄いですし!!)

(編集担当・清水 檀)


2006-12-07-THU




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